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『コーポ・ア・コーポ』不器用で愛おしい日常をのぞき見る背徳感に酔いしれる

キラッキラに切り取られた日常の羅列にちょっと疲れを感じている…そんな方におすすめしたいのが岩浪れんじ先生の『コーポ・ア・コーポ』です。泥くさく生きる人々の人間くさい日常が、どれもこれも愛おしく描かれています。

誰もが羨むような生活よりも、人知れずのっぺりと生きる等身大の生活をのぞき見した方が背徳感があって興奮しませんか? そんな私のような嗜好をお持ちの方々の願いを、本作が叶えてくれます。

コーポ・ア・コーポ 1
コーポ・ア・コーポ 岩浪れんじ

レトロなアパート「コーポ」へようこそ

大阪の片隅にひっそりと佇む風呂なし安アパート「コーポ」。物語の中心となるのは、そこに住む一見なんの共通点もなさそうな男女4人です。

家を飛び出し居酒屋で働くユリ、湿った眼差しでいろんな女を拠り所として生きる中条、強面で繊細な心をもつ日雇い労働者の石田、空き部屋でこっそりと怪しい商売をする老人、宮地。

彼らの日常は決して裕福なものではありません。それを象徴するのが第1話です。収集癖のある住人が自死するのですが、死者への思いを巡らせるかと思いきや、大量に残された家電をめぐって誰が何をもらうかで沸く4人。とりあえず利を得ようとするその態度が可笑しくてニヤついてしまいます。

『コーポ・ア・コーポ』は、それぞれに抱えるものがありながらも飄々と日々をこなすコーポの面々とそれを取り巻く人々の群像劇。あっけらかんとしているようで、ちょっぴり不器用な彼らの日常をそっとのぞき見してみましょう。

背徳は最高のスパイス

本作を読み進めると、登場人物たちへの憧れの気持ちが芽生えてきます。彼らの日常を少しご紹介すると、エアコンがないから涼しい場所を求めてさまよい、家賃請求に訪れた大家からは逃げ、お金のために義務的に身体を重ねる…といったようなもので、ここだけ切り取っても憧れる要素はゼロですよね。

では、なぜ彼らからドキドキやワクワクを感じるのかといえば、”バレない範囲で秩序からはみ出しているから”です。自転車の鍵の壊し方を知っていたり、出会い系のサクラのバイトをしていたら職場が摘発されたり、怪しげな見せ物小屋を開いていたり。人によっては知ろうとしなければ一生知ることのないテリトリーです。もしあなたがそうであれば、本作が手取り足取り教えてくれます。

また、読者が魅力に感じる部分が彼らにとっては”呪い”の場合もあります。きっと誰もが幼いころから根深く植え付けられているであろうその呪いから、彼らは程よく目を逸らしつつ生きています。その姿に救われるような気持ちになるのは私だけではないはずです。

こんな風に生きていきたい

『コーポ・ア・コーポ』はあなたの中にこびりついた”こうあるべき”を洗い流してくれます。現実世界で他人のありのままを見られることは稀です。しかし、本作には飾らない人々の生活が溢れています。自分とは縁のなさそうな人物もいれば、逆に似ていたり、”人物あるある”なんてのも豊富に見つけることができるでしょう。

そんなごちゃ混ぜな世界観にふれると、さっきまで気になっていた細かなことがバカらしくなってきて「どう生きようと私の勝手だ〜!」なんて、大声で叫びたくなってくるのです。

執筆:ネゴト / みっちー

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