ラブコメと呼ぶにはかなりアカデミア!だがそれがいい『アヤメくんののんびり肉食日誌』
大学のゼミや研究室で仲間と真剣に議論したり深夜まで実験したり……そんな「あの頃」がある人、そんな日々にあこがれる人におすすめしたい『アヤメくんののんびり肉食日誌』。
これを「ラブコメディ」のジャンルに縛るのはちょっと違和感がある。いやたしかにしっかり恋愛しているし笑えるんだけど、なんか気づけばがっつり骨とか恐竜とか化石の話になってるんだよな。だがそれがいい。それがいいんだーっ!
みんなどこかが狂っている、大学研究室の日々
大学に入ると出会うちょっと変わった人。いまいち思考が掴めないんだけどなんだか突き抜けていて、魅力的に見えたことはないだろうか。本作ではそれがアヤメくんである。
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
帰国子女で恐竜オタク、マイペースでグイグイ来るアヤメくんと恋に落ちるのは、田舎から上京した骨だいすきギャルの椿先輩。いい骨格の男を見ると解剖欲が出てくる彼女も、実は相当変な人だ。
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
大学にはそういうどこか狂った人を歓迎してくれる場がある。それが研究室だ。本作ではアヤメくんと椿先輩の恋もようを起点として、研究室にかかわる登場人物たちの学問と恋と生活がのんびり笑えるトーンで描かれていく。
恋ばっかしてるわけじゃないのよ
大学生活の過ごし方は人それぞれだけれども、椿先輩とアヤメくんが所属する「斉藤研究室」には他のいろいろを差し置いて動物の死体を解剖したり化石を掘ったりしに集まるようなメンツが揃っている。
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
登場人物たちが研究に取り組む熱量のままに、骨や恐竜、化石なんかの知識が解説される。自分の生きている世界の知らない部分を知る瞬間の、あのワクワク感がすきな人にはたまらない! 作者・町麻衣先生の描く恐竜や動物からは先生自身の生き物への並々ならぬ愛が感じとれる。
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
毎巻の表紙で愛情たっぷりに描かれた生物たちはみんな美しくてかわいい!
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
誰かと付き合って別れて取り合って恋に悩むだけがキャンパスライフではない。研究に夢中になりながら恋もして進路にも向き合う。こういうラブコメがすきな人、多いのではないだろうか。
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
アヤメくんは、骨や化石にときめいている椿先輩がだーいすき!
恋愛:学究:笑いの黄金比で描かれるキャンパスライフ
ドラマティックな恋の展開と学究的な話の配分は、どちらの要素がすきな人でも飽きずに読み続けられる比率。それを町先生の品と毒のあるユーモアがまとめあげて、本作にしかない読み心地になっている。
『アヤメくんののんびり肉食日誌』
©町麻衣/祥伝社フィールコミックス
研究の道へと進む者の闇を笑顔で突きつけてくるツッキー先輩が最高! 他にもナイスキャラがぞくぞく登場するので、きっと気に入るメンバーが見つかるはず。
お金や時間、さまざまな現実問題が立ちはだかりながらもすきなものに本気で向き合うキャンパスライフ。こんな日々がずっと続いてほしいと願ってしまう『アヤメくんののんびり肉食日誌』に、ぜひ一度心をゆだねてみてください。