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『パーフェクトプロポーズ』日々の小さな幸せを一緒に感じる同居ラブ

今日もがんばれるのは帰る場所があるから。そんなことに気づかせてくれるようなボーイズラブ作品『パーフェクトプロポーズ』をご紹介します。

パーフェクトプロポーズ 著者:鶴亀まよ

本作の主人公は仕事に疲れた会社員と一人ぼっちの年下クール男子。このふたりが久しぶりの再会を機に、互いが心許せる居場所であることに気づいていく物語です。

前作『三上と里はまだやましくない』同様、鶴亀まよ先生によって丁寧に描かれる人物描写に注目してみてください。

あらすじ

入社5年目の渡浩国(わたりひろくに)は休日返上で働く日々に限界を迎えています。あまりの疲労に道端で倒れているところに現れたのは昔近所に住んでいた深谷甲斐(ふかやかい)。10年以上会っていなかった記憶の中の男の子が突然大人の顔をして現れたことに驚きます。

急に住むところを失った甲斐が浩国を頼って会いに来たんですね。そして、この日からふたりの同居生活が始まります。

「おかえり」をくれるひと

初日からゲイだとカミングアウトしたり、昔冗談でした結婚の約束がまだ有効だとか言い出す甲斐との同居に気乗りしない浩国ですが、美味しい手料理に胃袋を掴まれてからはまんざらでもありません。身寄りがない上に家族同然だった住み込みの働き先を失ったというのも放ってはおけない理由です。

それまでの浩国は、朝から晩までパワハラと激務でボロボロ、帰れば明日が怖くて眠れない日々を送っていました。しかし、甲斐のおかげで気づけば三食きっちり夜はぐっすりに。「おかえり」と「ただいま」が板についた頃、寝るためだけの家が安心できるホームへと変わります。

環境を疑うのって弱っているときほど難しいもの。それを教えてくれた人への特別な思いに気づくのも時間の問題です。

風鈴の音色に彩られるふたり

穏やかな同居生活は身寄りのない甲斐にとっても大切な場所です。一人ぼっちだった幼い頃、ある役割をくれた恩人が自分の手料理で元気になっていくことに喜びを感じます。それが彼の存在理由になっていくんですね。

同居開始から2ヶ月、甲斐がアパートの窓辺に風鈴を添えるシーンが印象的です。無機質だった部屋に風が吹くたび彩りが生まれます。その音色が聴こえるたびにふたりの思いが近づいていくようです。互いの欠けた部分を埋め合うことでバランスがとれていくふたりをとても愛おしく感じるのと同時に、その姿からは恋人のさらに先を感じます。

君がいるから日々が輝く

ブラックな浩国の生活、そして甲斐の身の上など辛いエピソードに胸が苦しくなりますが、それをひっくり返すような劇的なイベントは起こりません。それこそが本作の魅力で、小さな日々の積み重ねがふたりを救っていく様子は現実を生きる私たちにも希望を示してくれるようです。

明日を楽しみに眠ることの幸せを思い出させてくれるようなふたりの物語にぜひ触れてみてください。ラストに控えたパーフェクトなプロポーズもお見逃しなく。

執筆: ネゴト / みっちー

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