「フィーヤン」にかつてこんな主人公、いた!? 美しい表紙とのギャップも楽しい『ゴールデンラズベリー』
強い目ヂカラが印象的が美女が、メガネ男子と絡んでいる、うっとりするほど見目麗しい表紙、『ゴールデンラズベリー』。「ebookjapanマンガ大賞2022」書店員賞を受賞した本作の魅力をお伝えします。
さぞかしキラキラしたストーリーが楽しめるのでは!? と読み始めると……
1ページ目、巻頭カラーに、まさかのクソダサ男が!!
1巻・1話より ©持田あき/祥伝社フィールコミックス
頭ボサボサ、ヒゲもすね毛もボーボーでダサTシャツを着た、褒めるところが「太ってないね」くらいしか見当たらなそうな男性…
そんなクソダサ男こそが、この作品の主人公・北方啓介なのです。表紙とのギャップが凄すぎぃ!!
こんな芸能界モノ、かつてなかった!『ゴールデンラズベリー』とは
主人公の北方啓介は、高身長、高収入、高学歴のハイスペック男子。ボストン大出身で、職歴に「Mapple」(わたしたちの現実世界におけるApple)まである輝かしさです。
なのに…何故か仕事が少しも長続きしません。32歳にして転職を繰り返しまくり。その数なんと、24回! 今は芸能プロダクションでマネージャーをしていますが、あるトラブルで失職寸前に…
そんな中、啓介は印象的な瞳をした吉川塁と出会い、芸能界にスカウトします。さらに、スカウトからわずか24時間で、啓介は塁にプロポーズまでしてしまい…!?
1巻・1話より ©持田あき/祥伝社フィールコミックス
果たして啓介は、塁をスターダムに押し上げることはできるのでしょうか? 新感覚の芸能界サクセス(するのか!?)ストーリーです!
ハリボテキラキラ系男子(童貞)の終わらない自分探し
主人公の啓介は、良くも悪くも猪突猛進系。思い込んだら一直線!歯車が噛み合っている時は素晴らしい結果を叩き出すのですが、ひとたび狂い出すとなかなか方向転換ができず、「転職」という強制終了を繰り返す羽目になっていました。
例えば啓介は、大物CMプロデューサーに塁の良さを78回もメールし、返信が来ないものだから会社に直接凸ったりします。
私自身、テレビ番組のプロデューサーをしているのですが、事務所から78回もメールが来たら、間違いなく怖い…! 絶対に出禁にしてもらいます!!
でも、逆に言えば、とんでもない熱意を持って仕事をしているのです。ひとたび「この子は凄い!」と感じると、とことん入れ込み、文字通り惚れ込んだ末に……2話でプロポーズ!!
早い! 早すぎるよ啓介!
そんな啓介には、どんな未来が待ち受けているのでしょうか?
恋多き女・塁の据わりまくった肝が快感!
もちろん、ヒロインで啓介が惚れ込んだ吉川塁もとてつもなく魅力的! 美しい外見なのでモテモテではあるものの、恋愛は少しも長続きしません。
そんな彼女は、「一度でいいから誰かに本気で選ばれたい」と、啓介の熱意に応えて芸能界の門を叩きます。
「選ばれたい」。そんな風に思う彼女ですが、選ばれるために普通の人間が選びそうな行動は少しも取らないのです。
大物プロデューサーや事務所のチーフマネージャーを前にしても少しも媚びず、愛想笑いを浮かべることもなく、ストレートに物を言う。しかも、ただ強運なだけでなく、しっかり目標を見据えて研究を重ねるなど努力も惜しまない。そんな姿を見ると、いつのまにか私たち読者は、啓介のように彼女の魅力の虜になってしまうのです。
そもそも“ゴールデンラズベリー”とは
ゴールデンラズベリー賞とは、毎年「最低」の映画に贈られるアメリカの映画賞のこと。ブーイングを意味する「「Razz」から「Razzie Award(ラジー賞)」が正式名称ですが、そのトロフィーには「Razz」のもうひとつの意味である黄金のラズベリーがデザインされているため、「ゴールデンラズベリー賞」とも呼ばれているそうです。
2巻で、啓介はオーディションに落ちた塁にこう言います。
「もしも君がその賞(ゴールデンラズベリー賞)を獲ったら 2人で思い切り正装して行こう」
2巻・5話より ©持田あき/祥伝社フィールコミックス
実際、『キャットウーマン』でゴールデンラズベリーの主演女優賞を受賞したハル・ベリーは、授賞式にやってきて登壇。そのユーモアセンスと器の大きさで株を上げ、その後もしっかり成功を積み重ねています。
果たして啓介と塁は、大きな壁にぶち当たってもハル・ベリーのようにクールに乗り越えることはできるのでしょうか?そして、油断をすると、すぐにマネージャーという職ではご法度の領域、「恋愛感情」まで膨れ上がってしまう啓介のハートはどうなってしまうのでしょうか?どんどん話題になっていくに違いない『ゴールデンラズベリー』、必読です!!