飯テロ注意! 読めばお腹がすいてくるラーメン・マンガ特集!!

日本人が大好きなラーメン。いつ食べても美味しいですが、寒い季節には特に温かいラーメンが食べたくなるものです。
中国の麺料理をルーツに、脅威の進化を遂げた日本のラーメン文化。しょうゆや味噌、塩、とんこつだけでなく、様々な味を楽しめるようになりました。二郎系ラーメンや創作系ラーメンなど、有名ラーメン店の影響で生まれた独自の形もあります。
色濃い文化を持つラーメンは、マンガの題材にも多く取り上げられています。読めばお腹がすいてくるラーメン・マンガを特集します。有名店を紹介する実録マンガから、ストーリー重視の作品まであって、意外と奥深いラーメン・マンガ。その魅惑の世界をのぞいてみましょう。
話題の美少女ラーメン・マンガ
転校生の小泉さんは、クールで無口。他人と馴れ合わないミステリアスな少女でした。しかし彼女は、美味しいラーメンを求めてさすらう“ラーメンのプロ”だったのです。
ラーメンが着丼したら、長い髪の毛を結い上げて戦闘準備完了! あんなラーメンや、こんなラーメンまで全て美味しくいただきます。
美味しそうなラーメンと、美少女の掛け合わせが楽しい青春グラフィティ。ラーメン・マンガ話題作の見どころを紹介します。

『ラーメン大好き小泉さん』は、鳴見なるによるマンガ作品。2023(令和5)年時点でコミックス累計発行部数300万部を記録している人気作です。
本作は竹書房の「まんがライフSTORIA」でスタート後、秋田書店に移籍。現在は同社「月刊少年チャンピオン」を中心に発表されています。
2018(平成30)年にテレビアニメ化されたほか、幾度となくスペシャルドラマが放送されており、2020(令和2)年には『ラーメン大好き小泉さん 二代目!』としてキャストを一新したドラマが放送されました。
主人公の小泉さんは、根っからのラーメン・マニア。本作は、ありとあらゆるラーメンが紹介される本格派ラーメン・マンガとして評価が高く、グルメ雑誌「ラーメンWalker」(KADOKAWA)に特別作品が掲載されたこともあります。

『ラーメン大好き小泉さん』©鳴見なる(秋田書店) 1巻P012_013より
女子高生の大澤悠は、人気ラーメン店の前で運命の出会いを果たしました。悠のクラスに先週転校してきたばかりの小泉さんが、客の列に並んでいたのです。
その美しい佇まいに見とれているうちに、成り行きで行列に加わることになった悠。「一人でラーメン食べたりするんだ!?」と聞くと、小泉さんは「つるんで 食べるものじゃないですから」と言います。小泉さんはクールビューティー。女性一人でラーメン店に入ることに、ためらいを感じていた悠は、彼女の気丈さに感心します。
この店のラーメンは超ボリュームのがっつり系。小泉さんはブラウスの袖をたくし上げて、一気に麺をすすり上げます。本作では、美味しそうなラーメンの描写も見どころですが、ラーメンと向き合う小泉さんの男前な表情も人気の秘訣。さらにクールな彼女が、完食後に見せるキュートな微笑みも見逃せません!
手に汗握るラーメン・バトルマンガ
日本料理の五条流相伝者・塩見松造を父に持つ塩見味平は、高校進学を断念してコックの道を志しました。味平は洋食店「キッチン・ブルドッグ」の板場でしごかれた後、強敵との料理バトルを重ねて成長してきたのです。
牛次郎とビッグ錠のコンビが生み出した『包丁人味平』は、料理に少年マンガのバトル要素を持ち込んだ“料理バトルマンガ”。その後のグルメマンガの潮流を作り上げました。
主人公の味平が繰り広げる、手に汗握る熱き戦いの物語。その中から、ラーメンにまつわる一編を紹介します。

『包丁人味平』は、牛次郎とビッグ錠によるマンガ作品。1973(昭和48)年から1977(昭和52)年にかけて、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載されました。
マンガの黎明期、その読者層は子どもが中心でしたが、1970年頃には青年向けマンガ誌が相次いで創刊されました。そこで社会人の読者を対象に、“職業マンガ”のジャンルが誕生。職業の一つとして“料理人”のマンガも描かれるようになりました。
社会人が対象と言っても、その内容には少年マンガの名残りがありました。『包丁人味平』は、料理人を題材にした職業マンガに、少年マンガらしいバトルを持ち込んだ料理バトルマンガ。料理の発想を超えた奇想天外な戦いを繰り広げて、大人気となったのです。

『包丁人味平 ラーメン勝負』©牛次郎・ビッグ錠/リュウプロ 1巻P140_141より
これまで数々の料理バトルを勝ち抜いてきた塩見味平。次なる勝負はラーメンです。トラックの運転手・井上洋吉と親しくなった味平は、彼に連れられてラーメンの本場・札幌にやって来ました。日本中のラーメン店が腕を競う“第1回全日本ラーメン祭り”に立ち寄った味平は、素人が参加できない大会ルールに意義を唱えて、急遽出場が認められることになります。
まずは第一次予選、スープの味を競う勝負が始まります。味平はラーメンを作るのは初めてですが、洋食店の修業時代に叱られながらブイヨンスープのひき方を習ったことを思い出します。洋食もラーメンも、共通点があるのかもしれないと思ったのです。そこで味平はドラムカンを探してきて、蓄熱性が高い寸胴鍋に見立てて鶏ガラスープを作り始めます。
しかし味平の型破りな調理は、プロのラーメン職人たちの反感を買ってしまいます。何者かが味平のドラムカンに塩を投げ入れようとしたため、彼は雪の降る中も不眠不休でスープを守りました。しかし味平は風邪を引いてしまい、スープの味が分からなくなってしまいます。この勝負、どうなってしまうのでしょうか。波乱万丈のバトルの行方は、ぜひマンガでご覧ください!
ラーメン×ビジネスマンガの名作
ラーメン界とフードビジネスを描く、伝説のラーメン・マンガが帰ってきました! 『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』に登場した、芹沢達也の新たな物語が始まります。
芹沢は、ニューウェイブ系ラーメンの絶対的カリスマです。これまでラーメン界の最前線で戦ってきましたが、新時代のラーメン職人の出現を目にして、情熱を失ってしまいます。
スランプに陥った男が、令和のラーメン界とフードビジネスに挑むため再び立ち上がります。ラーメン好きはもちろん、全てのビジネスパーソンに捧げたい、ラーメン×ビジネスマンガの名作を紹介します。

『ラーメン発見伝』は、久部緑郎の原作、河合単の作画によるマンガ作品。1999(平成11)年から2009(平成21)年にかけて「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載され、ラーメン界とフードビジネスの実情を盛り込んだストーリーで人気を博しています。
同誌では、『ラーメン発見伝』の完結後間もなく、久部・河合コンビによる続編『らーめん才遊記』をスタートし、2014(平成26)年まで連載しています。さらにその続編となる『らーめん再遊記』が、2020(令和2)年から連載されています。
『らーめん再遊記』は、これまでの作品に登場した人気キャラクター・芹沢達也を主役にした一作。これまで、繁盛ラーメン店「らあめん清流房」の店主兼フードコーディネーターとして名をはせてきた芹沢ですが、彼に影響を受けて育った若手のラーメン職人が頭角を現わし始めます。

『らーめん再遊記』©久部緑郎・河合単/小学館 1巻P050_051より
「東京ガストロノメン」は、若手のラーメン職人・米倉龍大のプロデュースによるラーメン店。世界最高権威のグルメガイド『ムシュロン』でラーメン界初の二つ星を獲得し、行列待ち3時間の人気店となりました。その看板メニューの名は“普通のラーメン”。その名前には、“普通”の更に上を目指す気持ちが込められていると言います。
今や大都市圏には多種多様なラーメンがあふれており、日本各地のご当地ラーメンも脅威の進化を遂げています。“まずいラーメン”を見つける方が難しい時代になったからこそ、米倉は世界レベルの味を目指そうと言うのです。そんな彼の言葉を、神妙な面持ちで聞く男がいました。かつてニューウェイブ系ラーメンの雄として、一時代を築いた芹沢達也です。
芹沢が経営するグループの旗艦店「麺屋せりざわ」は、月替わりラーメンの不調により売り上げが減少していました。情熱を失った芹沢を奮起させようと、部下の汐見ゆとりがインターネットTVの配信会社に、新旧天才ラーメン職人対決の配信を提案します。芹沢と米倉の二人は、お酒を使ったラーメンで腕を競うことになりました。どちらが勝つのか、勝負の行方はコミックスでご覧ください。
猫が営む癒しのラーメン屋
「ラーメン赤猫」は、一風変わったラーメン屋です。ここでラーメン作りをするのは、可愛い猫たち。客の人間たちは、美味しいラーメンと癒しを求めて来店します。
そんな「ラーメン赤猫」で、人間の社珠子(やしろ たまこ)が働くことになりました。驚くべきことに、珠子にはラーメンとは全く無縁の仕事が用意されていたのです。
癒しと愛情大盛りの「ラーメン赤猫」開店中! 猫マンガとしても、ラーメン・マンガとしても楽しめる、ほのぼのコメディの魅力を紹介します。

『ラーメン赤猫』は、アンギャマンによるマンガ作品です。集英社のWebコミック投稿サイト「ジャンプルーキー!」に投稿された後、同社Webコミック配信サイト「少年ジャンプ+」の人気作品となっています。
2024(令和6)年にテレビアニメ化されて話題となりましたが、集英社主催のイベント「ジャンプフェスタ2025」で、続く第2期の制作決定が発表されています。
本作の舞台は、猫が営む架空のラーメン店。その店内には、「接客 一番」「味 二番」と記された紙が貼られています。ラーメン・マンガの多くが、味の追求をテーマとする中で、本作は癒しと笑いを前面に出した異色作。来店する人間へのサービスが、テーマの一つとなっているのです。

『ラーメン赤猫』©アンギャマン/集英社 1巻P008_009より
社珠子は「ラーメン赤猫」に面接を受けにきました。店長である猫の文蔵は、「猫好き?」と質問しますが、珠子は正直に「…どっちかというと……」「犬のほうが…好きです…ね…」と答えてしまいました。しかし文蔵は、彼女の採用を即決しています。
この店の従業員は、ほとんどが猫です。今回、人間を雇う必要ができましたが、客が“猫好き”ばかりなので、スタッフには“猫好き”ではない人が欲しかったと言うのです。珠子が任されたのは、バックヤードの仕事。それもラーメンとは全く関係のない、猫のブラッシング係でした。
猫たちは、ラーメンに毛が混入するのを防ぐため、特別な訓練を受け、開店前のブラッシングで抜け毛を除いていました。しかし猫同士だとうまくブラッシングができないため、人間を採用することにしたのです。しかしこれだけ気を配っても、理不尽なクレーマーはやって来ます。そんな時に頼りになるのが、店の用心棒を務めるネコ科のアノ猛獣です。くすっと笑える結末は、ぜひマンガで読んでくださいね!
がっつり系ラーメンの記録コミック
この物語は、がっつり系ラーメンと聞けば挑戦せずにはいられない、“ジロリアン”と“ジロリエンヌ”と呼ばれる人々の食べ歩きの記録です。
ラーメン好きが麺をすすり、肉を食いちぎり、スープを流し込む姿を描いただけのマンガが、これほど読者を楽しませてくれるのはなぜなのでしょうか。それはラーメンそのものが、エンターテインメントだからかもしれません。
話題のお店から老舗の名店まで、最強のラーメンがあなたの胃袋を刺激します。二郎系ラーメン、二郎インスパイアと呼ばれるラーメンを中心に、がっつり超ボリュームのお店を取材したこだわりの作品。その魅惑の世界を紹介します。

「これから始まるマンガは――」「男達による 男達のための 男達のラーメン部活動である」という口上で始まる本作。『ぶかつ麺!』というタイトル通り、がっつり系ラーメンの制覇に挑む“体育会系部活動”のような作品なのです。
ヨシダ・ケンジこと吉田健二は、とんこつラーメンが好きだと言います。白濁したスープに細いストレート麺、紅ショウガのアクセント。さらにすりゴマと辛子高菜を乗せたとんこつラーメンを想像して、よだれを垂らす姿がマンガに描かれています。
ボブ・ヨシムラことボブ吉村は、B級グルメ好きの編集者であり、本作の原作者です。ヨシダが“がっつり系ラーメンの初心者”だと知って、「今度 東京のがっつり系ラーメンを食べに行きましょう!!」と誘っています。それから数日後、ヨシダはヨシムラとともにラーメン屋の行列に並ぶことになりました。

『ぶかつ麺! ジロリアンはじめました』©ボブ吉村・吉田健二/ホーム社 1巻P016_017より
ボブ・ヨシムラがヨシダ・ケンジを案内した店は、がっつり系ラーメンの人気店。二人が行列に並んでいると、店員から「大と小どちらですか?」と聞かれました。初心者のヨシダは、ヨシムラのアドバイスに従って“小”を頼んでいます。がっつり系のラーメンはとにかくボリュームがすごいと言うのです。
一時間並んだ末に、二人は入店することができました。そこでヨシダは、他の客が呪文のような言葉で注文しているのを見て驚きます。本作では、二郎系ラーメンなどでお馴染みのトッピングの注文方法を分かりやすく解説。初心者の読者にも楽しめる、がっつり系ラーメンのガイドコミックとなっています。
がっつり系ラーメンの常連・ヨシムラは、「ヤサイニンニク(野菜・にんにく)マシマシ(増量)アブラカラメ(背脂あり・味辛め) !!」と注文。もやしなどの野菜がうず高く盛られたラーメンがやって来ましたが、果たして彼は完食できるのでしょうか。一編読み終えるごとに、達成感を味わえる本作。有名店に取材したエピソードもあるので、気になるお店があったらぜひ足を運んでみてください。
疑似体験が楽しいラーメン・マンガ
『ラーメン大好き小泉さん』『ぶかつ麺! ジロリアンはじめました』は、美味しそうなラーメンの描写が魅力の作品。見ているだけで、ラーメンを食べたいという気持ちにさせてくれます。その気持ちを盛り上げてくれるのが、登場人物の見事な食いっぷりです。私たち読者は、マンガのキャラクターを通して、ラーメンを食べる疑似体験を楽しむことができます。
『包丁人味平 ラーメン勝負』『らーめん再遊記』は、料理人という職業にスポットライトを当てた作品です。ラーメンの味を競い合うバトルを投入することで、ドラマを盛り上げるのに成功しています。
『ラーメン赤猫』は、ラーメン店を営む猫たちが主役。ラーメンと猫が好きな人にはたまらない、癒しのコメディ作品です。一口にラーメン・マンガと言っても、ラーメンの味のバリエーションと同様に間口が広く、奥の深い世界なのです。ぜひ、お気に入りのラーメン・マンガを探してみてくださいね!
執筆:メモリーバンク / 柿原麻美 *文中一部敬称略