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『女子高生に殺されたい』特殊な欲望を抱いた男性教師の殺害計画報告書

『女子高生に殺されたい』という衝撃的なタイトルの本作は古屋兎丸先生によるサイコサスペンスである。

あらすじ

主人公・東山春人は都立高校の教師をしている。端整な顔立ちで女子高生達からも人気のある彼は誰にも言えない秘密を抱えていた。

高2の頃から「オートアサシノフィリア」と呼ばれる自分が殺されることに性的興奮を覚える性的嗜好(自殺願望、自傷行為とは異なる分類に定義されている)があることを自覚し、自身の教え子である女子高生・佐々木真帆に殺されたいという願望を持っていたのだ。

願望だけに留まらず、実際に殺害され尚且つ彼女が逮捕されない方法を模索し緻密な計画を立てる本気ぶりである。

その欲望はどのようにして果されるのだろうか?

一筋縄ではいかない人間模様

元々が極めて困難な計画であることに加え、更に東山の前には様々な人物が立ちはだかる。

ターゲットの真帆と常に行動を共にする親友・小杉あおい

真帆に片想い中の同級生・川原雪生

更に彼らが在籍する学校に東山の学生時代の元カノ・深川五月がスクールカウンセラーとして赴任して来る。

彼女達もまた胸中に抱える様々な事情があり、その状況を前に東山がどう動くかにも注目だ。

美しくて鬱くしい描写に魅了される

古屋先生が手掛けるマンガは、どの作品にも気品と美しさがある。

代表作『ライチ☆光クラブ』では性描写や殺害シーン等のグロテスクな表現が多様な作品でも、緻密で高い画力により読み手の嫌悪感や恐怖心を覆している。

本作もまたその技巧によって「男性教師の女子高生への性的欲求」や「殺害」という一見眉をひそめそうになる要素も不快感をあまり抱かせない。それどころか東山の鬱屈した深淵を見つめている内に魅了されそうになる耽美な危うささえある。

読み手である我々の奥底にも、誰にも言えない欲望があるのではないかと問われている様な気分になるのだ。

『帝一の國』や『アマネ♰ギムナジウム』等の作品で最後まで読めない展開を繰り広げ尚且つ綺麗に回収する手腕を証明しており、今回もサスペンスとしてのストーリー構成力を遺憾なく発揮されているのでタイトルで躊躇した人にもお勧めしたい。

原作から放たれる魅力を味わうことなく過ごすのはあまりにも勿体ない。

また、2022年4月に公開された実写映画版も、ぜひ原作と比較して違いを味わって貰いたい。

執筆: ネゴト /

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