『クジマ歌えば家ほろろ』モノクロだった一家に明かりを灯した愛おしき存在
全国書店員が選んだおすすめコミック第9位、次にくるマンガ大賞2022 U-NEXT賞、このマンガがすごい!2023 オトコ編第12位、そして先日発表になったebookjapanマンガ大賞2023では「書店員賞」を受賞した今注目の本作。
日本の美味しいご飯が食べたいとやってきた鳥っぽい謎の生物・クジマと滞在先の鴻田家が織り成すホームコメディです。正体不明のクジマによる予測不可能な珍言動に1話目から笑わされつつ、読了後には心が温かくほっこりさせられます。
1話目から夢中になるクジマの愛らしさ
ロシアから冬の間は日本に渡ってくるというクジマは、偶然出会った中学生・鴻田新に自宅へ招待をされ、春になるまで滞在することとなります。
『クジマ歌えば家ほろろ』第1巻 第1話より ©紺野アキラ/小学館
鴻田家は両親が共働き、兄の英(スグル)は浪人生で引きこもりのため新は気を使って過ごす日々に寂しさも感じていました。そこへ突如、やってきた正体不明の生物クジマ。一家に新鮮な(?)風が吹き込んできます。
本作はコメディなので極力ネタバレはしたくないのですが、クジマといえばコレ!という名シーンがあるのでご紹介させてください。それがこちら。
『クジマ歌えば家ほろろ』第1巻 第1話より ©紺野アキラ/小学館
日本食が食べたいと言ったクジマに対して、「冷凍パスタでいい?」と返した新に放ったひとこと。冒頭10ページめで突如出てきたこのシーンによって、心はクジマに奪われたといっても過言ではないです。
『クジマ歌えば家ほろろ』第1巻 第1話より ©紺野アキラ/小学館
不遠慮な態度が多いクジマですが、都度ちゃんとフォローすることも忘れない優しさに好感度が上がります。
ほろろ、とは何か
私が本作を好きな理由の一つにタイトルにある「ほろろ」という言葉があります。緩さと可愛さを感じさせる響きだと思いませんか。
ただ「ほろろ」とはどんな意味なのでしょうか。
辞書によると" 雉子(きじ)、山鳥などの鳴く声を表す語。雉子などの鳥が、羽をうつ音を表わす語。(精選版「日本国語大辞典」より)"と書かれていました。なるほど、鳥にまつわる言葉だったんですね。
『クジマ歌えば家ほろろ』第1巻 第3話より ©紺野アキラ/小学館
クジマの鳴き声は決して「ほろろ」ではないですが、クジマの言動は鴻田家に張り詰めていた糸を躊躇なくたるませます。近寄りがたくなってしまった兄の英に対しても、クジマは空気を読むなんてことはしません。
『クジマ歌えば家ほろろ』第1巻 第6話より ©紺野アキラ/小学館
静かだった鴻田家に新の笑い声が、時に英の怒鳴り声が響くようになる様子が「家ほろろ」なのではないかと私は感じています。それはまるで、ふわっと明かりが灯るような温かさのようです。
春はまだ先。これからのクジマにも目が離せない!
寂しいときは泣き、嬉しいときはカラダを使って喜びを表現し、思ったことはハッキリ言うクジマ。読み進めていくほどにクジマが天真爛漫で愛おしい存在になること間違いないです。
『クジマ歌えば家ほろろ』第2巻 第12話より ©紺野アキラ/小学館
2023年3月現在、既刊2巻で日本の冬を満喫しているクジマですが、約束の春まで新とどんな日々を過ごすのでしょうか。果たして春にちゃんと帰れるのかも疑問ですが...。
書店ではクジマのぬいぐるみも販売されるほど、クジマ旋風はすぐそこで巻き起こっています! ぜひこのタイミングで乗ってみませんか。