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心揺さぶるマンガの名言 Vol.10 告白前に読みたい恋の名セリフ

マンガは、至言・名言の宝庫です。マンガのキャラクターが放つセリフは、読む者に勇気と力を与えてくれます。

この特集では、全てのマンガ好きの人に届けたい名言を紹介します。今回は、告白前に読みたい恋のセリフがテーマです。

意中の人に、想いを打ち明けるには勇気が必要です。告白した結果、フラレることを考えると自信がなくなってしまうもの――。それでも「当たって砕けろ」という言葉の通り、全力でアタックすれば道が切り拓けるかもしれません。マンガの名場面から、あなたの背中を後押しする恋の名言を紹介します。

好きです!! はじめて会った時からです!!!

剛田猛男は、身長2m、体重120kg(いずれも推定)という、人並み外れた体格の高校生です。猛男はまっすぐな性格と豪快さで、男子から頼りにされています。

同性から慕われる猛男ですが、彼が女の子を好きになっても相手から敬遠されるばかり。幼馴染みのイケメン・砂川誠は、女子から熱い視線を送られていますが、不器用な猛男は相手にされないでいたのです。そんな猛男にも、ついに春が到来したようで――。

告白は直球勝負!? 純情ラブコメディの名作から、恋の名言を紹介します。ストレート過ぎる愛の言葉は、読者の心のど真ん中に刺さるはずです!

俺物語!! 作画:アルコ 原作:河原和音

『俺物語!!』は、「別冊マーガレットsister」(集英社)2011(平成23)年11月号に掲載された読み切り作品の反響を受け、翌年「別冊マーガレット」(集英社)で連載スタート。2016(平成28)年に最終回を迎えたあとも、継続して番外編が発表されているラブコメディの名作です。

『素敵な彼氏』『太陽よりも眩しい星』などで人気の河原和音先生が原作を、『ヤスコとケンジ』『消えた初恋』のアルコ先生が作画を担当しています。実力派の二人が手掛けた本作は、少女マンガとしては異色の巨漢高校生を主人公にして大きな注目を浴びました。

2013(平成25)年に第37回講談社漫画賞少女部門を、2016(平成28)年に第61回小学館漫画賞少女向け部門を受賞。テレビアニメや実写映画も製作されるなど、話題の多い人気作なのです。

幼馴染みの砂川(すな)とは、外見も性格も正反対の猛男。彼が恋する女の子は、いつも砂川を好きになりますが、砂川は彼女たちに見向きもしません。

高校に進学した猛男と砂川は、通学中の電車で女子高生を痴漢から助けます。しかし悪びれる様子のない痴漢を見て、腹を立てた猛男は彼を殴ってしまいました。女子高生の名前は大和凛子。猛男は暴力行為により停学となりましたが、凛子が猛男に礼を言いにきたことから二人の交流が始まります。しかし猛男は凛子に想いを寄せつつも、自信を持つことができません。

凛子から会いたいという連絡があっても、砂川目当てなのだと思い込んだ猛男は、デートに砂川を連れていく始末。そんな猛男を見かねた砂川は、強硬策に打って出ることにしました。部屋に猛男がいることを伏せたまま、凛子に心の内を明かさせたのです。凛子の「好きです!」という言葉を聞いた猛男は、大きな声で返答します。「好きです!!」「はじめて会った時からです!!!」。読者まで幸せになる恋の名言です。

オメーは厄介な難事件なんだよ!

工藤新一は、世界的推理小説家の父をもつ高校生探偵。黒ずくめの男たちの取り引きを目撃したことから、口封じのために毒薬を飲まされ、小学1年生の姿になってしまいました。

それ以来、彼は江戸川コナンと名乗って難事件の解決に挑んできました。全ては黒ずくめの組織に繋がる手がかりを得るためですが、新一は幼馴染みの少女・毛利蘭に正体を隠さなければなりませんでした。

蘭は、新一に会えない寂しさに耐えますが、時に彼への想いがあふれ出てしまうのです。女心の解明は名探偵でも難しい!? 蘭と新一が互いの想いの丈を伝え合った、ロンドンでの名場面を紹介します。

名探偵コナン 著者:青山剛昌

『名探偵コナン』は、青山剛昌先生による人気作。「週刊少年サンデー」(小学館)で、1994(平成6)年から連載しているロングヒット作品です。

全世界累計発行部数は2億7000万部(2023〈令和5〉年2月時点)を突破! 2025(令和7)年3月現在、刊行されたコミックスは106巻を数えています。大人顔負けの推理を展開する小学生探偵・江戸川コナンの人気は衰えるところを知りません。

推理マンガの金字塔として知られる本作ですが、青春ラブコメディとしての要素も人気の理由の一つ。工藤新一と毛利蘭が、名探偵シャーロック・ホームズの聖地ロンドンで交わしたロマンティックな会話を紹介します。

『名探偵コナン』単行本の第71巻から第72巻にかけて、コナンたちがイギリスのロンドンで活躍するエピソードが収録されています。資産家ダイアナ・キングストンの猫を見つけたコナンは、毛利父娘とともにロンドンに招待されることになったのです。シャーロック・ホームズ博物館を訪れて大興奮のコナンですが、そこでアポロという少年に出会います。

怪しげな男から、大規模な殺人予告を受け取ったと言うアポロ。コナンは犯人捜しに挑みますが、新一として電話をした際にロンドンにいることが蘭にバレてしまいました。コナンは、一時的に高校生姿に戻ることができる解毒薬を飲んで、新一として蘭に会います。

「探偵なら、わたしの心ぐらい…」「推理しなさいよ!!」。コナンと新一が同一人物とは知らない蘭は、新一の不審な言動を咎めて苛立ちをぶつけます。それに対し新一は、「オメーは厄介な難事件なんだよ!」と返します。たとえホームズであっても、好きな女の子の心を読み解くのは難しいと言うのです。幼馴染みだった2人の関係が大きく近づきます。

“恋”なので 仕方ありませんでした

東京の大手電機会社に勤める堂薗(どうぞの)つぐみは、恋に疲れて長期休暇を取ることにしました。入院中の祖母に鍵をもらい、彼女の家で過ごし始めたつぐみですが、祖母はほどなくして亡くなってしまいます。

つぐみは、祖母の家に残って田舎暮らしを続けますが、同じく祖母から鍵をもらったという中年男性が現れます。彼はかつて祖母の教え子で、彼女を愛しながらも受け入れられなかったと語ります。

もう誰も愛さないと思っていた男女が、一つ屋根の下で奇妙な同居を始めることになりました。人生について、恋について考えさせられる、マンガの名セリフを紹介します。

娚の一生 著者:西炯子

『娚(おとこ)の一生』は西炯子先生によるマンガ作品。「月刊フラワーズ」(小学館)で2008(平成20)年から2010(平成22)年まで連載されました。心理描写を得意とする著者ならではの大人の恋愛物語が、多くの読者の共感を呼んでいます。

「このマンガを読め! 2010」(フリースタイル)で第5位を獲得。2015(平成27)年には実写映画化されて、大きな話題となりました。

大手電機メーカーの女性社員・堂薗つぐみは、祖母が残した家に住むことになりました。ところがその離れには、大学教授の海江田醇(じゅん)が住みついていたのです。二人の成り行き同居生活が始まりますが、つぐみは海江田のあつかましい性格に閉口してしまいます。しかし海江田から好きだと告げられて、つぐみは少しずつ彼に惹かれていくのです。

祖母の初盆に合わせて、家に親戚が集まりました。つぐみは海江田を布団部屋に閉じ込めて、彼との同居を隠そうとしますが、海江田は客を装って法要に列席してしまいます。海江田は自身が何者なのか、なぜつぐみと同居しているのかを親戚に説明することになりました。

つぐみの祖母は、かつて海江田の恩師でしたが、海江田は師弟という関係を越えて彼女を愛したと言います。ところが、つぐみの祖母は家族を持っていたため、海江田は彼女から拒まれてしまったのです。

恩師の訃報を聞いて駆けつけた海江田は、葬儀でつぐみと出会い、何者か知らぬまま一目ぼれをしたと言います。「名も知らんこの人の近くにおりたいと ぼくの何かが決めてしまった」と語る海江田。つぐみは恩師の孫娘であり、年も離れていますが「“恋”なので 仕方ありませんでした」と言葉を続けます。海江田の真摯な想いが、つぐみと親戚の心を動かします。

人を好きになるのに 理由なんていりますか

橘あきら17歳。少女の片想いの相手は、バイト先のファミレスの店長でした。寝ぐせ頭の後頭部には10円ハゲがあり、たまにズボンのチャックが開いている――そんな冴えないおじさんに恋をしたのです。

この作品は、青春の交差点に立ち止まった少女と、人生の折り返し地点に差しかかった男が織りなす小さな恋の物語。

胸に秘めた想いを抑えきれず、少女はついに打ち明けました。雨上がりの空のように清々しい、恋の名セリフを紹介します。

恋は雨上がりのように 著者:眉月じゅん

『恋は雨上がりのように』は、気鋭のマンガ家・眉月じゅん先生による作品です。小学館の「月刊!スピリッツ」で2014(平成26)年にスタートした本作は、同社「週刊ビッグコミックスピリッツ」に移籍して2018(平成30)年まで連載されています。

とある海辺の街に住む女子高生を主役とした本作ですが、その片想いの相手は遥か年上の男性でした。17歳の橘あきらと、45歳の近藤正己――年の差・28歳の恋物語ですが、陸上選手として挫折した少女が、恋愛を通して再生していく物語が読者の共感を呼んでいます。

“恋雨”の愛称で人気となった本作は、2018(平成30)年、第63回小学館漫画賞一般向け部門を受賞。同じ年の1月よりテレビアニメが放送され、5月には実写映画が公開されて大きな話題となりました。

近藤正己は、ファミレス「ガーデン」の店長となって6年目。昇進の話とは無縁で、客からのクレームに頭を下げる毎日です。そのストレスから後頭部には10円ハゲができていましたが、そんな冴えない男をじっと見つめる少女がいました。風見沢高校2年生の橘あきらです。

あきらは長身でスレンダーな美女ですが、学校が終わると脇目もふらずバイト先の「ガーデン」に向かいます。彼女はかつて陸上部のエースでしたが、足の負傷で競技を続けられなくなっていたのです。部活に顔を出せなくなった彼女の支えとなったのが、近藤の存在でした。しかし離婚しているとは言っても、近藤には小さい子どもがいるのです。

そうとは知っていても、雨の日にあきらの想いがあふれ出てしまいました。「あなたのことが好きです」。あきらから返答を求められ、答えに窮した近藤は「俺なんかのどこがいいの?」と彼女に問いかけます。あきらは「人を好きになるのに 理由なんていりますか」と答えますが、若者のまっすぐな眼差しを見たのはいつ以来でしょうか。近藤の心が揺れ動きます。

お願い…一日でいいから、あたしより長生きして…

おんぼろアパ-トの一刻館で、浪人生活を送る五代裕作。ところが、くせ者ぞろいの住人たちに邪魔をされ、勉強もままならないでいました。五代は劣悪な住環境との決別を考えますが、その矢先とびきり美人の新管理人・音無響子が現れます。

響子に一目ぼれした五代は、引っ越しを撤回。住人たちに振り回されながら、彼女にアタックを続けます。果たして、二人の恋の結末は――?

『めぞん一刻』は、ラブコメの最高傑作と名高いマンガです。歴史に残る名作から、忘れられない愛の言葉を紹介します。

めぞん一刻 〔新装版〕 著者:高橋留美子

『めぞん一刻』は、高橋留美子先生によるラブコメディの名作です。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の1980(昭和55)年11月創刊号から1987(昭和62)年まで連載されました。

1986(昭和61)年にはテレビアニメ化と実写映画化されています。それ以降も、劇場版アニメなどの映像作品が製作されるなど衰えぬ人気を見せています。

アパート・一刻館を舞台に、住人の五代裕作と管理人・音無響子の恋模様を描く本作。響子は若い未亡人で、夫の惣一郎を亡くしてから気持ちの整理がつかないでいました。裕作の気持ちを知りながら、それをはぐらかす響子ですが、裕作が女の子と親しげにしていると嫉妬をしてしまうのです。すれ違いを繰り返す男女のドラマが、読者の共感を呼んでいます。

ラブコメの金字塔『めぞん一刻』には、恋にまつわる名言が満載です。その中から、多くの読者を泣かせたセリフを選んで紹介します。

恋敵の出現や、度重なるすれ違いにより、裕作は響子との距離を縮められずにいました。しかし物語の終盤、就職先が決まった裕作はついに響子にプロポーズを果たしたのです。

「泣かせるようなことは絶対しません」「残りの人生をおれに… ください」という裕作に、響子は約束をしてほしいと頼みます。「お願い…」「一日でいいから」「あたしより長生きして…」。裕作とともに、新たな人生を歩むと決めた響子ですが、その道のりが今度こそ続くことを願っているのです。マンガ史に残る愛の名言です。

恋の悩みに効く名言が満載!

ここまで、告白前に読みたい恋の名セリフを紹介してきました。『俺物語!!』で紹介したのは、胸がキュンとときめく名場面。高校生2人の「好きです」という言葉のかけ合いは、読者の心に大きく響きます。言葉巧みな駆け引きより、ストレートな告白の方が気持ちが伝わることもあります。

一方、『名探偵コナン』で紹介した場面では、暗示的な言葉で駆け引きが交わされています。恋心を難事件に例えるなど、ウィットに富んだセリフ回しが本作の推理マンガとしての魅力を高めています。

『娚の一生』『恋は雨上がりのように』は、年齢差という課題を抱えた男女のラブストーリー。しかしハードルをものともしない真剣な言葉が、読者を感動させています。『めぞん一刻』では、マンガ史に燦然と輝く名セリフを紹介しました。今回紹介した作品には、ほかにも恋の悩みに効く名言が満載です。お気に入りのセリフを探してみてくださいね!

執筆:メモリーバンク / 柿原麻美 *文中一部敬称略

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