花とゆめHistory 1980年代
白泉社の「花とゆめ」創刊50周年を記念し、懐かしの名作から話題の新作までを大特集!
少女マンガの革命児たる役割を担ってきた「花とゆめ」の道のりを振り返ります。
大作と新路線が生まれた1980年代
「花とゆめ」と、姉妹誌「LaLa」の登場によって、読者が新しいマンガを求める機運が高まりました。さまざまな読者に対応するため、オリジナリティあふれる少女マンガ誌の創刊が続いていきます。読者がティーンエイジャーから大人に成長すると、成人向けレディース・コミックも誕生。活躍の場が拡大したことで、ベテラン作家が意欲的に大作に挑戦しています。それに影響を受けた新人作家も、新しい路線を開拓しました。
ラブコメ隆盛期
少女マンガが由来のラブコメディ。1980年ごろ少年マンガに導入されて、一大ブームを巻き起こしています。78年連載スタートの『うる星やつら』(高橋留美子)に、81年から「タッチ」(あだち充)も加わって、「少年サンデー」(小学館)はラブコメ黄金時代を迎えました。この人気が、少女マンガに一層の刺激をあたえて、恋愛マンガを発展させています。男の子との関係に一歩踏み込んだ、ちょっぴり大人なラブコメの誕生です。
恋は、期待と不安と夢のつづれおり。時として 少女に大人のおんなの顔をさせます――。伊藤真子は16歳の女子高生。スリーサイズは、上から80・56・83とおかしくないのに、どうしてAもBもCも未経験なのかと焦る毎日。そんなちょっぴりオクテの真子が、なぜかカメラ好きの変人・トミーと急接近。少しずつ大人の階段を昇ります。
ミミこと青山美美と、日本画家の塚田州青の恋愛を描くラブコメディ・シリーズ。ミミは12歳の年齢差を越えて、19歳の若さで州青のお嫁さんになりました。赤ちゃんを授かって出産準備に大わらわ。リアルな出産事情や育児の悩み、浮気疑惑に揺れる夫婦の様子を描いて、少女読者に衝撃を与えたラブコメの人気作品です。
「私らしさ」を求めて読むマンガ
24年組が手掛けた男女の垣根を越える作品は、続く後進の作家にも大きな影響を与えています。川原泉は、『笑う大天使(ミカエル)』『甲子園の空に笑え!』を手掛けて、世の中から「変わり者」とされる少年少女を主役に、幸せの在り方を問いました。河惣益巳は『サラディナーサ』「ジェニー・シリーズ」などで、女性が戦う本格アクション・クライムを執筆。自分らしく生きる登場人物の姿に、多くの読者が共感しました。
甲子園まで何マイル!? 広岡真理子は、私立豆の木高校の新任教師。着任早々、野球部顧問に任命されました。田舎の弱小野球部ですが、固い守備と幸運の連続で地方大会を突破! 常日ごろから田畑を駆け回っている豆の木ナインの足は速く、泥にも強かったのです。マンガ界の哲学者、カーラ教授こと川原泉が放つ野球コメディ!
ユージェニー・ヴィクトリア・スミスは、アメリカの名門軍閥の令嬢。愛称はジェニー、「炎の月」「魔女」の異名で恐れられる傭兵です。戦うことでしか、彼女の側にいられない――緑色に光るジェニーの瞳に魅せられた男たちは、彼女につき従って最前線に向かいます。『ジハード〈聖戦〉』を皮切りに描き継がれるジェニー・シリーズ。
学園マンガの拡大
変わりゆく時代の中で、変わらぬ人気を誇るのが青春物のマンガです。若年層が共感しやすい日常テーマの作品は、多くの読者を獲得しています。中でも、等身大の少年少女が活躍する学園マンガは、よりリアルな学校の姿を求めて進化しました。那州雪絵は、全寮制の男子校で繰り広げられる人間模様を赤裸々に描写。野間美由紀の『パズルゲーム☆はいすくーる』は、学園ミステリ・マンガというジャンルを切り拓きました。
蓮川一也は、初恋の女性が兄嫁となったことで、いたたまれずに全寮制の緑都学園に入学。これからは、グリーン・ウッドこと緑林寮が一也の家代わりです。しかし、グリーン・ウッドは変人たちの巣窟で……。一世を風靡した青春ボーイズライフ!
三輪香月と押上大地は、葉蔓(はづる)高校ミステリ研究会の名コンビ。明解な推理と度胸の良さで、学園内のあらゆる難事件を解決します! 葉蔓高校は、生徒に自治権が委ねられている自由な校風。権力をめぐって、さまざまな事件が引き起こされます。37年の長きに渡って描き継がれた、学園ミステリの連作シリーズ。
column1980年代の出来事
1978年の「アニメージュ」(徳間書店)創刊を皮切りに、アニメ専門誌の創刊が続きます。それまで、アニメやマンガは子どもの物とされてきましたが、ようやく大人の娯楽として人権を得たのです。1983年、任天堂がファミリーコンピュータ(ファミコン)を発売。1989年の昭和天皇崩御により、一つの時代が終わりを迎えます。
執筆:メモリーバンク 文責:ebookjapan
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