造形乙女の密やかな楽しみ、「ガレキ」ことガレージキットの奥深い世界!
「ガレージキット」とは、大量生産される一般のプラスチックモデルやフィギュアとは違い、個人が手作りで製作する組み立て式模型のことです。「ガレキ」はその略称。既成の製品に飽き足らず、造形的熱意を燃やす人々が作る夢の結晶です。
『ガレキ!―造形乙女の放課後―』は、ガレキに魅了された二人の少女の物語。模型の知識のない初心者による成長物語として、初心者にも分かりやすいマンガとなっています。
一般に、模型人口は男性の方が多いと言われています。しかし近年は、女性ファンの数も増えつつあるのです。女の子が主役のホビー系・マンガ。ちょっとディープで、かなりDIYな世界をご案内します。
真っ白なフィギュアに魅了されて
真白は、うどん屋「ましろ」の看板娘。最近、「ましろ」が店を構える雑居ビルの上階に、新しいお店が引っ越してきました。その名は、「TOY BOXヤマト」。鍋焼きうどんの出前のため2階を訪ねた真白ですが、店内から現れたのはガスマスクを付けた謎の美少女でした。
『ガレキ!-造形乙女の放課後-』©ヨゲンメ/小学館 1巻より
ガスマスクの少女の名は雛瑚(ひなこ)。彼女はガレージキットの作り手で、作業中に発生する有毒ガスを避けるためガスマスクを付けていたのです。
翌日に、大きな販売イベントを控える雛瑚。しかし、転倒してパーツをひっくり返したため、作業が間に合わないと真白に泣きつきます。成り行きで雛瑚を手伝うことになった真白でしたが、原型から生まれる真っ白なフィギュアの美しさに心を奪われてしまいます。
欲しいフィギュアがなければ作ればいい
真白が手伝ったおかげで、雛瑚のイベント出店も無事に進めることができました。模型のイベントに興味を持った真白は、雛瑚のブースに足を運んでみることにしました。
アニメのキャラクターを模したコスプレイヤーに、所狭しと並ぶフィギュア群……。真白の目に映るのは、今まで見たことがない光景ばかり。そんな中、ひと際輝いて見えたのが、ガレージキットの販売ブースでした。ディーラー(出展者)と来場者の距離が近く、その交流がなんだか楽しそうです。
『ガレキ!-造形乙女の放課後-』©ヨゲンメ/小学館 1巻P42より
ガレージキットのブースで、真白は雛瑚と再会。雛瑚が塗装したキャラクター・フィギュアの展示を見て、真白は大興奮です。
実は、雛瑚の推しキャラは世間でマイナーなキャラクター。メーカー企業からキットが発売されることはありません。雛瑚は「なければ作ればいい」と、自力でガレージキットにしたというのです。
おまけに版権物の作品は「当日版権」といって、イベントの当日しか販売を許されないアイテム。一期一会のレアな出会いに、胸の高鳴りを覚えた真白は、雛瑚のキットを購入します。
世界でひとつの自分だけのフィギュア
運命のキットとの出会いに、新しい物語が始まる予感! 真白を見守る読者も、ドキドキしてしまいますね。
しかし、雛瑚のキットを購入した真白は、ある重大な事実に気がつきます。箱を開けると、中に入っていたのは真っ白な未完成品。塗装された完成品を期待していた真白でしたが、ガレージキットは組み立て式の模型だったのです。
『ガレキ!-造形乙女の放課後-』©ヨゲンメ/小学館 1巻P53より
ガレージキットの塗装には、それなりの知識と技術が必要です。一体をつくるのに、手間と時間もかかりますが、それはすべてガレキの魅力につながります。雛瑚は、「私と同じように完成させる必要なんてない」と、真白に教えます。原作とは違うイメージで塗装したり、カスタマイズしたっていい、ガレージキットの楽しみ方は自由だというのです。
世界でたったひとつの自分だけのフィギュア。大変な趣味だと思いながらも、真白は雛瑚の店・TOYBOXヤマトで、キットの塗装と完成を目指すことに決めました。
ガレージキットで広がる友情の輪
マニアックな美少女・雛瑚のレクチャーで、真白のガレキ製作がスタートします。その二人三脚の作業には、ガレージキットに興味がない人も共感するはずです。
「好き」がカタチになる醍醐味! 『ガレキ!―造形乙女の放課後―』は、共通の趣味を通して女の子たちが交流する「ガレージキット青春譚」です。雛瑚の従兄・ヤマトや、新たな造形乙女・小茂田ユキも加わって、友情の輪は徐々にスケールを増していきます。
模型好きも興味のない人も参加OK! 本書を読んで、造形乙女たちの輪に加わってみませんか。
執筆:メモリーバンク / 柿原麻美