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不死の妙薬を巡る罪人たちの狂闘『地獄楽』強さを支える弱さとは

賀来ゆうじ先生の『地獄楽』は、死罪を言い渡された忍者・画眉丸(がびまる)が、無罪放免の「公儀御免状」を手に入れるために、奇怪な島に渡り、他の死罪人たちと争いながらも、不老不死の仙薬を探す物語です。

地獄楽 著者:賀来ゆうじ

死にたいのに死ねない忍者

石隠れ衆という世に知られた忍者集団の筆頭だった画眉丸は、捕縛され死罪を言い渡されます。画眉丸は、その凄まじい戦闘力で人を殺しまくることから、「がらんの画眉丸」と二つ名がつくほど、血も涙もないがらんどうな人間でした。

そんな画眉丸の前に現れたのは、打ち首執行人の山田浅ェ門・佐切(さぎり)でした。山田浅ェ門は刀剣の試し斬りや処刑執行人を代々務めた浪人・山田家の屋号。佐切は山田家の娘として生まれていながら、人の命を奪う業の深さに思い悩んでいたのです。

「死んだ方がいい極悪人なら迷いなく斬れるだろうか?」

画眉丸は「生きることに執着などない」と口にしているにも関わらず、火刑や牛裂き、あらゆる処刑法を駆使しても、殺すことができません。単に身体が頑丈なだけなのか、それとも何か死ねない理由があるのか。画眉丸の調書を取りながら、佐切はあることに気づきます。

画眉丸が生に執着する理由

死にたければ避けるな、という佐切の一刀を反射的に交わし続ける画眉丸。そんな画眉丸の本心を佐切は喝破します。死んでも構わないと言う画眉丸の奥底には、叶わないと思い込んでいる「普通の暮らし」への渇望があったのでした。

生きることへの諦めと執着の入り混じる画眉丸に、佐切は一つの提案をします。

「極楽浄土へ行き、不死の仙薬を見つけて帰れば、無罪放免される」

諦めていたことが叶うかもしれない道を提示され、画眉丸は心を決めます。自分の真実に気づき、迷いから解放された画眉丸は、さらに強さを増すかのようでした。

登場人物それぞれの想いが生き様として描かれる

未知なる島に渡ったのは10人の死罪人と、監視役として選ばれた10人の処刑執行人・浅ェ門。まともな社会常識など持ち合わせていない死罪人たちは、島に着くなり殺し合いを始めます。無罪放免となるのは、ただ1人。

本作は死罪人たちとの壮絶な戦闘に加え、島の化物たちの奇怪な姿など、画的にも魅力的な要素が多くあります。しかし、中でも注目して欲しいところは、登場人物たちが抱えた想いと、想いを軸にした行動原理です。迷いながらも見つけ出したいと願う自身の真実があり、へっちゃらな顔をした裏に深い思いやりがあり。

完璧な人間などいないし、強い人間には弱い部分もあります。ですが、その弱さが自身の心を支える重要な要素となり、強さを支える源泉となっていきます。画眉丸が自分の心の真実を自ら覆い隠していたように、私たち自身の中にも、自ら隠してしまって気づかない本心が眠っているのかもしれません。ぜひ、登場人物たちの繊細な心の機微にも注目して読んでみてくださいね!

アニメーションスタジオMAPPAによるTVアニメ化が進行中。『地獄楽』の世界観をアニメで見られるのも楽しみですね! こちらも必見です!

執筆: ネゴト / みじんこ

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