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『今日のさんぽんた』さんぽ・イズ・ビューティフル!愛犬ポン太とのほっこり散歩ライフ

忙しない日常。高騰する原材料費。終わらない宿題。出席日数が危うい必修科目。人生の様々な局面で何かしらの困難を迎え、慌ただしい日々を送っている人も多いことでしょう。そんな方にこそ是非ともお届けしたい作品が田岡りき先生作の『今日のさんぽんた』です。

今日のさんぽんた 1巻
今日のさんぽんた 著者:田岡りき

飼い主りえ子と愛犬ポン太の散歩漫才

とあるごく普通の家庭。柴犬のポン太と彼の散歩付き添い要員りえ子。物語はりえ子が大学に進学することになり、実家を出ることをポン太に告げるシーンから始まります。

小学生の頃から何度となく散歩に出かけていたりえ子とポン太。りえ子はさぞかし自分が家を出ることをポン太が残念がるだろうと、真剣な表情で今日の散歩が最後になることを告げます。ところが、内心ポン太は散歩が雑なりえ子より、父親が散歩に連れ出してくれる方がむしろありがたい、とラスト散歩の道中で呟くのでした。これまでのりえ子とポン太の関係性を感じさせるほっこりエピソードです。

ほのぼのハートフルコメディに留まらない魅力

本作の魅力を語る上で外せないのが、りえ子とポン太のズレ漫才とでも言うべき絶妙な掛け合いです。人間と犬である以上言葉を交わすことは出来ないのですが、ポン太にはりえ子の発する言葉の意味はどうやら理解できていて、ポン太に対して上から目線の物言いに対して小気味よいツッコミを心の内で呟くのです。その会話劇の妙たるや、熟年の夫婦漫才を見ているかのよう!

人の業すら滲み出る愛犬との散歩道

散歩「道」と書いて散歩「どう」と読むのではないかと感じる程に散歩には諸行無常の響きがここまで溢れ出るのでしょう。りえ子とポン太とのやりとりから人間という生き物のやっかいさを見せつけられているかのよう。

普段何気なく日頃溜め込んだもやもやした感情をペットにボヤいて気持ちを整理しているのかと思うと、なんだか付き合わせちゃってごめんなさい、という気持ちにも苛まれてしまいます。昔、実家で飼っていたペットのラブラドール・レトリバーのジョン君もポン太と同じように、飼い主に対して心の中でクールにツッコんでいたのかも知れません。

言葉にならない言葉にこそ溢れるもの

そんなりえ子とポン太ですが、なかなかどうして微笑ましいコンビなのです。作中では1エピソードごとにタイトルが「○○歳○月」と表記されており、ポン太の年齢を指しているようです。時系列はバラバラに展開され、ポン太の見た目こそほとんど変わりがないですが、各話で登場するりえ子は、大学生の時もあれば中学生であったり、小学生だったりします。

りえ子の人生の様々な局面で散歩パートナーとして共に歩んで(たまに走って)きたポン太。散歩道の途中でふいに過去の出来事がフラッシュバックすることもあるのです。時にそんなノスタルジックな気持ちも押し寄せる。そんな本作を読めば、実は人間って日々動物達にツッコミを入れられまくりながら生活しているのかも、なんてことも考えてしまうのです。

癒しと、笑いと、ひとつまみの寂寥感も味わえる。そんな『今日のさんぽんた』。人生という壮大な散歩道のお供に手に取ってみることをオススメしますよ!

執筆:ネゴト / もり氏

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