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『三十路病の唄』諦められなかった…もう一度夢を見た、足掻く大人たちの物語。

「もう大人なんだから」そう言って誰しもが、多かれ少なかれ何かを諦めてきた。そういうもんだと割り切って毎日を懸命に生きている。でも自分が切り離した選択の先で夢を掴んだ人がいる。過去に置いてきた憧れが胸を刺激する時があるのだ。

30歳から夢に再挑戦することは、決して簡単なことではない。『三十路病の唄』では幸運にも互いの夢を応援し合う仲間を得た6人が登場する。彼らのシェアハウスでの暮らし、そして夢への軌跡が描かれる。

三十路病の唄 著者:河上だいしろう

『シガレット&チェリー』で若者の等身大の恋心を描いた河上だいしろう先生が大人たちに贈る、「大人だからこそ」の青春劇。同世代でも、未来や過去の姿でも、年を重ねていく我々に何か重なる部分があるに違いない。

あらすじ:30歳からもう一度夢を追う

ラスボス、ミリオン、ムッシュ、チュン、こぎり、おかん、高校時代の同級生6人は30歳。プロゲーマー、ミュージシャン、芸人……全員、諦められない夢がある。

同窓会で再会し、不完全燃焼な気持ちを抱えていた6人。同じ境遇に共感し、夢の実現のためシェアハウスで生活することに。「いい大人なのに」はたから見ればそれが現実かもしれない。

でも、30歳からでも無謀でも、夢を見て何が悪い!

怖くて当たり前

夢を追うために何かを捨てる。仕事や時間、お金に心証。必ず叶うかもわからないし、叶うのがいつになるのか、どんな形で叶うのかすらわからない。少なくとも30歳になるまで、彼らの夢は叶っていないという事実だけは確かだ。

「怖い」その感情は抱いて当然だろう。投資した時間や労力がのリターンが得られないことだけが怖いわけではない。30歳になっても捨てきれない心を占めるその”夢”の存在を人に明かすことすらも怖いはずだ。自分の心を人に晒すことになるからだ。

それでも彼らを突き動かすほどの原動力を生み出す。向き合い、臆することもあるだろう。でも振り払うことができないほど、心に深く食い込んだ大切な気持ちの結集。そんな、”夢”というものの魔力を思う。

みんな違う、だから人間くさい

6人は異なる夢を追っている。そこに至った経緯も、抱える原体験も異なる。夢との向き合い方も人それぞれで、互いを応援しながらあくまで自分の夢を叶えるために集まった。

それぞれの視点で語られるこれまでとこれから。互いに違う夢を追いながら、一つ屋根の下でそれぞれの物語が進行していく。それだけですでにドラマがある。人には人の物語があり、その時その時の感情がある。

彼らの悔しさ、喜び、正直さに、嫉妬して、憧れて、共感した。読者の記憶や感情とどこかで繋がって「彼ら」が流れ込んでくるのを感じる。自分の中にも「彼ら」がいる。その上で同じ世界のどこかで生きる一人の人間として愛し、応援しようと思えた。河上先生の描くキャラクターたちの唄が聞こえてくる。

夢を追うことが「より良い」ことな訳ではない。その逆も然り、大人になったら叶わない夢を諦めて、より”現実”的な幸せを得る「べき」という事もない。ただせめて人の決断を否定していないか、自分が納得した道を歩んでいるかは今一度自問したい。

そして今、夢の分岐点で迷っているのなら『三十路病の唄』はあなたへの応援歌になるはずだ。

執筆: ネゴト / うなぎ

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