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『転がる姉弟』どう転がるかわからないけど楽しい二人の日常を描く

第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門 新人賞、「このマンガがすごい!2022」オトコ編16位にランクインする等、話題を呼んでいる『転がる姉弟』。

本作に登場する姉弟は一体どんな二人なのでしょうか?

転がる姉弟 著:森つぶみ

あらすじ

物語は女子高生の主人公・宇佐美みなとが亡き母親の仏壇に手を合わせ、父が再婚を決めたことを報告する所から物語は始まります。

再婚相手であるミツコと、その息子の小学生・光志郎との顔合わせに期待を寄せていました。

おっとりしたミツコに似ているのかと想像していたら、実際に現れたのはユニークでわんぱくな男の子!

やんちゃで生意気ざかりな彼と上手くやっていけるのか?そんな不安をみなとは胸に抱きながら新しい家族との日常が始まるのでした。

バランスの取れた二人の関係

第1話冒頭でみなとが手を合わせていた母の遺影が、爆笑している生前の母の姿である所からも、ユニークで明るい家庭だったことが見て取れます。

また、ミツコと光志郎が引っ越してくる時に「ようこそ」と「おかえり」のどちらを言えばいいか悩む父を宥めるしっかり者のみなとと、独特の感性を持ち合わせた言動で周囲を振り回す光志朗は相性抜群のようです。

光志郎が思い切り広げた物語の風呂敷を、みなとがちょっぴり不満をこぼしながらも畳んでくれる、そんな繰り返しを見る楽しさがこの作品の魅力です。

光志郎達の姿から感じられる懐かしさ

光志郎は「男子小学生」全開で、自分の宝物ランキングを発表したり

学校で流行っているスライムを欲しがったりします。

そして光志郎と同じクラスメイトの男子が指パッチン出来る大人に対して尊敬度が上がるエピソードもあり、小学生あるあるとしてとても解像度の高い内容が繰り広げられています。

時には家出をしようとするクラスメイト・未来と光志郎が行動を共にするエピソードでは、どこか洋画の名作「スタンドバイミー」っぽいちょっぴり大人への反抗心や冒険心が垣間見えたりもして、読んでいると自分も小学生の頃はこんな風だったなぁ〜と彼らの言動に懐かしさを呼び起こされます。

見守りたくなるみなとの恋

光志郎の元気な姿が見ものですが、みなとの高校生らしく青春する様子も甘酸っぱさを覚えて心地好いです。

幼稚園時代の幼馴染・ショウタに高校で再会したみなと。

勇気を出して声を掛けたことをきっかけに交流が始まり、

さらに交際へと発展!

初デートの日は部活の悩みで頭がいっぱいだったショウタ。

けれど恋をモチベーションにし、部活を頑張る決意を新たにした姿と、そのショウタの気持ちを知り喜ぶみなとの姿にエールを送らずにはいられません!

一筋縄じゃいかない日常もあるけれど

いつも元気な光志郎ですが、時々ちょっとしんみりするエピソードもあります。

未来が母親の恋人家族に会いたくない理由を聞いた時や

「ロボ」というあだ名の同級生の家へ遊びに行った時に家庭内がギクシャクしている様子を目の当たりにしていく内に、身近な人に様々な事情がある事を知ります。

けれどしんみりして終わりではなく、光志郎の視野が広がり、自分なりにこれからも前向きに周囲の人々と関わっていこうとする姿勢に見ていて元気づけられるのです。

装丁にも注目!

物語の良さは勿論ですが、特に私が作品全体のこだわりを感じたのは、装丁デザインを担当したデザイン会社名が「円と球」という所です!

ここまで徹底されていると、思わず唸ってしまいますね。タイトルロゴや装丁デザインもまじまじと見つめると、素朴でシンプルな設計が作中に描かれている「何気ない日常」を表現しているかの様に思えます。

日常の疲れをほぐしてくれる作品

『転がる姉弟』で描かれる何気ない日々の情景やくすりと笑える登場人物の様子に、日々の疲れで凝り固まってしまった心がほぐれていくような読後感を味わえます。

「明日は一体どうなるんだろう…でもまぁどうにかなるよね」と声を掛けてくれる様な作品なので、学校や仕事終わりの一息つきたい時に是非読んで癒されて下さい。

執筆: ネゴト /

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