ebook japan

ebjニュース&トピックス

『うみそらかぜに花』何気ない日常の美しさこそが人生だ

誰しもが経験してきた中学時代。濃い時間を過ごしてきた筈なのに、年齢を重ねていくにつれて段々と過去の出来事として朧げになってしまう人が大半でしょう。そんな懐かしい記憶の扉を優しく開いてくれる作品が、大石まさる先生作『うみそらかぜに花』です。

うみそらかぜに花(1)
うみそらかぜに花 大石まさる

学校中の全員が知り合いのような静かな田舎の街に住む中学生のカナメくんにはクラスメートに内緒にしていることがありました。それは最近転校してきたアミちゃんという、天真爛漫ですぐにクラスの人気者になった女の子とのとある秘密です。

実はカナメくんのお母さんとアミちゃんのお父さんは再婚同士。そう、2人は血の繋がらない兄妹だったのです。しかも再婚した直後に多感な時期の中学生2人を置いて1ヶ月半も新婚旅行に出かけてしまったのです。突然残された2人は一つ屋根の下で同居生活を送ることになるのでした。

ここで2人の仲が急接近して恋愛模様に発展するのでは…なんて想像してしまいますが、世話焼きなカナメくんが炊事洗濯掃除にアミちゃんの身の回りの面倒まで見てしまう、というご両親の想像の斜め上をいく展開に。そんな2人が醸し出す独特の空気感もさることながら、今後の関係性がここからどう変化していくのかも気になるところです。

読者を幸せに包んでくれる世界

微笑ましくありつつも、流石にその距離感はどうなんだ? とあまりの2人の仲の良さにツッコミを入れたくなるシーンもしばしば登場しますが、作中全体から柔らかく温かい空気感が溢れていて、読んでいるこちら側まで幸せな気持ちに包んでくれます。

文化祭の準備に励んだり、友達と海ではしゃいだり、カナメくんがアミちゃんをとっておきの絶景スポットに案内したりといった日常が丁寧に切り取られた本作。かけがえの無い思い出の1つ1つが読者をノスタルジックな感情に浸らせてくれる、そんなきっかけの種になるシーンが各所に散りばめられているのです。

新しさと懐かしさが同居する不思議な世界

永遠だと思っていた夏休みも、にわかには信じがたいことですがいつか終わってしまいます。そんな喪失感すら愛おしいのだと気づかせてくれたカナメくんとアミちゃん。読後は、2人と友達になったような感覚を抱くことでしょう。

本作からは、この作品はこういう作品だ! とカテゴライズすることが難しい、今まで味わったことがない感覚を持って読める新しさがありつつも、自分の過去体験ともリンクする懐かしさをも感じられるのです。

何気ない日々を面白く感じられることが嬉しい、そんな夏の思い出がフルパッケージで詰まった宝箱のような本作をぜひ手に取ってみてくださいね!

執筆:ネゴト / もり氏

関連記事

インタビュー「漫画家のまんなか。」やまもり三香
漫画家のまんなか。vol.1 鳥飼茜
完結情報
漫画家のまんなか。vol.2 押見修造
インタビュー「編集者のまんなか。」林士平

TOP