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読めばあの頃の記憶がよみがえる『雑草たちよ 大志を抱け』平凡な女子高校生たちのかけがえのない日常

雑草。人々の注目を浴びずとも道の片隅でひっそりと、しかしたくましく根を伸ばし、光を必死に求め、成長していく名もなき草たち。

その姿をあらためて観察してみると、厳しい環境のなかでも空に向かって葉を伸ばしていく生命力の強さに、道端で健気に花を咲かせるその美しさに驚かされます。

池辺葵先生が描く『雑草たちよ 大志を抱け』は決してクラスで目立つ存在ではない平凡な女子高校生たちの少しほろ苦く、切なく、まばゆい日常を描いた青春連作短編集です。

あなたが10代だったあの頃の、心の奥にそっとしまっておいた記憶の扉を開けるとき、思い出されるのはどんな情景でしょうか?

雑草たちよ 大志を抱け 著者:池辺葵

平凡な女子高生のかけがえのない日常

物語の第1話に登場するがんちゃんは太眉がちょっと気になっている、おしゃれが苦手な女の子。

毎朝友達のひーちゃんに迎えに来てもらい、仲良し同士でおしゃべりしながら高校に通っています。

友達と推しのドラマについて熱く語り合ったり、隣の家に住む男の子にひっそりと想いを寄せていたり。

なんだか懐かしくてちょっと切ない。女子高校生たちの青春の日々が、表情、視線、光と影、池辺葵先生ならではの表現によって、やわらかに繊細に描かれていきます。

がんちゃんたちが教えてくれたこと

本作ではがんちゃんを中心に5人の女の子たちの5つのエピソードが寄り添いあうように紡がれていきます。

多くの人にとって青春の日々が甘く楽しいだけではなかったように、5人もそれぞれに悩み、葛藤を抱えています。ときには傷ついたり、「私なんか」と腐ってしまいそうになることも。

それでも雑草が根を張り、周りの土から生きていくための栄養や水を吸い上げていくように、彼女たちもまた周囲からの愛情を浴び、一緒に過ごしている友人たちからたくさんのことを学んでいきます。

・かわいくなりたいと努力する友人がとってもかわいく思えたこと

・好きなことを一生懸命がんばる姿はかっこいいということ

・誰かがそばにいてくれることがどんなにありがたいかということ

今まさに物語のなかで痛みを知り、優しさを学び、孤独を知り、愛を学ぶ彼女たちの物語は、自分らしく生きるために大切なことを、自分を愛するために必要なことを気付かせてくれます。

アルバムをめくるような懐かしさを味わって

あっという間に過ぎ去ってしまう青春時代の儚さも、ほろ苦さも、美しさもギュッと閉じ込めた『雑草たちよ 大志を抱け』。

人に笑われても、失敗しても自分らしく生きようとひたむきに頑張るがんちゃんたちの青春の日々を、アルバムをめくるような懐かしさとともにあなたも味わってみませんか?

執筆:ネゴト /よね

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