『すみれ先生は料理したくない』世の中の簡単レシピブームに物申す！ 共感が止まらないクッキングコメディ！
グルメ漫画というジャンルが確立されているように、気が付けば食をテーマにしたマンガはたくさん存在しています。
ササっと晩ご飯を作る、キャンプ飯や燻製に毎回挑戦するなど、マンガに登場するキャラクターたちは皆揃って料理上手！ でもちょっと待って、世の中こんなにスマートに料理できる人ばかりじゃないよ！ そんな逆グルメ漫画といえる唯一の作品が大久保ヒロミ先生の『すみれ先生は料理したくない』です。
人は見た目が100％というけれど…
音楽教室や保育園でピアノを教えているすみれ先生はその美しさと優雅な立ち居振る舞いから、周りからは完全無欠のイメージを持たれています。勝手な想像はどんどん膨らみ、いつしか「すみれ先生は料理も上手なんでしょうね」と言われる始末...。
ところが実際のすみれ先生は、いつもギリギリの金欠で全く料理のできない崖っぷちの独身女性！ 欲しいのは料理のできる白馬の王子様！
第1話より ©大久保ヒロミ/ぶんか社
周りからのイメージを崩すことができず、なかなか本当のことが言えないすみれ先生が毎話さまざまな料理に苦戦しながら痛烈にツッコミを入れる新感覚クッキングコメディです。
料理できる人も共感度100％のすみれ先生の鋭いツッコミ
多くの人がネットでレシピを探していると思います。そこには３工程で簡単！とか15分で完成！のような煽り文句をよく見かけませんか？
これって料理する人からしたら、そのレシピの行間に含まれている工程も無意識に理解しているのですが、料理のできないすみれ先生にとっては書いてあることが全てなんですよね。
たとえば、3工程で作る肉じゃがレシピを見たすみれ先生は、できあがるまでに100工程ぐらいあるんじゃないの？ と絶望します。
第1話より ©大久保ヒロミ/ぶんか社
たしかに！ と毎回すみれ先生の鋭いツッコミに共感という名の笑いが絶えません。料理家の方も本作を読んでぜひ今後のレシピ公開の参考にして頂きたいです。
すれ違いの恋愛模様に全力応援！
本作のもう一つのみどころにすみれ先生の恋愛があります。ピアノを教えに行っている保育園の保育士の男性に恋をしたすみれ先生ですが、料理ができないことを隠そうとすることで毎回すれ違いが起きてしまいます。
第1話より ©大久保ヒロミ/ぶんか社
料理ができないって隠さなくていいよ、そんなことで嫌われないよ、と言ってあげたい！健気に毎回料理に立ち向かうすみれ先生の恋を応援せずにはいられません！
女性＝料理できるというイメージが根強い世の中に喝！
『すみれ先生は料理したくない』に描かれているのは、決して料理ができないすみれ先生を笑うことではありません。すみれ先生が本当の自分の姿と見栄を張った姿との間で苦悩する様子がコミカルに描かれているのです。
なぜ見栄を張らなければならないのか。そこには未だ残る、女性は料理できて当たり前、男性は料理できる女性が好き、という世の中の風潮が原因なのではないでしょうか。
料理という呪縛に苦しむ全ての女性たちを解放せよ！ というメッセージがこの作品には込められているような気がしています。
執筆／Micha（https://twitter.com/Micha_manga）
