ebook japan

ebjニュース&トピックス

オンラインゲームからつながる家族の愛!「ゆうべはお楽しみでしたね」はさまざまな形の家族を描く

ゆうべはお楽しみでしたね 著者:金田一蓮十郎

スマホの普及や昨今のおうち時間も手伝ってオンラインゲームは、さらに普及してきました。今やゲームを通して、全国のプレイヤーとコミュニケーションをとることは一般的です。

そこで今回は、『ドラゴンクエストX』をテーマにした作品『ゆうべはおたのしみでしたね』を紹介します。いわゆるゲームオタクに全振りのマニアックな作風かと思えばそうでもない、誰でも楽しめる作品です。

オンラインゲームに興味がある人もない人もぜひ読んでみてください!

オタクとギャルの勘違いから始まる恋愛模様

第1話は、主人公・さつきたくみ(♂)とヒロイン・おかもとみやこ(♀)がルームシェアを始めるシーンから始まります。しかし、このルームシェアは大きな勘違いから始まりました。

『ドラクエX』プレイヤーの2人は、実際の性別とは異なるキャラクターを使っていました。たくみは「パウダー」という名前のキャラクター(♀)、みやこは「ゴロー」という名前のキャラクター(♂)。いわゆるネカマとネナベです。実際に、オンラインゲームではネカマもネナベも特に珍しくありません!筆者(♂)も、気が向いたときに女性キャラクターを使うこともあります。

そして、たくみとみやこはお互いを同性だと勘違いしたまま、ルームシェアの約束をしてしまったのです。

駅で落ち合って衝撃を受ける2人。みやこはすでに元のアパートを退去しているため戻ることもできず、勘違いのまま異性同士のルームシェアが始まります。しかも、たくみはいわゆる陰キャで、陽キャが苦手。一方のみやこは現役のギャル。まさに水と油です。

最初はみやこに苦手意識をもっていたたくみですが、話してみると意外と普通。そもそもみやこのキャラクターであるゴローとは付き合いが長いため、苦手な性格ではないことは知っていました。

女性に対する耐性がほぼ皆無なたくみは『ドラクエX』のフレンドにアドバイスをもらいつつ、みやこに心惹かれていきます。みやこもまた、たくみを男性として意識するようになるのです。きっかけはみやこの友達のあやの。

3人で会ったときに、あやのは「今までに会ったことのないタイプ」のたくみにアプローチします。その様子を見ることで、みやこは初めてたくみを「失いたくない」と思ったのです。ちなみに、あやののアプローチが激しすぎて、陰キャのたくみは本気で引いていました。

お互いに男女として意識し始めたころ、たくみの転勤などの話もあり、みやこはルームシェア解消を提案します。思いもよらない出来事に引き止めることもできなかったたくみ。しかし、悩み抜いたたくみは告白を決意!

しかも、そのきっかけも『ドラクエ』でした。コンビニで販売されているふくびきの「スライムフライパン」を手に入れたら告白するという。結局、自力であてることはできず、落ち込んでいたもののフレンドから譲ってもらえることになったたくみは、その場で告白。

正直「自分であてなくてもよかったの?」とは思ったが、たくみが幸せならOK! みやこも自身の気持ちを告白し、2人は無事恋人同士にレベルアップしました!

個性豊かなドラクエXプレイヤー

『ゆうべはおたのしみでしたね』に登場するキャラクターは、メインとサブの差がはっきりしています。メインでフォーカスされるキャラクターは、『ドラクエX』だけではなくプライベートの様子も描かれ、プライベートとゲームの関わりがリアルです。

たくみは書店員で、性格はよくいるオタクそのもの。『ドラクエX』に登場する種族・プクリポが大好きで、ガチ勢ではなくエンジョイ勢です。

難易度の高いコンテンツに挑むよりも、ゲーム内で写真を撮ったりコーディネートを楽しんだりしているので『ドラクエX』の楽しさが伝わってきます!ゲーム好きな男性という観点から、オタクなら共感できるはず……!

一方で、ヒロインのみやこはネイルサロンで働くギャル。自宅ではあまりギャルっぽい要素がなく、かわいらしい女性という印象です。ただし、『ドラクエX』はバリバリのガチ勢。

お楽しみコンテンツはそこそこに、難易度の高いコンテンツに積極的に参加しています。たくみとは真逆のプレイスタイルですね。『ドラクエX』で使用している種族はオーガで、かなりゴツい男性キャラクターです。その印象もあって、当初のたくみのように、フレンドからはリアルの性別も男性だと思われています。ちなみに、みやこ本人は性別を偽っているつもりもないので、勝手に周りが勘違いしている状況といえます。

また、たくみとみやこが所属するチームに「ちゃぶだい」という名前のプレイヤーが存在します。リアルの名は山木(♂)で、「パウダー」とも仲良しです。

「パウダー」の相談に乗っていたこともあり、登場機会は比較的多め。しかも、第2の主人公ともいえます。彼もまた、本作で『ドラクエX』を通して恋愛をしているキャラクターだからです。関西の大学生で、同じ学校に通う志野田(♀)に憧れを抱いていました。

志野田はゲームをあまりしてこなかったのですが、とあるきっかけで『ドラクエX』をプレイ。最初のうちは山木にレクチャーを受けていました。ちょっと風変わりな点もありますが『ドラクエX』を通して山木と仲良くなり、彼らも恋人同士にレベルアップしました!

ドラクエXがつなげる家族のかたち

たくみとみやこは、恋人として付き合ったのちに結婚します。

筆者もゲームがきっかけで恋人になるケースはいくつか見たことはありますが、結婚した話はあまり聞いたことがありません。よほど条件が合っていないと成立は難しいと思うので、この2人の結婚エピソードは幸せな気持ちになりました! ただ、結婚してからもお互いを「パウさん」「ゴローさん」とキャラクター名で呼び合っているのはさすがに違和感を感じます。

さらに、なんと出産までしちゃいます。

名前は「ゆう」。『ドラクエ』らしく「勇者」からとったそうです。家族としてどのような姿を見せてくれるのか、今後の展開が楽しみですね!

一方で、山木と志野田も婚約します。この2人のエピソードはゲーマー寄りというか、かなり特殊です。結婚を「エンドコンテンツ」と例えて、プロポーズの言葉は「挑戦したいです」。

さらに結婚情報誌を「攻略本」と言ったり、趣味嗜好を「ステータス」と言ったり、かなりのゲーム脳です。

ちょっとすればイタイ人ですが、それを感じさせない雰囲気もステキだなと思います。ちなみにこの2人、婚約したあとに手をつないでいるぐらい、順番がぐちゃぐちゃです!

オンラインゲームの楽しさがオフラインを充実させる

スマホが普及したことでゲーム自体は身近に感じられるようになりましたが、PCやコンシューマ機を使用して『ドラクエX』のようなMMORPGをプレイすることにハードルを感じる人もいると思います。しかし、本作はそんなゲームの魅力を存分に紹介しています。

PCやコンシューマ機で始めることは難しいイメージですが、実際にはそんなことはありません。もしかしたら、たくみとみやこのようにオンラインゲームによって、オフラインが充実することもあると思います。

本作は、オンラインゲームを少しだけ身近に感じさせてくれます。オンラインゲームのプレイヤーもそうじゃない方も、ぜひ本作を読んでみてください!

執筆: ネゴト / 津田まさき

関連記事

インタビュー「漫画家のまんなか。」やまもり三香
漫画家のまんなか。vol.1 鳥飼茜
完結情報
漫画家のまんなか。vol.2 押見修造
インタビュー「編集者のまんなか。」林士平

TOP