マルチバースにトリップ!『サンダー3』並行世界で彼らはヒーローとなれるのか
『スパイダーマン』『ドクター・ストレンジ』などでも取り上げられた話題のマルチバース。マルチバースとは、自分が住む宇宙以外にも複数の別の宇宙が並行して存在するという考え方だ。
そのマルチバースの世界観を完璧に利用しきった漫画が誕生した。第1話掲載後、「次にくるマンガ大賞2022」に即ノミネートされた『サンダー3』。SNS上でも「頭が混乱する!」「意表を突かれた!」と瞬く間に大バズりを成し遂げた作品だ。
本作は、漫画界の新星・池田祐輝先生によって描かれる超衝撃のSFエンターテインメント。読んだ人が驚愕する理由を交えつつ、ストーリーにも注目していきたい。
「怪しいディスク」で変わる4人の日常
背が低いことから「スモール3」と呼ばれる手塚ぴょんたろう、お茶の水ひろし、吾妻つばめの3人組。
『サンダー3』©池田祐輝/講談社 第1巻より
ぴょんたろうは妹・ふたばに超がつくほど懐かれ、うんざりする毎日を送っていた。ある日、担任教師のドクから借りた「異次元と繋がるディスク」を再生すると、テレビの画面にまるで写真のように鮮明な風景が映し出される。ふたばはぴょんたろうたちが目を離した隙に、画面から飛び出したトンボが再び画面の中へ戻っていくのを追いかけ、”もうひとつの世界”に足を踏み入れてしまう…。
『サンダー3』©池田祐輝/講談社 第1巻より
そこで見たものはふたばよりも頭身が高く、やけにリアルな印象の人間たち。「何あれ!アニメ!?」とふたばを指さす人間のなかには、少し不気味で異質な存在もいた。ふたばがいないことに気づいたぴょんたろうたちは、ふたばを追いかけて画面のなかへと入り込む。しかし一足遅く、巨大な空飛ぶ機械でふたばは連れ去られてしまう。
『サンダー3』©池田祐輝/講談社 第1巻より
”違和感”だらけの世界観に目が離せない!
表紙で内容を想像すると、どでかいパンチを食らった感覚に陥る。その理由は、各世界ごとに描き分けられた絵柄にあるのだ。この絵柄によってはっきりと線引きされた2つの世界の混在が、本作の魅力である。緻密な筆致の風景、頭身が高く実写のような人間たち。一方で、頭身が低くアニメのようなぴょんきちたちとふたば…。
『サンダー3』©池田祐輝/講談社 第1巻より
決して相容れない2つの世界の人間が、同じ場所に存在することで読者に大きな違和感を与える。しかしこの違和感こそが、似て非なる世界の不可思議さに深みをもたらしているといえる。
驚異的な力で人間たちを救え!
ふたばが連れ去られたことで意気消沈するぴょんたろう。だが、自分たちに驚くべき力があることに気づく。硬いはずの地面は、お菓子みたいに鷲掴み。指を鳴らせば人が吹っ飛び、銃で何発撃たれても無傷である。ひろしが言うには「原子レベルで僕らより脆い、違う物理の世界」だという。
『サンダー3』©池田祐輝/講談社 第1巻より
ぴょんたろうたちが入り込んだマルチバースで暮らす人間たちは今、異質な存在=宇宙人からの侵略の危機に陥っている。そして作中、この圧倒的な力を利用して、宇宙人から殺されそうになる親子を助ける場面がでてくる。
『サンダー3』©池田祐輝/講談社 第2巻より
泣きながらお礼を言われた瞬間、ぴょんたろうの目には一種の期待のようなものがみえる。”もしかすると、この世界でなら自分は何者かになれるかもしれない”。第1話では、バレンタインチョコを誰からももらえずモヤモヤしていたぴょんたろう。そんなパッとしない自分から変われる可能性を見出しているのだろう。 彼らはこの不思議な世界のヒーローとなれるのか。これから白熱するであろうバトルも見逃せない。
マルチバースを舞台にした、新感覚のSFストーリー。本作は、もうひとりの自分との出会いを皮切りに、さらに壮大な展開を見せていく。この先は、ぜひ単行本を手に取って確かめてほしい。