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『ブルーサーマル -青凪大学体育会航空部-』体育会系女子が見つけた自分らしく輝ける場所

小沢かな先生の描く『ブルーサーマル -青凪大学体育会航空部-』は、月刊コミックバンチに連載されていた作品です。2017年に完結を迎えた本作は、2022年3月に劇場アニメが公開され大きな話題に。今回は、完結後もまだまだ人気が高まり続ける本作の魅力をご紹介します。

ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部― 著者:小沢かな

キラキラ大学ライフの代償に出会ったもの

高校までがっつりバレーボールに打ち込んできた体育会系の都留たまき。大学へ入学した彼女は、高校時代にやってこなかった青春を味わうべく、サークルに恋に張り切っていたものの...。

彼女はサークルの体験でのテニスの練習中に、白い大きな翼のついた乗り物に目を奪われ、咄嗟に体育会系時代のパワーでビッグスマッシュを決めてしまいます。するとそのボールは、たまきが目を奪われていた飛行機をおさえていた青年に直撃! 衝撃で飛行機が傾いてしまったことで翼部分に亀裂が入ってしまったのです。

幸か不幸か、この乗り物・グライダーとたまきとの出会い、ひいては「体育会航空部」との出会いが、たまきの大学ライフを大きく変えていくことに。

衝撃的な出来事でたまきの大学生活のプランが大きく崩れることになったものの、その後グライダーに初めて乗せてもらった彼女は、空の広さ、自由さ、そしてグライダーに自然と魅了されていきます。

魅了された者は障壁を取り払う

たまきがハマっていくグライダーとは、風の力だけで空を飛ぶ乗り物。名前は知っていても、乗ったことがある人、操縦したことがある人は少ないのではないでしょうか。

上昇気流を意味するブルーサーマルをつかまえて高度を上げ、ゆるやかに高度を下げながら前に進んでいくグライダー。風という自然の力があってこそ成立するスポーツでもあるため、常に変化し続ける空模様や風を察知する経験値、航空工学や空中航学などの専門知識も欠かせません。

馴染みのない上に、想像以上に難しい……。でもその一方で、グライダーは体格の差や性別は関係ないスポーツでもあります。だからこそ、小柄なたまきの視点から描かれる航空部での日々は、ちょっと難しいかもしれないけど挑戦してみようかな、日常の中にそんな瞬間をギフトしてくれるのです。

新しい世界を見せてくれる主人公の魅力

技術・知識・経験がものを言うグライダーの世界では、当然命の危険が隣り合わせ。厳しい練習や規律も本作では忠実に描かれています。けれど、それ以上にたまきの明るさや好奇心が魅力的に描かれているのがこの物語。

見切り発車すぎて周囲をヒヤヒヤさせてしまうことも多々あるけれど、彼女の快活さがあまり馴染みのないグライダーの世界をグッと近くで眺めさせてくれるのです。

エンジンを使わず、風の力だけで空を飛ぶグライダーだからこそ、風の音、空模様、そして操縦者たちの心情がより印象的に伝わってくる本作。心までもフラットにさせてくれるグライダーのシーンやたまきの明るさは、追い風のようにアナタの背中を押してくれるはず。

執筆: ネゴト / yukiko

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