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心揺さぶるマンガの名言 Vol.7 人の絆を深めるマンガの名セリフ

マンガは、至言・名言の宝庫です。マンガのキャラクターが放つセリフには、時に人生の試練を乗り越えるヒントを見つけることができます。

この特集では、マンガ好きの全ての人に届けたい名セリフを紹介します。今回は、人の絆を深める言葉がテーマ。思いやりがあふれる、感動のセリフを集めてみました。

スポーツやビジネスなどでは、信頼関係を築くことが組織力強化に繋がります。友情や恋愛においても、パートナーと絆を深めることで良好な関係を築くことができるのです。マンガの名場面をのぞいてみましょう。

おれは助けてもらわねェと 生きていけねェ自信がある!!!

時は大海賊時代――。伝説の海賊王ゴール・D・ロジャーが遺した“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を巡り、海賊たちは旗を掲げて戦っていました。そんな海賊に憧れた少年・モンキー・D・ルフィは、海賊王を目指して大いなる旅に出発します。

1997(平成9)年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載をスタートしてから25年余。今や大長編マンガとなった『ONE PIECE』の序盤から、主人公ルフィによる珠玉の名言を紹介します。

航海の途中で出会ったロロノア・ゾロ、ナミ、ウソップたちを仲間に加えたルフィ。さらに、海上レストランで出会った、凄腕の料理人・サンジを仲間に引き入れています。いよいよ“偉大なる航路(グランドライン)”に入ろうとした一行ですが、ナミが行方をくらましてしまいます――。

ONE PIECE カラー版 著者:尾田栄一郎

クリーク海賊団との戦闘中に、行方をくらましたナミ。ルフィたち一行は、彼女を追って“東の海(イーストブルー)”のココヤシ村にたどり着きます。そこには、魚人の海賊アーロンが支配するアーロンパークがありました。

さらにナミの本当の姿が判明し、ルフィたちを驚愕させます。ナミの腕には、アーロン一味のしるしである刺青があったのです。アーロン一味に村を侵略されて、最愛の養母ベルメールを殺されたナミ。村を救う取り引きをするため、ナミはアーロンの一味となっていたのです。

ナミの悲壮な思いを知ったルフィたちは、彼女を救うためアーロン一味の根城に殴り込みます。

ルフィが怒涛の攻撃を浴びせても、アーロンはびくともしません。それどころか屋敷の石柱をかみ砕いて、ルフィたちを驚愕させます。

アーロンの鮫のような歯と強大なアゴの力は、魚人として生まれ持った力です。しかしルフィは「そんなの自慢すんな」と答えます。確かに人間はバカで非力で愚かなのかもしれません。しかし一人で何もできないからこそ、仲間の助けを借りるのです。

ルフィはゾロのような剣の達人でないばかりか、ナミのような航海術も持っていません。サンジのように料理も作れないし、ウソップのような噓をつくこともできません。「おれは助けてもらわねェと 生きていけねェ自信がある!!!」。仲間の支えのおかげで、ルフィはどんな強敵にも勝てるといいます。仲間を大切に思うルフィの言葉が、ナミの心を勇気づけます。

そんな物なくったって 僕は君と一緒に遊びたいよ!

両親の私欲によって、悪魔に売られた不憫な少年・入間(いるま)くん。孫のいない大悪魔・サリバンに引き取られて、悪魔の学校・バビルスに通うことになりました。

「人間丸々我らの食い物 魂・血と肉 残さず啜(すす)れ――」。バビルスの校歌を聞いた入間は、大変な学園に来たことを悟りました。入間の正体が人間だと知れたら、悪魔の餌食となってしまうことでしょう。

しかし入間は類まれなる危機回避能力で、次々と降り掛かる難題を切り抜けます。さらに持ち前の“人間力”で、悪魔をも味方につけていくのです。悪魔の少女ウァラク・クララの心を開かせた、入間の言葉を紹介します。

魔入りました!入間くん 著者:西修

『魔入りました! 入間くん』は、西 修によるファンタジー・コメディの人気作です。2017(平成29)年から「週刊少年チャンピオン」で連載スタートし、2024(令和6)年11月時点で単行本累計部数1700万部を突破。これまで3回にわたってテレビアニメ化されてきました。

等身大の少年少女が活躍する学園マンガでもある本作。主人公の鈴木入間が、友人と力を合わせて困難を乗り切る姿を描いて、幅広い世代の読者から支持を得ています。

大悪魔・サリバンの気まぐれで、彼の孫になった入間くん。サリバンが理事長を務める悪魔学校バビルスに通うことになりましたが、そこで待っていたのは超個性的な悪魔たちでした。

鈴木入間の両親は、規格外のクズ人間。入間が1歳で歩き始めると、彼を社会にたたき出して働かせてきました。トラブル解決の英才教育を受けた結果、入間が身につけたのは強靭なメンタルと、誰とでも仲良くなれるコミュニケーション能力だったのです。

入間が悪魔学校バビルスで出会ったウァラク・クララは、エキセントリックな性格の女の子。クララは友だちが欲しいあまり、魔力でジュースやお菓子を出して周囲の気を引こうとしますが、その結果“便利屋”として扱われるようになってしまいました。

しかし入間は、クララが差しだす贈り物を「いらない」と言うのです。「そんな物なくったって 僕は君と一緒に遊びたいよ!」。友だちになるのに、見返りなんて必要ありません。周囲から浮いていたクララですが、入間の言葉を聞いて自信を取り戻します。入間の悪魔学校生活は、こうして賑やかさを増していくのでした。

じゃあ どっちがカッケー隊員になるか勝負だ

『怪獣8号』は、世界屈指の怪獣発生数を記録する日本を舞台としたバトル・アクション。Webコミック配信サイト「少年ジャンプ+」(集英社)の人気作品で、2024(令和6)年春にテレビアニメ化されて大きな話題となりました。

人々の生活を蹂躙する怪獣を倒すため、日本防衛隊は日々命懸けで戦っています。そんな隊員たちに憧れながら、やむなく怪獣専門清掃業者のモンスタースイーパーに入社した日比野カフカ。日本防衛隊の活躍の裏で、駆除された怪獣の残骸を始末してきたのです。

しかし日本防衛隊入隊の夢を叶えるため、カフカは再び立ち上がります。幼馴染みの亜白ミナと交わした、あの日の約束を守るために――。

怪獣8号 著者:松本直也

少年時代の日比野カフカは、怪獣によって全てを破壊されてしまいました。カフカの家も学校も壊されてしまったのです。

幼馴染みの少女・亜白ミナも家を壊された挙句、飼いネコのミィコの命を奪われています。「俺(私)防衛隊員になる」。カフカとミナは、ともに日本防衛隊の隊員となって怪獣を殲滅することを誓ったのです。

カフカは涙ぐむミナを前に、「じゃあ どっちがカッケー隊員になるか勝負だ」と言って、彼女を勇気づけます。この日の約束を実現するため、カフカとミナは日本防衛隊を目指してきました。

それから年月が経ち、亜白ミナだけが日本防衛隊への入隊を許されます。彼女は入隊後すぐに頭角を現わして、第3部隊の隊長に抜擢されました。

日比野カフカは一人出遅れて落ち込みますが、モンスタースイーパー社の後輩・市川レノのアドバイスを受けて、再び防衛隊を目指す決意を固めます。

しかし本獣の駆除後に現われた余獣が、カフカとレノを急襲。そこに亜白ミナ率いる日本防衛隊第3部隊が現れて、余獣を一瞬で駆逐します。陣頭指揮をとるミナを見て、カフカは彼女が手の届かないところに行ってしまったような思いを味わいます。しかしカフカは落胆しながらも、諦めることはありません。“カッケー隊員”になる勝負は、まだ終わっていないのです。

俺ぁ友情ってのは 言葉や理屈…それらを超えた所にあると思うんだ

耳の聞こえる少年・石田将也。耳の聞こえない転校生・西宮硝子。小学6年生の二人は、運命的な出会いを果たしました。

硝子は筆談を通じて級友とコミュニケーションを図ろうとしますが、合唱コンクールで入賞を逃したことをきっかけに、将也を筆頭とするクラス全体からいじめにあってしまいます。しかし皮肉なことに、クラスのいじめの矛先は、次第に硝子から将也へと移っていくのです。

本作は、「週刊少年マガジン」(講談社)連載時に大反響を巻き起こした衝撃作。2016(平成28)年には京都アニメーションによる制作で劇場版アニメが公開され、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞など、名だたる賞を受賞しています。読者を感動させた名作から、将也の心の傷に寄り添う友人の言葉を紹介します。

聲の形 著者:大今良時

小学校6年生の時、石田将也は聴覚に障害を持つ転校生・西宮硝子をいじめました。それはクラスメイトも同じこと。

硝子に教えてあげる手間や、授業が遅れることにストレスを感じていた児童たちは、合唱コンクールで入賞を逃したことをきっかけに、クラスぐるみで硝子をいじめるようになりました。

やがていじめは激しさを増し、将也は硝子の補聴器を取り上げて壊してしまいます。しかし硝子の母親から学校に電話があったことで風向きが急変。校長は、硝子の補聴器が5か月で8個も紛失または故障していること、その総額は約170万円に達することを説明。事の重大さを悟ったクラスの一同は、犯人として将也の名前を挙げて彼をつるし上げたのです。

石田将也が、西宮硝子に代わるいじめの標的となってしまいました。やがて硝子は転校しますが、彼女がいなくなった後で将也は気づくのです。毎朝、何者かに落書きされた机を拭いていた硝子。彼女が拭いていたのは、ほかならぬ将也の机だったのです。

それから将也は自己嫌悪と後悔の念にさいなまれ、孤独を深めてきました。高校3年生となった将也は、手話サークルの会場で捜し続けていた硝子と再会。謝罪とともに「友達」になって欲しいことを告げると、硝子は将也の気持ちに手を握る形で応えました。しかし硝子の母親は、将也の謝罪を受け入れずビンタで返したのです。

同じ頃、将也とクラスメイト・永束友宏との間に小さな友情が芽生えていました。硝子の母親に叩かれて自信を失った将也に、永束はこう諭します。「俺ぁ友情ってのは」「言葉や理屈…それらを超えた所にあると思うんだ」。その言葉は傷ついた将也に、ささやかな自信を取り戻させました。将也は勇気を振り絞り、再び手話サークルの扉を叩くのです。

ま… 任せとけ…

最強の不良軍団にして、街の英雄――。“防風鈴(ボウフウリン)”こと風鈴高校は、偏差値最底辺の超不良校ですが、街の治安を守るため活躍しています。

この春、不良の頂点を目指して街にやって来た桜 遥。風鈴高校に入学し、防風鈴の一員として街を守るため戦い始めます。

本作は、Webコミック配信サイト「マガジンポケット」(講談社)で、2021(令和3)年から連載スタート。2024(令和6)年春にテレビアニメ化された人気作品です。拳で街を守る最強のケンカ伝説には、男の名言があふれています。

WIND BREAKER 著者:にいさとる

風鈴高校は“落ちこぼれ”の吹き溜まり、毎日が派閥争いに下剋上――そんな評判を聞きつけて、不良少年・桜 遥は風鈴高校にやって来ました。超不良校と名高いこの高校で、ケンカの“てっぺん”を目指そうというのです。

髪と目の色が左右で異なる桜は、外見のせいで周囲から好奇の目で見られてきました。心の奥底に孤独を抱えた彼が、自分の価値を見出したのがケンカに勝つこと。しかし、いざ風鈴高校の不良生徒たちに会ってみると、彼らが自警団・防風鈴(ボウフウリン)を結成し、街の治安維持のため活躍していることが分かったのです。

風鈴高校1年1組に入った桜は、多聞衆(3学年共通の1組の通称)1年の級長となります。人と接することが苦手な桜ですが、仲間と出会ったことで優しさや気遣いに目覚めていくことになります。

防風鈴の一員として活動することになった桜 遥。初めての見回り中に、不良に襲われた中学生を助けます。その中学生を襲っていたのは、隣のシマを支配する「獅子頭連(ししとうれん)」。

防風鈴と獅子頭連は、互いのチームの存続を賭けたタイマン5本勝負で雌雄を決することになりました。桜はこれまでにもケンカを多数経験してきましたが、この勝負は防風鈴としての初陣。桜にとって特別な意味を持つ一戦でした。

一匹狼の桜は、誰かのために戦うのは今回が初めて。獅子頭連に襲われた中学生に「ま…」「任せとけ…」と言った桜。中学生を励ますための言葉でしたが、同時に自分を奮い立たせる言葉でもありました。桜はいつも以上の力をみなぎらせて、獅子頭連の副頭取・十亀 条とのタイマンに挑みます。

思いやりある言葉が、人との絆を深めてくれる

ここまで、人の絆を深めるマンガの名セリフを紹介してきました。いずれも、他者への思いやりがあふれるセリフばかり。仲間の気持ちに寄り添う優しさは、読者に愛されるキャラクターの条件とも言えるでしょう。

『ONE PIECE』『魔入りました! 入間くん』のセリフは、仲間を大切にすることや、チームワークの重要性を教えてくれます。『怪獣8号』『WIND BREAKER』のセリフには、仲間の信頼を裏切らない覚悟が垣間見えます。

『聲の形』では、取り返しのつかない失敗をした少年の姿が描かれています。その深い後悔の念を感じた友人は、そっと言葉をかけて彼を後押しするのです。感動的な言葉は、読者の心の奥底に残り続けます。あなたの隣で困っている人がいたら、ぜひマンガの名場面を思い出して声をかけてみてください。その人との絆を深めてくれることでしょう。

執筆:メモリーバンク / 柿原麻美 *文中一部敬称略

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