『上京生活録イチジョウ』『カイジ』スピンオフ最新作は迷走男子の青春グラフィティ
喉から手が出るほど欲しい…!
成功が、名声が…!
大きな野望と根拠のない自信を搭載した青春スーツに身を包み、岡山から上京してきた青年・一条聖也(と後輩の村上)。
根城は1K・六畳一間。そんな彼らの青い日々は、見るものの胸をしめつけエモーショナルな気分に浸らせます…!
どこかノスタルジックな香りがただよう迷走系青春グラフィティ『上京生活録イチジョウ』の世界をご案内します。
一条聖也とは何者なのか?
『カイジ』スピンオフの3作目となる『上京生活録イチジョウ』。
今作では『賭博破戒録カイジ』でカイジ達の前に立ちはだかった裏カジノの店長・一条聖也のフリーター時代が描かれています。
『上京生活録イチジョウ』 ©萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明・福本伸行/講談社
一条は難攻不落のパチンコ台「沼」を作りだし、多くの挑戦者たちから大金を搾りとってきた若きエースでした。
『上京生活録イチジョウ』 ©萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明・福本伸行/講談社
帝愛コーポレーションの幹部を目指し爪を研ぎ続けていた一条の知られざる過去。ナルシストで自信家な性格とハレーションするかのような不遇な境遇が読者の心を鷲掴みにするのは必然!そんな彼の知られざる青春時代がついにスポットライトを浴びることになったのです!
ファミレスバイトに明け暮れ、節約生活にいそしみ、トレンドを適度に楽しむ。そんな若者の何気ない日常も、慎重派でクレバーな一条の手によってスペクタクル巨編と化していきます。
眩しすぎてみていられない?青春の泥くさハーモニー
己の野望と現在地を冷静に見つめ、打開策を考えることが得意な一条。
すでに完成されつつあったそのリスクヘッジ精神から、日常のささいな場面でも熟考しすぎゆえのエラーにつまずいてしまいます。
『上京生活録イチジョウ』 ©萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明・福本伸行/講談社
髪を染めるだけで大騒ぎです。
本人はいたって真面目。幼さゆえの大袈裟さがくだらなすぎて、一条ファンならずとも目を細めてしまうことでしょう。
それと同時に、ありし日の自分を見ているようで、なんだろう…胸の奥がヒリヒリする…。
最近では無欲な若者たちを「さとり世代」などと呼びますが、一条の過ごす日々は真反対。
上昇志向が強く現状への満足を許さないため、良くも悪くも自分に厳しいのが一条スタイルです。
貧するほどに湧き出る野心が、あらゆる困窮を跳ねのけます。
もちろん、TOEICのテスト結果には必要以上の急角度から圧倒的反省です。
『上京生活録イチジョウ』 ©萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明・福本伸行/講談社
自らを卑下し、渇きに敏感、這いつくばりながらもジリジリと高みを目指す…そんな一条は今どき珍しい迷走系男子なのかもしれません。
作中には『賭博破戒録カイジ』を知っていると楽しさ倍プッシュ…なファンサービスも多く散りばめられ、原作読者なら2倍3倍楽しめる贅沢な仕様となっています。
『上京生活録イチジョウ』 ©萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明・福本伸行/講談社
風を感じ、海にはしゃぎ、時に男女関係にも頭を悩ませる。
もはや遠い過去になってしまったもだもだした日々を、私たちは「一条」を通して追体験しているのかも。
迷走する若者のすべてをぜひご賞味ください。