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『ルックバック』全ての表現者に捧ぐ……創作・クリエイティブへの深い愛情に大勢が共鳴&絶賛!

『ファイアパンチ』『チェンソーマン』に表現される唯一無二の世界観で大勢を魅了する藤本タツキ先生。

そんな藤本先生の読み切り作品『ルックバック』は、配信直後に文字通り一大旋風を巻き起こしたマンガとして記憶に新しい人も多いことでしょう。

ルックバック 著者:藤本タツキ

読み切りとしてはジャンプ+史上最多の驚異的な閲覧数を叩き出し、数多の2022年度マンガ賞にもノミネートされた本作。

その魅力は何よりも、作品から滲み出る藤本先生の「何かを表現する人々」や「何かが表現された作品」への、途方もなく深い愛情なのではないでしょうか。

彼女は描き続けた。きっと、何があっても―『ルックバック』あらすじ

本作の主人公は、藤野と京本という二人の少女です。

周囲からの評価もあり、自身の絵の上手さを自負していた小学四年生の藤野。しかし彼女のプライドは、桁違いの画力を持つ引きこもりの同級生・京本の登場で、一度ポッキリと見事に折れてしまいます。

挫折から一度は絵を描く事を諦めた藤野ですが、些細なきっかけで京本と交流を持ったことから、再び絵を、マンガを描く道を志すことに。

京本もまた藤野との交流で対人恐怖症を克服し、絵を描く楽しさを追求し続けながら外の世界へ興味を持ち始めます。

お互いの存在と絵を描くという共通点で、大きく変わり始めた二人の人生。共に切磋琢磨して過ごした日々の先に、結果として彼女たちは別々の道を歩むことに。それぞれの「絵を描く」道を進み始めた二人でしたが、とある事件が彼女たちに暗い影を落とすこととなるのです。

創作は苦しい、それでも何かを創り出さずにはいられない人たち

本作の魅力は、まず何よりも徹底した創作賛歌・表現賛歌が描かれている点でしょう。

何かを生み出し、表現し、創り出す人々。いわゆるエンターテイメント、カルチャーに携わる人々の苦しみと喜びが、この作品には非常に鮮明に描かれています。やりたいことを、楽しいことを、好きなようにやっているだけ。そんな印象を持たれがちな表現者の人々も、当然苦しみや葛藤、辛さを抱えています。

特にこのコロナ禍で、エンタメ・カルチャーは「不要不急の職業」である、と。心無い言葉を受ける機会が多かったのも、この作品の話題性の理由のひとつかもしれません。

けれど何かを表現する人々の多くは、どんなに辛くとも、どんなに苦しくとも。表現することをやめられないのだ、という事が、この作品が描く最も大きなテーマです。

もしかしたら藤本先生自身も、そんな表現者のひとりであるからこそ。本作に描かれた表現・クリエイティブの葛藤、そして喜びややり甲斐が、ここまで大勢の心を動かしているのかもしれません。

マンガに限らないジャンルを超えたクリエイティブへの大きな愛情

そして本作には同時にマンガのみならず、様々なエンタメ・カルチャー作品。それらを想起させる要素が、多数盛り込まれているのも注目ポイントです。

情景に描写された人気曲を彷彿とさせる隠し要素に、実際のとある事件を彷彿とさせるストーリー。

これらがマンガ好きのみならず、それらのカルチャーやジャンルを愛好する人々の間でも論争を呼んだことで、『ルックバック』はここまでの注目作品となりました。

ですが当然そこには題材となる作品やカルチャーに対し、藤本先生が深い愛情を持って作品に描いている事が同時に感じ取れます。

ジャンルを越えて何かを表現する人たち、そして何かが表現された作品を愛する人たち。『ルックバック』はこれからもきっと、全てのそんな人たちの琴線に触れるマンガであり続けるのです。

執筆/曽我美なつめ(https://twitter.com/ntm_s666

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