花とゆめHistory 2000年代
白泉社の「花とゆめ」創刊50周年を記念し、懐かしの名作から話題の新作までを大特集!
少女マンガの革命児たる役割を担ってきた「花とゆめ」の道のりを振り返ります。
2000年代、読者のニーズが多様化
90年代末から2000年代初頭にかけて、インターネットを駆使したIT革命(情報革命)が進みます。情報にアクセスしやすくなったことで、消費者のニーズも多様化。マンガ読者の興味も、さらに拡大していきます。少女マンガ定番の学園物も、伝奇マンガやスポーツマンガ、頭脳バトル、演劇物など、さまざまな要素を取り入れて、ジャンルが細分化されます。マンガの分類がもつ意味合いが、少しずつ薄らいでいきました。
さまざまなメディアミックス展開
1982年、魔夜峰央の『パタリロ!』アニメ化を皮切りに、「花とゆめ」作品のメディアミックスが進みます。2000年代には、アニメはもちろん、人気俳優の主演でテレビドラマ化される作品を多数輩出。高屋奈月の『フルーツバスケット』は二回に渡るテレビアニメ化の他、OVAも製作されています。中条比紗也の『花ざかりの君たちへ』は、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』としてテレビドラマ化されました。
母を失い、天涯孤独となった女子高生の本田透(とおる)はテント暮らし。ところが、テントを張ったのは旧家・草摩家の敷地内でした。透は、学校の王子様的存在の草摩由希と、紫呉(しぐれ)、夾(きょう)が住まう草摩家に、間借りさせてもらうことになります。しかし、この家の人々は何百年も前から呪いに縛られていたのです。
アメリカ育ちの芦屋瑞稀は、憧れの高跳び選手・佐野泉を追いかけて日本に帰国。性別を偽って、全寮制の男子校・桜咲学園に転入します。寮に入った瑞稀は、幸か不幸か、憧れの佐野と同室になりました。しかし、ドキドキの学園生活で彼女を待ち受けていたのは、佐野泉が高跳びを止めてしまったという衝撃的な事実で……。
究極の学園マンガ
学園マンガは、いつの時代も少女マンガの人気者です。一口に学園物といっても、その内容はさまざま。1980年~90年代にかけて、男子寮の内部を赤裸々に描いた那州雪絵の『ここはグリーン・ウッド』、獣医学部の大学生を主役にした佐々木倫子の『動物のお医者さん』など、リアルなタッチの作品が誕生しました。2000年代には、読者が憧れる超エリートや、天賦の才能の持ち主が織りなす学園マンガが登場し、読者の支持を得ています。
超エリート校の白選館学園に入学した華園光15歳。ライバルの滝島彗(けい)を見返すべく、勉強・スポーツに闘志を燃やしています。だけど万年・二位の成績で、一位の彗に追いつけません。学園にはS・A(スペシャル・エー)という特別クラスがあって、最も優秀な生徒だけが選ばれます。トップ・エリートの友情と恋の物語!
田舎町に住む主人公・佐倉蜜柑と今井蛍は親友同士。しかし蛍は、「アリス」という特別な才能の持ち主。天才だけが入学を許される、アリス学園へ転校することになりました。アリス学園へ入学すると、外部との接触が難しくなることを知った蜜柑。蛍に会いたい一心で上京。単身、アリス学園へ乗り込んでいきます。
元気女子の恋愛マンガ
少女マンガでは、早くから性差のテーマが取り上げられてきました。21世紀に入って多様性が叫ばれる中で、少女マンガの内容も一層の進化を遂げていきます。絵夢羅の『Wジュリエット』は、演劇部で男役を演じる少女と、女性として生きる男子を主役にした、逆転版『ロミオとジュリエット』。日高万里の『世界でいちばん大嫌い』では、元気印の女子高生・万葉と、おネェキャラの美容師・杉本の恋模様が描かれます。
演劇部に所属する三浦糸は、高身長と凛々しい顔立ちで男役を演じています。ある日、絶世の美女・天野真琴が入部してきて、圧倒的な演技力と存在感を糸に見せつけます。しかし真琴はワケあって、性別を偽っている男子でした。糸と真琴、性別が逆転した二人は、互いの夢を叶えるため協力して困難を乗り越えていきます。
秋吉万葉(かずは)は、弟の零が通う保育園の水嶋先生に片想い中。だけど水嶋先生の親友で、おネェ言葉の美容師・杉本真紀が苦手です。杉本に恋愛相談をした万葉ですが、彼女の想いは恋ではないと指摘されてしまいます。秋吉家・女三人、男三人の六人きょうだいを描く、青春ラブコメディ「秋吉家シリーズ」の一作です。
column2000年代の出来事
千年紀・ミレニアムの祝賀ムードで幕を開けた2000年代。かつてSFマンガの舞台として、遠い未来だと思われていた21世紀が到来しました。折しも時代はIT革命のど真ん中。電子書籍専用端末が登場し、マンガの読み方も紙媒体から電子媒体へと変化していきます。さらなる活躍の場を求めて、多くのマンガ家が誕生しました。
執筆:メモリーバンク 文責:ebookjapan
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