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よく知る世界のよく知らない裏側『へんなものみっけ!』で好きへの気持ちを思い出す

現在、絶滅危惧種に特定されている動物は、日本で約3,716種類ほど(環境省レッドリスト2020より)。世界規模で見ると、動物園でお馴染みのオランウータンやトラまでもが絶滅危惧種に指定されているのはご存知だろうか?

今回紹介する漫画『へんなものみっけ!』は、そんな希少な動物たちをはじめ、あらゆる生き物と向き合う博物館が舞台。生き物の保全に奮闘する主人公たちの姿を通して、忘れかけていた“好き”を思い出させてくれる作品だ。

へんなものみっけ! 1巻
へんなものみっけ! 早良朋

知られざる博物館のオシゴト

市役所から博物館へと出向となった薄井透。勤務先へ向かう道中にカモシカを背に抱えた女性と出会い、目的地まで送り届けることになる。

到着したのは、透の出向先「かなでの森博物館」。送り届けた女性は、博物館に勤める鳥類研究者の清棲あかりだったのだ。

博物館で働くのは、あかりをはじめ“好き”を極めた変人ばかり。透はそんな彼らを通して、博物館の知られざる“真の姿”や重要な役割を知っていく。

100年後のために今やるべきこと

彼らの働く「かなでの森博物館」は自然を科学する博物館であり、哺乳類、鳥、魚、昆虫、植物など多岐に渡り展示している。しかし、その裏側はさまざまな動物たちの標本や死体で溢れ、さらには動物の解体までやってのけるという過酷な仕事だった。

研究のためというのはもちろん、毛皮や標本、剥製など、彼らを“生きた証”として残せば、100年、200年後の未来にも語り継がれる。本作では、動物たちを未来へ残す研究技術の過程から、生き物に対する職員たちの想いまで解像度高く丁寧に描かれている。

博物館はもともと、「驚異の部屋(ヴンダーカンマー)」と呼ばれるヨーロッパで作られていた珍品を集めた部屋が原型だったと聞く。彼らの仕事は“好き”を集め未来へと繋ぐことであり、“好き”が集まる博物館は、やがて100年後の未来へ届くギフトボックスとなるのだ。

遠い昔に忘れた“好き”を思い出す

“好き”を仕事にできる人たちは稀で、かなり恵まれているように思う。しかし、好きなことを仕事にしたくても、自分の“好き”や語れるものを理解している人は実は少ないのではないだろうか。本作では“好き”を存分に語る職員たちと対比するように、語れるものがないと劣等感を感じる透の存在が描かれている。

彼は幼い頃は人並みに生き物が好きだったものの、次々と迫り来る人生のやるべきことに流され語れるものがなくなってしまった。そんな彼が“好き”を突き詰める職員らと行動をともにして、いくつもの感動を経験しながら固まった心を刺激していくのが本作の見どころのひとつでもある。

“好き”や語れるものは何度も感動を繰り返した先にある。透の存在を通して、どこかに置いてけぼりになった“好き”への気持ちを思い出す一冊だ。

博物館の裏側をアクティブに描いた『へんなものみっけ!』。彼らの飽くなき好奇心、そしてさまざまな背景を持った動物たちにあなたはきっと心が動かされるだろう。

執筆:ネゴト / 西本沙織

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