異色の銭湯SFジュブナイル!? JKが熱湯沸〜くで未来を救う『とりま、風呂いかね?』
銭湯、それは日本の大衆文化のひとつだ。風呂で汗を流し、人々が交流し、繋がりを強める。風呂は日本人の心、培われた伝統は、守り継承すべき文化ともいえる。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
しかし、あらゆる伝統文化と同様に、銭湯も継承者の不足が問題視されている。
もし、銭湯文化の衰退が、我々のあり方や生活さえも変えてしまうとしたら…!
『とりま、風呂いかね?』(とりま、ふろいかね)は未来を救うため、女子高生が銭湯文化を守る、異色の銭湯SFジュブナイルだ。
女子高生が銭湯と未来を救う!?
登場するのは、伝統ある銭湯の一人娘と未来からきた転校生。そんな女子高生たちが銭湯と未来を救う物語が『とりま、風呂いかね?』だ。
銭湯やサウナの気持ち良さ、風呂の魅力が描かれている。また、未来の世界が絡んでくるSF展開から、物語が予想外の方向に転がっていくから面白い。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
著者は『水族カンパニー!』『トロイメライは嘘をつく』のイシイ渡先生。サウナと銭湯が命の源泉だ、という著者の「サ愛(サウナ愛)」と風呂愛が詰め込まれた作品が『とりま、風呂いかね?』だ。
風呂愛のある女子高生コメディに、タイムスリップというパンチがアクセントになっている。
今ドキ女子高生は銭湯の一人娘
主人公の明馬姫子(あすまひめこ)は17歳の女子高生。実家は創業86年の銭湯「明馬湯」(あすまゆ)であり、後継を期待される娘だ。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
しかし当人は銭湯を継ぐ気は全くなかった。花盛りの女子高生の姫子にとって、家業を継ぐより、銭湯なんてダサい、恥ずかしいという気持ちが勝っていた。
そんなとき、風呂好きな転校生の由布院朱美(ゆふいんあけみ)が転校してくる。風呂好きな彼女が明馬湯にやって来たことで、姫子と銭湯との関わりは増えていくことに。
そして転校生の秘密を知ったとき、姫子の銭湯への想いに大きな変化が現れることになる。
知って得する「ととのう」情報!?
『とりま、風呂いかね?』には、風呂に関する知って得する情報や、マネしたくなる知識が詰め込まれている。
サウナでの「ととのう」シーンは、とにかく気持ち良さそうなキャラクターたちが印象的だ。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
他にも、マネできるくらい詳細に書かれているのが、入浴剤の代わりに、よもぎ湯の原液を作るシーン。これは実際に著者であるイシイ渡先生も自宅で試し、よもぎ湯を楽しんだそうだ。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
気持ち良さそうに楽しむ登場人物たちをみていると、ついマネしたくなる。風呂の楽しさと気持ちよさを知っているからこそ、作品へと詰め込まれた風呂への愛とお得情報も、本作の魅力のひとつだ。
人と人の熱湯沸〜く(ネットワーク)で未来を救う‼︎
今ドキの女子高校生、ギャルらしい雰囲気のある姫子。しかし、情に厚く下町育ちの女の子らしい一面が見えて、魅力的な主人公だ。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
一方で、クールそうな見た目の由布院朱美。風呂への愛が大きい朱美は、時折異質なほど、ある意味で変態的な反応やリアクションを見せる。
『とりま、風呂いかね?』 ©イシイ渡/講談社
彼女たちの掛け合いがテンポ良く進み、読み進めたくなってくるのだ。
そんな彼女たちの物語は、未来の人類にも関わる大きな出来事へと転がっていく。風呂への愛とちょっとマネしたくなる知識、そしてSF的展開が読ませる作品だ。
女子高生は銭湯と未来を守れるのか!? 異色の銭湯SFジュブナイル『とりま、風呂いかね?』をぜひお楽しみください。