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65歳から始める映画制作『海が走るエンドロール』ざわめき出した心の波は止められない!

たらちねジョン先生の『海が走るエンドロール』は、65歳の茅野(ちの)うみ子さんが美大の映像科に通う海(カイ)に出会い、心の波に呑まれるように映画監督として生き始める物語です。

本作は「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第1位、「全国書店員が選んだおすすめコミック」2022では第4位、そして「ebookjapanマンガ大賞2022」で第3位を受賞した注目作です!

海が走るエンドロール 著者:たらちねジョン

うみ子の本当の気持ちは?

ある日、夫を亡くして49日を過ぎたうみ子さんは、映画館で大学生のカイに出会います。うみ子さんは映画館に来るといつも、客席を見てしまっていたのですが、カイはその気持ちが分かると言います。

「映画作りたい側なんじゃないの?」

映画よりも客席が気になるのは、うみ子が映画を作りたい側の人間だからじゃないかとカイに問われ、うみ子さんの心は波にさらわれそうなくらい揺さぶられるのでした。

心象描写の見事さが光る

カイの言葉がうみ子さんの心を揺らした時、うみ子さんの目には波音が響き始め、室内には激しい波があふれ出します。このように、『海が走るエンドロール』では波や船など、海にまつわる言葉やビジュアルを使った巧みな表現に目が奪われます。

揺れ動く気持ちに反して、自分はもう若くないからと言い訳して、人生に波風を立てないようにするうみ子さんの理性。葛藤の中にいたうみ子さんの新しい人生の船出を後押ししたのは、やはりカイでした。

「…映画を撮りたいです」

ついに自分の気持ちを認めた後、圧倒的な行動力でうみ子さんは現実を変えていきます。65年間気づかなかっただけで、うみ子さんの情熱はもともと、彼女の中に溜まりつづけていたのかもしれません。

人の心が動く瞬間に敏感なうみ子さん

映画館でお客さんの表情を気にしてしまううみ子さんは、人の感情の動きに敏感なように見えます。同時に、自分の中のモヤモヤした気持ちも見過ごせません。

うみ子さんと比べると表情の変化が少ないカイですが、うみ子さんはカイのわずかな変化から、彼の気持ちの機微を感じ取っています。

喜怒哀楽という感情を表す言葉がありますが、人の感情はシンプルな4種類に分けられるものではなく、もっと複雑で、深い想いがたくさん宿っていることが、本作を読むと気づかされます。親友が本心をごまかす時の手の動き、周りが見えないほど走り出した人の目。

自分の中にも、こんなにも豊かな感情の海が眠っているのだと思うと、なんだかとても嬉しくなります。

創作という大海にダイブ!

映画を作るなんて、素人にはとても難しいことのような気がします。ましてや知識も経験もない人が、60歳を過ぎてから始めたところで、老後の素敵な趣味と思われるくらいのモノしかできないかもしれません。

それでも「自分の作品が作りたい」と気づいてしまったうみ子さんは、もう自分の航海を始めずにはいられません。どうなるかは分かりませんが、それでも自分をゾクゾクさせてくれる挑戦が、目の前にやってきてしまったのですから。

作りたい気持ちが波のように押し寄せる一冊

65歳のうみ子さんに対して、カイはその半分も生きていない大学生です。でも二人の心は、映画制作を通じて結びつき、お互いに影響を与え合っていきます。

人と人が関係を築くのに、立場や年齢なんて関係ありません。自分自身の人生の幅を広げてくれるのは、うみ子さんとカイのように、想いを理解し合う仲間の存在なのかもしれませんね!

あなたもぜひ一緒に、『海が走るエンドロール』の世界に飛び込んでみませんか?

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