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『しあわせは食べて寝て待て』ほんの小さなしあわせを自分の歩幅で探していく

水凪トリ先生の描く『しあわせは食べて寝て待て』は、「フォアミセス」にて連載中の作品です。出版社への持ち込み後、すぐに連載が決定したことでも話題になりました。

今回は、宝島社「このマンガがすごい!2022」オンナ編にもランクインするなど、注目度の高まる本作の魅力をご紹介します!

ちょこっとの変化がしあわせを連れてくる

38歳、週4日のパート暮らし。慎ましい日々を送る主人公のさとこは、一生付き合わなければいけない病を患っています。膠原病です。自分の体調のせいで職場に迷惑をかけたことや、それが原因で嫌がらせを受けたことから、なるべく周りに気を遣わず、自分の身体にも負担にならないパートという働き方を選択したさとこ。新しい職場でも周囲とうまく溶け込めずにいた彼女は、ひょんなことから薬膳と出会います。

これからも病気は続いていくけれど、カラダもココロもほくほく満ち足りていく...。薬膳の知恵と一緒に衣食住を慈しむさとこの何気ない日々には、肩の力がふわりと抜けて、軽やかな呼吸を取り戻させてくれる力があります。

すごくなくていい”居場所”

今の自分と向き合うきっかけをくれた薬膳。そのおかげでさとこは、職場の人間関係も自然と改善されていきます。

そんな彼女の変化は、難病を抱えている状況に限らず、仕事や恋愛などのたくさんのシーンで、あまりにも簡単に自尊心をなくすことができてしまう私たちにおいても、ささやかで大切なことを教えてくれるはずです。

職場の先輩が薬膳の話に興味を示してくれたことや、引っ越し先で出会った隣人たちとの何気ない会話や一緒に過ごす食事の時間。さとこが自分のペースで築いていく”心地いい、小さな社会”には、成果や成長といったすごいことは必要ないのです。

目に見える大きな変化や改善はないけれど、さとこの日常からは決して小さくはないしあわせが満ちているのが伝わってきます...!

すべての人に必要なネガティブ・ケイパビリティ

本作には、ネガティブ・ケイパビリティという考え方が出てきます。

「自分ではどうにもならない状況を持ちこたえる能力のこと(『しあわせは食べて寝て待て』1巻)」を指すこの言葉のように、一生付き合わなければいけない膠原病を、薬膳を通して自然と受け入れていくさとこ。

どうにもならない状況というと、悲観的な物事をイメージしがちですが、究極は自分そのものからも、逃げも隠れもすることはできません。さとこが選んだ消極的なしあわせの見つけ方は、すべての人に必要な”自分だけのしあわせのありか”に近づける特効薬。「もうやだ...」「いろいろ無理...」そんな心の声が聞こえたら、さとこと一緒に薬膳のレシピを試してみるのはいかがでしょうか。(簡単なものばかりなのもありがたい!)

誰に褒められるわけでもないけれど、ほっこりしあわせを感じることの大切さに気づかせてくれるはずです。

執筆: ネゴト / yukiko

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