花とゆめHistory 2010年代
白泉社の「花とゆめ」創刊50周年を記念し、懐かしの名作から話題の新作までを大特集!
少女マンガの革命児たる役割を担ってきた「花とゆめ」の道のりを振り返ります。
2010年代、エンタメ界に広がる幻想世界
ライトノベルは、1970年代ごろ生まれた若年層が対象の小説ジャンル。少年少女を主役にした等身大の小説で、SFやファンタジーを中心に大きな盛り上がりを見せました。最初のブームの火付け役になったのが、1988年刊行の『ロードス島戦記』(水野良・角川スニーカー文庫)。それから約10年の時を経て、新しいブームが起こります。映画やゲーム、オンライン小説の影響もあって、21世紀はファンタジーの時代となりました。
アジアン・ファンタジーの魅力
映画界では、21世紀に入ってすぐに『ハリー・ポッターと賢者の石』『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジーが大ヒット。さらに2003年公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」が続きます。世界的なブームは、日本の小説やマンガにも影響を与え、独自のアジアン・ファンタジーが隆盛します。舞台となる土地の民族衣装や文化を取り入れた作品世界は、エキゾチックさで読者の心を虜にしています。
高校生の桃園奈々生は、ギャンブル好きの父親と二人暮らし。ある日父親が家出して、奈々生にもアパートの立ち退き命令が下ります。行くあてのない彼女は、ミカゲという怪しい男に家を譲ってもらいましたが、そこは神使の巴衛(ともえ)や、あやかしたちが住まう廃神社。奈々生の「土地神」としてのお仕事が始まります。
高華(コウカ)王国の皇女・ヨナは一人娘。優しい父王と、幼なじみで護衛のハクに囲まれて、大切に育てられていました。16歳の誕生日、ヨナは憧れの従兄のスウォンから簪(かんざし)を贈られますが、父王は彼との結婚に猛反対。ヨナはスウォンに暁色の髪を褒められて喜びますが、過酷な運命が忍び寄っていました。
ファンタジー×ロマンスの名作
プレイヤーが、架空のゲーム世界で試練を乗り越えるRPG(ロールプレイングゲーム)。その人気もあって、ファンタジーのブームが隆盛を迎えています。英雄をはじめエルフや錬金術師、薬師など――。中世の西洋を想起させるキャラクターがマンガでも大人気。ファンタジーは、かねてより少女マンガの人気ジャンルでしたが、ブームを受けて一層の進化を遂げています。ロマンあふれるファンタジーの名作を紹介しましょう。
雨の公国の一族は、天候を司る能力の持ち主。第四公女のニケ・ルメルシエは、晴れの大国の太陽王・リヴィウス一世に嫁ぐことになりました。即位から三年で世界征服を成し遂げた年若い国王。退屈を紛らわすため、ニケに雨をふらせろと命じます。ニケは、雨ふらしの条件として「美しい世界」を見せるよういいますが……。
薬師として独立して数年、コレットは大忙しの毎日を送っていました。薬を求める患者に追われて、疲れ果てたコレットが逃げ込んだのは深い井戸。その底には、死者の国・冥府が広がっていました。そこでコレットは、体調を崩していた冥王・ハデスの治療をすることになり……!? 癒しとロマンスあふれる神話ラブ・ストーリー!
転生ロマンスの人気
2010年代、オンラインの投稿小説やライトノベルで「異世界転生物」が大流行。その影響で、少年マンガを中心に「異世界転生マンガ」が人気となりました。現実世界から転移・転生するファンタジー世界に、多くの読者が夢中になっています。このブームが少女マンガにも反映され、ラブ・ロマンス×転生のマンガが登場。キャラクターの「前世の記憶」がトリガーとなって、ストーリーがドラマチックに展開する作品群です。
「初めて会うはずなのに 私は確かにその人を知っていた」。青八木新菜10歳は、ボールを拾いに入った隣家の庭で、前世の恋人・伊丹篤朗(25歳)に再会します。新菜は、篤朗に元カノの大宮千歳のことを聞きますが、彼は「忘れた」といいます。前世の自分が忘れられたと知り、新菜の心は砕けますが……。年の差&転生ロマンス。
大路昴は、女子にモテモテの王子系女子。昔住んでいた街に、戻ってきました。そこで待っていたのは、幼なじみの仁(めぐみ)をはじめとする、元親、真白、零時ら「プリンス」と呼ばれる男子たち。昴は、そんな彼らと前世からの繋がりがあるといわれて驚きます。前世の昴は、大魔女からある呪いをかけられたというのです……。
column2010年代の出来事
2011年、FIFA女子ワールドカップドイツ大会で、「なでしこジャパン」が優勝。「花とゆめ」では、16年にサッカー女子が主役の『青春アウェー』(コータ)を連載し、話題を呼んでいます。14年に創刊40周年を迎えた「花とゆめ」は、18年より電子版の配信をスタート。紙と電子の両面から、エンターテインメントを届けています。
執筆:メモリーバンク 文責:ebookjapan
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