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心揺さぶるマンガの名言 Vol.5 練習の苦しみを乗り越える言葉

マンガは、至言・名言の宝庫。マンガのセリフの中に、試練を乗り越えるためのヒントを見つけられることもあります。

この特集では、マンガ好きの全ての人に届けたい、名セリフを紹介します。今回は、練習の苦しみを乗り越える言葉がテーマです。

スポーツや芸術の分野で重視される基礎練習、さらにルーティンワーク型の業務など……。私たちの日常生活では、同じ作業の繰り返しが必要になる場面が多々あります。“地道な努力が苦手”という人に、おススメの言葉を紹介しましょう。

毎日振ったバットの数を、神様はちゃんと数えているんです

コウこと樹多村 光(きたむらこう)は、スポーツ用品店の一人息子。近所でバッティングセンター&喫茶店「クローバー」を営む月島家の四姉妹とは幼なじみです。

コウは、月島姉妹の中でも同じ年、同じ日、同じ病院で生まれた次女の若葉と大の仲良し。しかし一歳年少で野球好きの三女・青葉とは、どうにも馬が合いません。

コウが小学5年生の夏休み、彼と月島四姉妹の運命が大きく動きます。クローバーの四つの葉は、幸福をもたらすと言いますが……!? 野球マンガの名手・あだち充による名作マンガから、練習の大切さを実感する言葉を紹介します。

クロスゲーム 著者:あだち充

小学五年生の夏休み、コウは月島家の次女・若葉と夏祭りに行く約束を交わしました。しかし彼女はその約束を守ることなく、突然の水の事故でこの世を去ってしまいます。

それから時が流れ、コウは星秀学園高等部の野球部に入部。亡くなった若葉との約束を守るため、密かにトレーニングを続けていたのです。しかし大門監督と対立したコウは一軍に入れず、プレハブ組に追いやられます。

しかし二度にわたる一軍との激戦の末、コウたちプレハブ組は勝利を勝ち取るのです。コウは高校三年生となり、月島家の三女・青葉は高校二年生となります。生前の若葉の夢は、みんなで一緒に甲子園に行くことでした。姉の夢を継いだ青葉が見守る中、コウにとって高校最後の夏が幕を開けます。

高校三年生のコウにとって最後となる、全国高等学校野球選手権大会東京大会が始まりました。初戦、都立松波高校を5回コールドで制した星秀学園。二回戦は、黒駒実業を制した都立瀬名高校に当たりました。

瀬名高校には、かつて星秀学園でプレイしていた三木竜正が転校していました。ランナーを出しつつ要所は抑える瀬名高校。両チーム得点を取れないまま、試合は8回まで進みます。

しかし星秀学園二年生の江原がヒットで出塁し、チームにチャンスをもたらします。スタンドで試合を応援していた月島青葉は、二年生の健闘ぶりを評価します。「毎日振ったバットの数を、神様はちゃんと数えているんです」。野球の基礎練習の中には、素振りのように単調な内容のものもあります。しかし、日々の努力は決して裏切ることがありません。

同じところをぐるぐるしてるよーに感じても 実は少しずつ上にあがってるもんなんだぞ!!

憧れの白翔(しらと)高校に入学した小野つばさ。小学生の時に観た選抜高校野球大会のテレビ中継で、吹奏楽部の演奏を聴いて以来ずっと白翔高校を目指してきたのです。

つばさが憧れているのは、アルプススタンドの花形・トランペット。しかし小学校で器楽クラブに入っても、気後れして「トランペットがやりたい」と言えませんでした。中学校に入っても、周囲の反対により吹奏楽の道を諦めています。

少し気弱な性格のつばさですが、吹奏楽の強豪校に入って、厳しい練習についていけるのでしょうか――。

青空エール 著者:河原和音

河原和音の『青空エール』は、「別冊マーガレット」(集英社)で2008(平成20)年から2015(平成27)年にかけて連載された人気作。夢を追う高校生の姿が、多くのファンを魅了しました。

北海道白翔高校は、野球と吹奏楽の名門校です。吹奏楽部でトランペットを吹くため、白翔高校を選んだつばさですが、実はトランペットの初心者。

白翔高校吹奏楽部には、志の高い経験者ばかりが集まっています。そんな中で、つばさはトランペットの音を鳴らすことさえままならず、入部早々出遅れてしまいます。そんな彼女を励ますのが、野球部に所属する級友の山田大介です。彼は野球で、つばさはトランペットによる応援で、ともに甲子園に行こうと言うのです。

白翔高校吹奏楽部の入部者は、ほとんどが部活推薦によるもの。中学でも指折りの奏者が集まり全国トップレベルを目指しています。しかし、つばさに基礎を教えるために先輩たちの時間が割かれてしまいます。つばさは、他の部員たちに迷惑を掛けているのでしょうか。

入部早々壁につき当たったつばさですが、挫けてはいられません。山田大介に励まされながら、トランペットの基礎練習に励みます。腹式呼吸に、マウスピースを使ったアンブシュア(口の周りの筋肉の使い方)――。毎日同じ練習を繰り返しますが、なかなか良い音が出せません。

つばさは進歩が見えないことに、大きな焦りを感じます。そんな彼女に、大介は優しく声を掛けるのです。「同じところをぐるぐるしてるよーに感じても 実は少しずつ上にあがってるもんなんだぞ!!」。伸び悩むことの苦しさは、吹奏楽も野球も同じです。大介の実体験にもとづく言葉は、つばさの心に大きく響きます。

思い切り思い切って、毎日毎日出し切らないと。

宇宙に青く大きく輝く「青色巨星(ブルージャイアント)」。激しく高温で燃えるため、青い色を放つのだと考えられています。

石塚真一の『BLUE GIANT』は、ジャズのスター・プレーヤーを目指す宮本 大(みやもとだい)が主人公です。高校生の時に、友人の影響でジャズに魅了された大。以来、雨の日も風の日もサックスの練習に明け暮れてきました。

果たして大は、ジャズ界に燦然と輝く青色巨星になれるのでしょうか。一流を目指して日々の練習に励む彼の名言を紹介します。

BLUE GIANT 著者:石塚真一

仙台の高校を卒業した宮本 大は、一流のジャズ・プレーヤーを目指して上京。進学のため先に上京していた同級生・玉田俊二(たまだしゅんじ)の家に転がり込みます。

ピアニスト・沢辺雪祈(さわべゆきのり)と出会った大は、彼の才能に惚れ込んでバンドに勧誘。さらに玉田をドラムに引き込んで、「JASS(ジャス)」というトリオを結成するのです。

玉田はドラムの初心者。雪祈はドラマーの交代を勧めますが、大は“ジャズの間口”を狭めてはいけないと言って玉田を励まします。その想いに応えようと、玉田も必死にドラムを練習。二人のジャズへの情熱は、玉田の参加を拒んでいた雪祈の心を氷解させました。気持ちを新たにしたJASSの三人は、更なる高みを目指します。

ライブの回数を重ねるうちに、JASSのファンも増えてきました。やがてJASSは、客としてライブに来ていたプロギタリスト・川喜田 元の目に留まります。彼は、旧知のジャズバンド「ファイブ」にJASSのライブを見るように推薦。結成後10年経ってもくすぶっているファイブに、新しい刺激を与えようと考えたのです。

JASSのライブ終了後、その打ち上げに参加したファイブのメンバー。そこで酒に飲まれてしまい、つい愚痴を言ってしまいます。10年間頑張っても、ファイブには音楽だけで生活できる者は現れませんでした。“若造”には、この苦労が分からないと言うのです。

宮本 大はその愚痴に対して切り返します。「『ジャス』はでっっかくなって、武道館と東京ドームをいっぱいにします!!」「そのタメには…」「思い切り思い切って、毎日毎日出し切らないと。」と言うのです。ゴールが見えない日々に焦燥感を覚えるファイブのメンバー。しかし大は、ゴールがない世界で演奏できることは“最高に幸せ”なんだと、互いを励ますのです。

「苦しい。もう止まってしまいたい。」 そう思った瞬間からの、一歩。

「おれはとべる!!」。バレーボールに魅せられた日向翔陽(ひなたしょうよう)は、友人をかき集めて「即席素人チーム」を結成。中学校最初で最後のバレーボール公式戦に挑みます。しかし、初戦の相手は優勝候補の北川第一中学。「コート上の王様」の異名をもつ影山飛雄に惨敗してしまうのです。

リベンジを誓った日向は、烏野(からすの)高校に進学して排球(バレーボール)部の門を叩きます。『ハイキュー!!』は、古舘春一によるバレーボールマンガ。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で2012(平成24)年から2020(令和2)年に連載されて大人気となりました。

一時減少していた高校男子バレーボールの競技人口は、本作の連載開始後に急増。約3万7000人だった競技人口は、2019年には約4万5000人まで回復したと言われています。そんなバレーボールのヒット作から、ファンを魅了した名言を紹介します。

ハイキュー!! 著者:古舘春一

春高バレーこと、全日本バレーボール高等学校選手権大会のテレビ中継。190cm近い選手がひしめくコートの中で、高身長とは言えない170cmの身長で躍動する選手がいました。「小さな巨人」と称賛されたその選手は、地元・宮城県立烏野高校のエース。

その活躍を見た日向翔陽は、バレーボールにすっかり魅了されてしまいました。日向自身も、身長は高くありません。しかし、身体的不利を補って余りあるほどの身体能力と、バレーボールへの情熱を持ち合わせていました。

しかし日向率いるチームは、影山飛雄率いるチームに破れてしまいました。日向が中学校生活を掛けた試合でしたが、その対戦時間はわずか31分。影山から「勝ち残りたかったら 強くなってみろよ」と言われ、日向は高校でのリベンジを誓います。そして憧れの烏野高校排球部に入部した日向でしたが、そこには宿敵と思っていた影山が待ち受けていたのです。

排球部の活動が始まりましたが、日向翔陽と影山飛雄は反りが合いません。その様子を見た主将の澤村大地は、烏野高校の現状を説明します。烏野高校は今や落ちた強豪校。他校から「飛べない烏」と揶揄されていると言うのです。

澤村は、春高バレーにもう一度行くという目標を掲げます。そして、日向と影山が互いにチームメイトだと自覚するまで、部活への参加は許さないと宣言するのです。影山の提案により、日向は彼と手を組むことになりました。

先輩たちに連携の強さをアピールするため、日向と影山は二人だけの猛練習に励みます。日向には、昔から“勝利にしがみつく力”がありました。「『苦しい。もう止まってしまいたい。』そう思った瞬間からの、一歩。」を踏み出す気力があるのです。ボールに食らいつく日向の姿は、ライバルの影山をも感心させます。練習を通じて、二人の間に固い絆が生まれました。

発想の転換で、練習の苦しみを乗り越える

野球やバレーボールを題材にしたスポーツマンガ、さらに音楽やバレエなど芸術がテーマの作品から、練習の苦しみを乗り越えるための名言を紹介しました。

基礎がしっかりできていれば、スポーツも芸術もさらなる高みを目指すことができます。ゴールが見えないことに焦燥感を覚える時もありますが、気持ちを切り替えて練習を続けることも大切です。

物事を一度で成し遂げることができれば、どれだけ楽なことでしょう。しかし“器用貧乏”という言葉がありますが、なまじ器用であるために物事を極められない人がいるのも確かです。練習のジレンマを感じた時には、マンガの名作に元気をもらって再挑戦してみてください!

執筆:メモリーバンク / 柿原麻美 *文中一部敬称略

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