『同級生』テーマは「まじめにゆっくり恋をしよう」…繊細な作画で描かれる、瑞々しい青春恋愛物語
BLマンガの金字塔として、刊行から15年近く経つ今も大勢のファンに愛されている中村明日美子先生の『同級生』。
「まじめにゆっくり恋をしよう。」というテーマの通り、二人の男子高校生による甘酸っぱい恋模様が読者の心を捕えて話さない本作。主人公の二人を始め、彼らを取り巻く大勢のキャラクターも魅力的な作品となっています。
クラスメイトだった二人は、ゆっくり少しずつ距離を縮めていく…『同級生』あらすじ
中村明日美子『同級生』より
本作の主人公は、草壁光と佐条利人という二人の高校生。
あまり接点のないクラスメイトだった彼らですが、ひょんなことから合唱コンクールの個人レッスンをきっかけに急接近することに。
音楽経験の豊富な草壁が佐条を指導する形で始まった二人の練習。ですがいつしか草壁は繊細な美しさを纏う佐条に、初めて誰かを好きになる気持ちを抱いていました。
合唱コンクール本番を迎えちょっとしたひと悶着はありながらも、二人は無事めでたく両想いに。恋人として付き合い始めた二人が進級し、高校を卒業するまでの日々を描いたときめき満載の青春ラブストーリーです。
美しく繊細な絵柄で紡がれる、スタンダードかつ王道な展開が最大の魅力!
中村明日美子『卒業生-冬-』より
長年大勢を魅了し続ける本作の魅力のひとつが、柔らかく繊細な中村明日美子先生ならではの独特のタッチ。
元々非常に独創的な絵柄で、幅広い世代のファンから根強い人気を持つ中村先生。今作ではその唯一無二の描線によって、高校生という青春時代独特の爽やかな空気感やムードが非常に鮮明に描かれています。
また併せてその丁寧な絵柄で展開される、王道のピュアでときめき満載の青春譚がたまらない! という人もきっと多いはず。
中村先生ご自身も、「まじめにゆっくり恋をしよう」というキャッチフレーズを本作のテーマとしていたそう。そのため本作は、物語としては普遍的なラブストーリーを描いていることも、時を超えて大勢に愛される理由のひとつでもあるように感じます。
中村明日美子『卒業生-春-』より
炭酸のような弾ける爽やかさと歯がゆいじれったさ、甘酸っぱい恋の駆け引きなど。
思わずきゅんとするようなときめきが最近足りない、という方や、現実のドロドロした恋愛ではなくピュアでむずむずするような恋愛が見たい! という方など!
そんな方にはぜひ読んで頂いて、その世界観に触れて頂きたい作品ともなっています。
物語を彩る個性的なキャラクターたち、その後を描く関連作品も要チェック!
中村明日美子『O.B.1』より
またこの『同級生』というマンガは、一般的には『同級生』シリーズという名称でも愛されている作品です。
というのもこの『同級生』の物語自体は、その後『卒業生』へと続く全3巻仕様。ですが主人公二人のその後や周囲の人物の後日譚を描く関連作品も、かなり多彩に発行されているのです。
彼ら二人の恋愛模様を近くで見ていたハラセンこと原先生の恋を描く『空と原』、草壁と佐条の卒業後の物語や、彼らを取り巻く周囲の人物のエピソードをオムニバスで描いた全2冊の『O.B.』。
そして2020年にはついに将来を誓い合った草壁と佐条の物語を描いた『blanc』も刊行されており、まだまだその世界観は留まるところを見せません。
中村明日美子『空と原』より
主人公二人の恋模様だけでなく、彼らの周囲を彩る人々にも。それぞれの物語があって、それぞれの恋がある。その詳細を知りたいと思わせるのが、何よりも今作の登場人物たちが魅力的な証拠とも言えるでしょう。
ひとつのシリーズで、様々な人物の恋模様を楽しめる。それもまたこの『同級生』シリーズが大勢に愛され続けている理由のひとつですね。