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心揺さぶるマンガの名言 Vol.8 やるしかない! 覚悟が決まるマンガの名言

マンガは、名言・至言の宝庫です。キャラクターが放つセリフには、読者が試練を乗り越えるためのヒントがあふれています。

この特集では、マンガ好きの全ての人に贈りたい名セリフを紹介します。今回は、覚悟を決めなければならない時に、勇気をくれる言葉を集めました。人が勝負に挑む時に、求められるものは唯一つ――“覚悟”の気持ちです。

「やるしかない」と覚悟を決めれば、大きな力が湧いてきます。マンガの名場面から、ガツンと目の覚める一言をもらいましょう。

腕がなけりゃ 誰一人救えないんだよ!!!!

時は大海賊時代。伝説の海賊王、ゴール・D・ロジャーの遺した“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を巡り、幾人もの海賊たちが旗を掲げて戦っていました。海賊王に憧れた一人、モンキー・ D・ルフィも大海原目指して冒険に出ます。

1997(平成9)年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載をスタートしてから25年余。大長編マンガの『ONE PIECE』から、人気キャラクターのトニートニー・チョッパーにまつわる名言を紹介します。

ルフィは、航海の途中で出会ったロロノア・ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジを仲間に加えて旅を続けます。一行は、“偉大なる航路(グランドライン)”突入を果たしますが、秘密犯罪会社B・W(バロックワークス)の“アラバスタ乗っ取り”計画に巻き込まれてしまったのです。

ONE PIECE 著者:尾田栄一郎

モンキー・D・ルフィとその仲間は、アラバスタ王国の王女であるネフェルタリ・ビビの護衛を引き受けました。彼女を故郷に送り届ける旅の途中で、一行はリトルガーデンという島へ立ち寄ります。

この島で、B・Wが送り込んだ刺客との死闘に勝利したルフィたち。急ぎアラバスタを目指して出航しますが、船上でナミが病気になってしまいました。しかしルフィの船には、医術の心得がある者がいません。

ドラム島へたどり着いたルフィたちは、この島唯一の医者であるDr.くれはを探します。ドラムは吹雪が吹き荒れる冬島で、 Dr.くれはは島で最も高い山の頂上に住む“魔女”だと言います。ルフィたちが命からがら山頂にたどり着くと、そこには Dr.くれはとトナカイのトニートニー・チョッパーがいました。

トニートニー・チョッパーは、“ヒトヒトの実”を食べて、人の能力を身につけた“人間トナカイ”。さらに Dr.くれはの教えによって、彼女の医術の全てを獲得していました。ルフィはチョッパーを仲間に誘いますが、彼にはこの地に残らねばならぬ理由がありました。この国を憂いて殉じた盟友、 Dr.ヒルルクの墓標を守る使命を感じていたのです。

かつてチョッパーは、病に侵されたDr.ヒルルクのためキノコのスープを作りましたが、彼が万能薬だと思い込んでいたキノコは猛毒のアミウダケ。「いいかい 優しいだけじゃ人は救えないんだ !!!」「人の命を救いたきゃ それなりの知識と医術を身につけな!!!」「腕がなけりゃ 誰一人救えないんだよ!!!!」。Dr.くれははチョッパーを一喝しましたが、時すでに遅し――。

かねてより国王ワポルによる悪政を案じていたヒルルクは、王の目前で自ら命を絶ちました。この一件で、チョッパーは心に大きな傷を負いましたが、ルフィとの出会いが彼の気概を呼び覚まします。チョッパーは、ルフィや仲間とともに船出することを決意。 Dr.くれはの教えを噛みしめて、医者としての最高の心と、最高の腕を継いだトナカイとなったのです。

これより我ら修羅に入る!

『花の慶次―雲のかなたに―』は、“傾奇者(かぶきもの)”と呼ばれた戦国武将・前田慶次の生き様を描いた名作です。

隆 慶一郎の時代小説『一夢庵風流記』を原作に、原 哲夫が重厚な戦国絵巻として描き上げた本作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で 1990(平成2)年から1993(平成5)年に連載されて、大人気となりました。

戦国武将が命を賭して放ったセリフは、読者の心に残って輝きを放ち続けます。佐渡の河原田(かわはらだ)城攻めの場面から、前田慶次による覚悟の言葉を紹介します。

花の慶次―雲のかなたに― 原作:隆慶一郎 漫画:原哲夫 脚本:麻生未央

時は戦国時代末期――滝川益氏の次男として生まれた前田慶次は、前田利家の兄・利久の養子に出されました。慶次は加賀随一の“傾奇者(かぶきもの)”。「傾(かぶ)く」とは、異風の姿形を好み、異様な振る舞いや突飛な行動を愛することを意味する言葉です。慶次は傾いた装束と名馬・松風(まつかぜ)を操る豪勇ぶりで、人々の注目を集めていました。

しかし利家は、何かと騒動を巻き起こすこの甥を快く思っていませんでした。利家はお抱えの四井主馬(よつい しゅめ)に命じ、加賀忍軍に慶次を襲わせますが、撃退されてしまいます。慶次は育ての父・利久を亡くしたのを機に、叔父の下を去ることを決意。こうして慶次は脱藩し、群雄が割拠する戦国の野に放たれたのです。

日本海に浮かぶ越後領佐渡は、約400年にわたり本間一族に支配されてきました。しかしその内実は一族同士が争いを繰り返し、越後藩主・上杉景勝の調停も聞き入れぬ有様。景勝が業を煮やして攻め入ると、本間は上杉派と反上杉派に一族を二分して争います。狡猾にも一族の血を絶やさぬ手法を取るため、佐渡の騒乱が収まった試しはありませんでした。

天正17(1589)年6月、上杉景勝は長年の騒乱に終止符を打つべく千五百隻の船で佐渡に上陸。反上杉派がたてこもる河原田城の攻撃を試みます。しかし上杉側に付いたはずの本間左馬之助は、景勝に従う素振を見せながら兵を動かそうとしません。反上杉派の本間高茂(たかもち)と共謀し、会津の援軍を得ようと目論んでいたのです。

一方の上杉景勝は、佐渡を平定できなければ、豊臣秀吉から所領と忠臣・直江兼続を召し上げられてしまいます。そんな上杉軍の窮地に、助っ人として現れたのが前田慶次。彼は地元の老人に上杉軍への案内を願いますが、そこで本間一族の非道を耳にします。高茂は農民を兵として連行した挙句、その子どもたちを人質として河原田城に幽閉していたのです。

慶次は河原田城の急襲を景勝に進言しますが、兵を大切にする彼は自軍の貸し出しを拒みます。そこで慶次は、囚人や老人たちを加えた即席の軍を編成しました。いずれも佐渡の将来や子どもの身を案ずる者ばかり。「これより我ら修羅に入る !!」「仏と会えば仏を斬り!!」「鬼と会えば鬼を斬る!!」。慶次の掛け声とともに、覚悟を定めて河原田城に攻め入ります。

俺の敵はだいたい俺です。

アポロ計画は、NASA(アメリカ航空宇宙局)による人類初の有人宇宙飛行計画です。 1972(昭和47)年、アポロ17号が最後の有人月面着陸を行ってから50年余りが経ちました。人類が再び月に降り立つ夢は、いつ叶うのでしょうか。

小山宙哉の『宇宙兄弟』は、宇宙開発に携わる人々の喜びと苦悩を描く名作です。2025年に発表された、第1次月面長期滞在計画をきっかけに物語は動き始めます。この計画のクルーの中に、日本人宇宙飛行士・南波日々人(ヒビト)の名がありました。時を同じくして日本では、日々人の兄である南波六太(ムッタ)も宇宙を目指して活動を始めます。

2011(平成23)年に第56回小学館漫画賞(一般向け部門)と、第35回講談社漫画賞(一般部門)を W受賞した名作は、読者の心に残る名セリフの宝庫。その中から、自らを戒める覚悟の言葉を紹介します。

宇宙兄弟 著者:小山宙哉

ムッタこと南波六太と、ヒビトこと南波日々人は、少年時代から宇宙に憧れてきました。弟のヒビトは、星空の下で“月”を目指すことを誓いました。兄のムッタは、弟に負けじと“火星”に行くことを宣言したのです。

やがてヒビトは宇宙飛行士となり、第1次月面長期滞在計画のクルーとして選出。兄に先駆けて夢を叶えることになりました。一方のムッタは、自動車開発会社に就職するもクビになってしまいました。

しかし、落胆するムッタのもとにJAXA(宇宙航空研究開発機構)から書類審査通過の通知が届きます。ヒビトが母に頼んで応募していたと知り、ムッタは弟との誓いを果たすため、再び宇宙を目指し始めます。

ムッタは1次試験、2次試験を通過するも3次試験で落選。しかし追加合格者として、なんとか最終審査にたどり着きました。JAXAから合格を告げられたムッタは、渡米してNASAの合同基礎訓練に参加することになります。

テキサス州ヒューストンには、各国のアスキャン(宇宙飛行士候補生)が集合。ビンスことビンセント・ボールドは軍人上がりの宇宙飛行士で、ムッタの訓練のスポンサー(訓練教官)となりました。その厳しいプログラムの内容にムッタは苦戦しますが、技術者のピコの助力を得て、キャンサット(超小型衛星)の競技大会を乗り切ります。

ビンスはムッタに問い掛けます。「君にとっての」「敵は誰ですか?」。ビンスはマスコミや科学者、ロボット業界、天文学者でさえも、有人宇宙飛行に反対する者全てが敵だと言います。しかしムッタは全て“仲間”だと言って、「俺の敵は」「だいたい俺です」と答えます。自分の夢の実現を阻み続けたのは自分自身――その自戒の言葉がビンスに衝撃を与えます。

使い魔を恐れろガキども それが真の信頼だ

鈴木入間(いるま)は不憫な少年。ろくでなしの両親によって、悪魔に売られてしまいました。大悪魔・サリバンに引き取られた入間は、彼の孫として悪魔学校・バビルスに通うことになったのです。

この学校に通う悪魔に入間の正体が知れたら、悪魔の餌食となってしまうことでしょう。ところが入間は本人の意志とは裏腹に、大注目を浴び続けてしまいます。

『魔入りました! 入間くん』は、西修による悪魔学園ファンタジー。2024(令和6)年末に発売された第40巻で、単行本累計部数 1,700万部を突破。テレビアニメ第4期の制作も決定した超人気作から、入間の担任教師・カルエゴの名言を紹介します。

魔入りました!入間くん 著者:西修

人間であることを隠し、悪魔学校・バビルスに通い始めた鈴木入間。彼は持ち前の危機回避能力で、トラブルの数々を乗り切ります。

アスモデウス・アリスは名家出身の優等生悪魔。入学早々、彼から決闘を申し込まれましたが、入間は成り行きで彼を打ち負かして心腹させています。さらに元気で明るい女子悪魔のウァラク・クララも友だちに加わり、入間の学園生活は賑やかさを増してきました。

入間、アリス、クララの3人は、問題児(アブノーマル)クラスに振り分けられました。その名の通り問題児ばかりのクラスの担任となったのは、バビルス筆頭のスパルタ教師、ナベリウス・カルエゴ。問題児クラス、波乱の幕開けです。

悪魔学校に、新任教師のバルス・ロビンがやって来ました。彼は問題児クラスの生徒に、“使い魔は相棒(パートナー)”と教えます。しかしその授業内容に、青ざめる生徒が一人いました。鈴木入間は図らずも、担任のカルエゴを使い魔として召喚したことがあり、それ以来カルエゴを主従関係に置くことになってしまったのです。

ロビンに使い魔の召喚を迫られて、入間はしぶしぶカルエゴを召喚。他の生徒たちも続々と使い魔を召喚しますが、アスモデウス・アリスとサブノック・サブロが使い魔同士を戦わせ始めます。その場の混乱を収められないロビンに、カルエゴは厳しい声で問いかけます。「オイッ 新任!」「なぜ 使い魔には信頼が重要か答えろ!」。

使い魔はペットでも相棒でもありません。主人が調教を怠れば、驚異となりうる魔獣なのです。カルエゴは、「使い魔を恐れろ ガキども」「それが 真の信頼だ」と生徒に教えます。入間はカルエゴの召喚をためらいましたが、カルエゴはそんな彼の姿勢が正しいと評価します。他人に何かを命ずる時には、相手を恐れ敬う気持ちと覚悟が大切なのです。

覚悟が決まる至極の名言

人生には、恐怖や不安を覚えてもやり遂げなければならないこともあります。今回は、そんな時に必要な覚悟と勇気をくれる至極の名言をご紹介しました。

『花の慶次―雲のかなたに―』では、主人公が身命を賭して放った言葉が、人の心を動かしています。『ONE PIECE』『宇宙兄弟』で紹介したセリフは、登場人物の心を戒める言葉です。過ぎたことを変えることはできませんが、過去の過ちを繰り返さぬ覚悟ができれば、未来はきっと切り開けるはずです。

『魔入りました! 入間くん』のカルエゴ先生のセリフは、信頼関係の築き方について教えてくれます。時には、目上の人にやっかいな頼み事をしなければならないこともあるでしょう。相手を恐れ敬う気持ちを忘れないこと、そして覚悟を決めて頼むことが肝心です。覚悟を決めたい時には、ぜひマンガの名言に勇気をもらってくださいね。

執筆:メモリーバンク / 柿原麻美 *文中一部敬称略

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