『SNSの怪物』偽のプロフで夜な夜なJCを釣る犯罪教師。彼がネットで出逢ったもう1人の「怪物」
SNSのDMでやり取りしているその相手は、アイコンもプロフィールも全部ニセモノの「怪物」かもしれない。『SNSの怪物』は、SNSで芸能プロデューサーのフリをして、女子中学生を釣る男性教師のストーリーだ。
善良そうな男性教師の趣味は、SNSで女子中学生を「釣る」こと
この男は、ちょっぴりおっちょこちょいで家庭で子どもに好かれる良いパパ、勤務先の中学校でも人望が厚く、同僚からは頼られている中年男性教師だ。
『SNSの怪物』©望月美乃/白泉社
帰宅後、妻が夕食の片付けをしていると食器拭きを手伝う姿はいかにも良い夫という印象で信頼できる。でも、彼が夜、自室にこもって開くSNSのアカウントを見ると…。何かがおかしい。
『SNSの怪物』©望月美乃/白泉社
ネットでの彼のスペックは、芸能界の敏腕プロデューサー。アイドルを夢見るウブなJC(女子中学生)たちを騙す「釣り」をして遊んでいる彼は、DMをくれたこの子を今夜のおもちゃにすることに決める。彼のお目当てはJCたちの下着写真や動画。
彼は目をつけたJCの過去投稿は洗いざらいチェックし、相手が怖がったり不審がるとすかさず住所や在籍する学校名を特定して有無を言わさず、服を脱がせて画像を送らせる。彼の目的はそこで達成。従順で素直な彼女たちにイキイキと興奮するのだった。
この秘密のお楽しみは、ひとつ屋根の下で眠る子どもや妻には決して知られることはなかったのだ。
怪物を超える怪物・ナゾのメガネ女子、現わる
時に軽く脅してまで写真や動画を手に入れる彼は、もはや犯罪者。昼間、学校で接しているのと同い年くらいの女の子たちが恥ずかしがる姿にこの上ない快感を得る彼の歪みっぷりが怪物なのだ。
でも、SNSには彼よりももっととんでもない怪物が潜んでいた。DMを送ってきたこのメガネ女子だ。
『SNSの怪物』©望月美乃/白泉社
「この子も攻略したらもっと気持ちよくなれるかもしれない…」彼女をどうやって脱がせるか。舌なめずりする彼が遭遇したのは予想を超えまくる展開だった!
彼は日本人男性の弱さを表現したキャラ
この作品、また学校の教科書っぽい清く正しい雰囲気の絵柄なのが、内容とのものすごいギャップを生んでいて、グロテスクなのだ。
SNSで女の子を騙して猥褻な画像を送らせるというゲスい行動をしている最中、彼の表情はまったくゲスく描かれない。純粋にドキドキしたり、キリッと気合いを入れるような顔をしているのが、無自覚な狂気を感じさせる。
『SNSの怪物』©望月美乃/白泉社
そして、彼は「頭のいい子」が好きと言いつつ、生意気で自分からよく喋ってアピールしてくるメガネ女子のことは「もっと頭がいい子かと思ってたよ」「めんどくさいなぁ」と突然しらけてしまう。要は好みじゃないのだ。彼が好きなのは、ピュアピュアで自分の言いなりになる女子だけだった。
実は彼の本名は「イトウ」ではなく、佐伯。学校ではしっかりした頼れる教師なだけでなく、ちょっとドジな愛されキャラの佐伯だが、夜はイトウになる。おそらく彼は別人格を演じているのだろう。昼間は生徒を思い通りに従わせたい、上に立ちたいという欲望を必死に抑圧して過ごしているのではないだろうか。その欲望が夜中のSNSで放たれているのだ、きっと。
そんなイトウの死角は、自分が騙す側だと思い込んでいて、自分と同じような怪物が画面の向こうにいるとは思ってないところ。本名の佐伯のピュアさを捨てきれていない無防備さがある。
でも、やられたらやり返される。因果応報。しかもこのカルマは彼が一番やられたくない形で戻ってくる。
これがデビュー単行本だなんて恐ろしい…
ちなみに作者の望月美乃さんは、本作がデビュー単行本だというのだから、これまた末恐ろしい才能。ストーリーが進むにつれ、教科書風の善良モード、おちゃめ感あるギャグモード、そして、ホラーモード…と瞬時に画風が変化しているのにも気づいてしまった。まさに、彼女自身が"漫画界の怪物"なのである。