常識が斬り刻まれる『チェンソーマン』人と悪魔が芸術的ぐちゃぐちゃバトル
藤本タツキ先生の『チェンソーマン』は、父親の残した莫大な借金を返すために、悪魔を殺し稼いでいるデンジという青年を描いたダークファンタジーです。デンジは悪魔に殺された後、相棒だったポチタと契約し「チェンソーの悪魔」の心臓をもらって復活。公安のデビルハンターとして数々の悪魔たちと熾烈なバトルを繰り広げます!
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
臓器を売るより悪魔殺しのほうが儲かる
借金返済のためにデンジは、自身の腎臓や右目、金玉を売っていましたが、借金は一向に減りません。デンジが夢を見るのは、食パンにジャムを塗って食べる贅沢な生活。デビルハンターとして悪魔を殺せば高い報酬を貰えるのです。命懸けですが割のいい商売として、デンジは悪魔を殺し続けていました。
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
デンジの相棒は、チェンソーの悪魔・ポチタ。死にかけたポチタに自分の血を飲ませて救ったことがきっかけで、ポチタとデンジは一緒に暮らすことになりました。しかしある時、悪魔と化したヤクザにデンジは殺害され、バラバラにされます。その時、デンジと契約を交わしたのでした。
「私の心臓をやる代わりにデンジの夢を見せてくれ」
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
ポチタの心臓を貰ったデンジの身体は再生し、復活を果たします。デンジの胸からはポチタのスターターロープが伸びており、引っ張るとデンジの頭部や両腕が、チェンソーの姿に超変身! チェンソーマンとなったデンジは、悪魔たちを容赦なくグジャグジャのミンチにします。
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
ゾンビの悪魔をぶっ殺したデンジのもとに現れたのは、公安のデビルハンター・マキマでした。悪魔として殺されるか、人として飼われるかを迫られ、デンジは飼われることを選ぶのでした。
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
胸を揉みたいという崇高な夢
公安のデビルハンターとして、デンジは否応なく悪魔たちとの闘いに巻き込まれていきますが、デンジにあるのは町の人を守りたいという正義感ではありません。公安に入って、ジャムの塗られたパンを食べるという夢を達成したデンジの次の目標は「胸を揉むこと」。とにかく胸を揉みたいという強すぎる欲望が、デンジを死地へと向かわせるのでした。
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
学校に通ったこともなく、他の人たちとの交流もほとんどなく育ったであろうデンジは、社会常識や倫理観を持ち合わせていません。幼い頃に父母を亡くしたデンジは、愛情を知らずに育ってきたのかもしれません。デンジは、親しくなった者を庇うそぶりを見せる一方で、彼らが死んでも心を痛めることもなかったのです。
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
チェンソーマンとして生まれ変わったデンジは、人や悪魔と関わりながら、他者への愛情のかけ方を自分なりに模索しているのかもしれません。それは普通の人から見たら異常に見えることかもしれません。
時代や環境によって、「普通」の基準は変わります。現在の私たちが普通だと思っていることが、100年後にも同じく普通であるとは言い切れません。『チェンソーマン』を読んでいると、自分の「普通」とあまりにかけ離れた「普通」が当然のように描かれているので、自分自身が食われ、作品世界に飲み込まれるような気になるのです。
『チェンソーマン』 ©藤本タツキ/集英社
血みどろすぎて芸術化している戦闘シーンや様々な悪魔のキャラクターデザインなど、本書では魅力的な部分もたくさん。さらに、チェンソーマンという悪魔の過去など、まだ明らかになっていない謎が潜んでいます。気になる謎が明かされるであろう『チェンソーマン』第2部は、2022/7/13より連載中!
第2部を読んだ人もこれからの人も、ぜひ第1部の登場人物の仕草やセリフなど、細部まで読み返して、作品の深みを味わってみてください!