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『離婚してもいいですか? 翔子の場合』いつも笑顔で優しい妻の裏の顔

外からは幸せそうに見えたのに離婚した夫婦は、家の中ではお互いをどう思っていたのか。『離婚してもいいですか? 翔子の場合』は、「夫が嫌い」な妻目線でストーリーがはじまる。

離婚してもいいですか? 翔子の場合 著者:野原広子

妻側からの目線

夫と二人の子どもがいる専業主婦の翔子。彼女はいつも夕飯に夫の好きなものを作る。例えば、今日の夕飯は夫の好きなハンバーグ。でも夫は「80点」と点数をつける。「チーズがのっていたら100点」「でもそれは今日の気分だから次はわかんない」ということだ。そんな夫が嫌いでしかたなかった。

「夫の好きなものを作らなければならない」という固定観念から抜け出せず、家では自分を家政婦のように扱う夫の言うことを聞いているばかり。

二人の子の世話と家事をこなすのにいっぱいいっぱいな翔子は、上の子を出産する時、仕事を自らの希望で辞めていた。それ以来、夫はそれまでやっていた家事を何もしてくれなくなったのだ。

「仕事やめて子育てだけしたかったんだろ?」と夫からは言われ、「翔子さんなんてラクしてる」と夫の姉からも言われる翔子は、自分は楽な方なんだと自覚させられる一方でモヤモヤをつのらせていた…。

…ここまで読むと、翔子は夫からモラハラされている! 酷い! とムカムカしてくる。そして3章では夫の目線に移る。夫目線では翔子はどのように映っているのだろうか。

夫側からの目線

夫は妻・翔子をどう思っているのか。笑顔がかわいい女性だと結婚前は思っていた。だが、専業主婦になり家事や育児だけをしている翔子がニコニコしているのを見て、だんだんイライラするようになってしまった。

「いつもニコニコしてるだけで、何も言い返さないつまらない女」それが夫から見た翔子。自分の希望で専業主婦になった翔子は家庭で発言権をなくし、もともとの控え目な性格もあいまって夫の顔色を見ながら生活するようになってしまう。

性格を生み出すのは育った家庭

翔子は体調不良で病院に行くと、ストレスじゃないかと診断され、心療内科でこんなことを言われる。

彼女がいつもニコニコして言いたいことも言えないのは、育った家族に原因があった。いつもニコニコしている自分は、教え込まれたものだったと気づいた翔子。彼女はどうするのか…!?

ほっこりしたシンプルな絵柄だからこそ、夫の言動のひどさと、それに傷つき心を殺していく妻の姿が読み手の心にグサグサつき刺さる。

子ども側の視点

そして必見は最後の章。子ども目線だとこの夫婦はどう映っていたのか。ため息しか出ない、なんとも言えないラストが待っている。

執筆:ネゴト /大槻由実子

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