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『うきわ、と風鈴。─友達以上、不倫未満─』この感情にもう嘘はつけない

野村宗弘先生による、夫婦関係に悩む男女の揺れ動く感情の機微を描く『うきわ、と風鈴。─友達以上、不倫未満─』。最新第2巻が2021年11月30日に発売されています。

うきわ、と風鈴。―友達以上、不倫未満― 著者:野村宗弘

心が浮つくことは罪ですか?

夫の仕事の都合で広島から上京することになった美以子さん。ただでさえ慣れない場所である上に、結婚当初はあんなに優しかった夫が今では「いってきます」も「ただいま」も言ってくれない。そんないつの間にか冷え切ってしまった関係に心を痛めていました。

今の美以子さんにとっての癒しはベランダに掛けた風鈴の音色を聞くことと、お隣さんから匂ってくる香ばしい料理の匂い。そして、美以子さんの住むマンションのお隣さんの牛久さんとたまにベランダで交わす会話でした。

料理店で雇われ店長をしていたものの、昨今の事情で閉店の憂き目に遭い職を失ってしまった牛久さん。バリバリのキャリアウーマンの奥さんに厳しく叱責されることも多く、優しくおっとりとした美以子さんとの会話に少なからず心を持っていかれている模様。

お互いが求めていたものを持ち合わせていることに、いけないこととわかっていても心が揺らいでしまうのです。

どうしようもなく寂しくなる夜に

心が弱っている時に不意にかけられた優しい言葉。我慢して我慢して押しつぶされそうだった心に響くそれは、正しいことが一体何なのかの判断を鈍らせるくらいには威力を持つのではないでしょうか。

ある日、まだ牛久さんが雇われ店長として料理店で働いていた頃、美以子さんは牛久さんのお店に足を運び1人夕食を楽しんでいました。

久しぶりの開放的な時間に少しばかりハメを外してしまった美以子さん。決して強くないお酒を飲み過ぎてしまい、閉店過ぎまで寝過ごしてしまうことに。

それでも、ただただ優しく介抱してくれる牛久さんに美以子さんの心は激しく揺れ動いてしまうのでした。

世間はとにかく白か黒かで分かりやすく物事を判断しようとしますが、どちらにも混ざり切らない感情があること、それを単純にただただ否定することはあまりにも優しくないのではないか、とも筆者は考えてしまいます。

目の前の人を見れていますか?

ずっと好きな気持ちが変わらずに一緒に人生を歩んでいけたらどれほど幸せなことでしょう。

いつも側に居ることがいつしか当たり前になって、その変化に気が付かないくらいに少しずつ形を変えてしまった関係性。心がもう元に戻れないくらいにまで離れてしまうことはありえないだなんて、誰が言えるでしょうか。

本作をありふれた不倫劇と捉えるか。それとも切実に今を生きるキャラクターに共感するか。作品を読んだ人の数だけ答えが生まれる、そんな抗えない不思議な魅力を孕んだ作品です。本作を読んで、ご自身の中に生まれた感情の正体を確かめてください。

友達以上、○○未満?

執筆:ネゴト /もり氏

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