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『AIの遺電子 Blue Age』ヒトとAIが共生する、あり得るかも知れない近未来を描く

山田胡瓜先生による、別冊少年チャンピオンで連載中の革新的進歩を遂げた超高度AIと人類が共生する近未来社会を描いた『AIの遺電子 Blue Age』。現実に起こりうるようなリアリティーのある描写が特徴的な作品です。

   
AIの遺電子 Blue Age 著者:山田胡瓜

ヒューマノイドと呼ばれるAIの登場

AI(人工知能)が発展し、社会基盤の安定化や医療技術の進歩や人々の生活の利便化等、様々な恩恵を人類に与え豊かさを増したかのように見える近未来。その一方で超高度AIというヒトを超えた存在が生み出され、更にはヒューマノイドと呼ばれるヒトの心を持つAIの存在が人権を与えられ共生しています。

ヒトと同じような見た目に加え、ヒトと同じように寿命もあるヒューマノイド。その期間は超高度AIによって設定されているのですが、限りなくヒトに近い存在と言えるヒューマノイドも自ら子供を宿すことは出来ません。ヒトに対してその事実を私たちには出来ないことだから羨ましいと語りかけるヒューマノイドの姿も作中では描かれています。

そう遠くない未来に起こりうる世界

山田胡瓜先生の前作『AIの遺電子』の主人公、ヒューマノイド専門の医者である須堂光(すどうひかる)の研修医時代の姿を描いた前日譚が本作のメインストーリーです。

地球の総人口の10分の1を占めるまでに至ったヒューマノイド。ヒトと同じように恋をし、家族を作ることもあるヒューマノイドですが、ヒトとの大きな違いはその頭に入っているのは脳ではなく電脳と呼ばれる精密機械だということです。

心とは、何を指す言葉なのか。電脳によって生を受けているヒューマノイドの感情は全てがプログラムされたものなのか。作中に登場するキャラクターは、誰もがそのバランスに悩み、折り合いをつけることが出来ず悩んでいるようにも感じられます。

AIがもたらしてくれたもの

複雑な社会を生きる近未来の人類ですが、AIがもたらしてくれたものの恩恵もやはり大きいようです。自動運転は整備され、世話をしてくれるロボットは介護や教育の現場で当たり前の光景として日常に存在しています。さらに医療技術は格段に進歩し、患者の手術や治療方針もAIが選定したものを最優先するという考えがスタンダードになっているようです。

ただ、何もかもがAIの恩恵によって賄えるようになった社会で、ヒトの存在価値はともすると今よりも薄れてしまっているのではないか。そんな疑念も生まれてしまいます。

人権とは、そして生きることの意味を問う

過去にIT記者をされていた経験を持つ山田胡瓜先生だからこそ描けるのだと感じられる、地球の未来の姿をリアルに想像し具現化した『AIの遺電子 Blue Age』。研修医として医療の最前線で日々奮闘する須堂は人にしか出来ない医療を目指し患者1人1人に誠実に向き合います。

作中で須堂が何を決断し、何を患者にもたらすのか。超高度AIというある意味で神にも近い存在がありながらも、自分に出来る精一杯の医療を模索する姿には、大きな意味があるように感じるのです。

AIによりもたらされたものは豊かさか、それとも

本作で描かれる未来のヒトも、ヒューマノイドも、それぞれ今を生きる人々とそれほど変わらない悩みを抱えながら生きているように感じられます。

どれだけ社会や医療が進歩しても、人間の豊かさの本質は変わらないのかも知れません。ヒトとヒューマノイドが迷いながらも共に歩もうとしている世界を垣間見れば、読者が受け取るメッセージは様々あることでしょう。

明確な正解などないのかも知れません。それでも、考えることは私達を豊かにしてくれるような気がしてなりません。本作をヒントに、自分に出来ることは何か考えてみませんか?

永遠に続く愛の遺伝子を、未来に繋ぐ

執筆: ネゴト / もり氏

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