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ゆっくりでいいよ〜人生を見つめ直すきっかけをくれるゆるやかマンガ特集

長い人生、ふとした瞬間に「このままの自分でいいのだろうか?」と迷ったことはありませんか? 頑張り過ぎて身体を壊してしまったり、今いる場所に居続けることがどうしようもなく苦しくなってしまったり、考えるきっかけは様々でしょう。

環境を変えて新しい場所に飛び込んでみたい気持ちもあるけれど、中々一歩が踏み出せないと悩んでいる方にこそ読んでもらいたい「こんな生き方もあるんだよ」と提示してくれるような、緩やかな生き方を選んだ女性が主人公の作品をご紹介させてください。

自分なりの幸せの見つけ方の処方箋『しあわせは食べて寝て待て』

38歳独身、麦巻さとこはバリバリのキャリアウーマンでしたが、ある日突然、膠原病(こうげんびょう)という一生付き合っていかないといけない病気を患ってしまいます。病気療養を理由に休職していた職場に1度は復職するものの、体調面の不安や精神的なストレスも重なり、職場を退職することになります。

しあわせは食べて寝て待て 著者:水凪トリ

体力的にフルタイムで働くことができず、週4のパートタイマーとして働くことを決めます。家賃の更新も迫る中、収入のこともあり引越を決意するさとこには、母と交わす何気ない会話が心にチクリとくることも。

モヤモヤした気持ちを抱えつつたまたま内見に訪れた築45年の団地で、さとこはオーナーの美山鈴(みやますず)さんと出会います。沈んだ心を解きほぐしてくれる鈴さんの言葉に惹かれ、この団地に住むことを決めたさとこ。さらに鈴さんと同居している息子の司から薬膳について教えてもらい、その魅力にも惹かれるさとこ。

ゆっくりと新しい場所へ踏み出したことで、新たな出会いやこれまでになかった価値観に触れることができ、さとこの人生が徐々にではあるものの、ゆるやかに満たされていくように感じられます。

自分に優しくしてあげることもとても大切なのだと教えてくれます。ちょっと飛ばし過ぎて疲れが溜まっている方にもおすすめしたい作品です。

囲炉裏を挟んでゆるりと田舎ライフ『アリスさんちの囲炉裏端』

小学生時代によく遊んでいた近所のお姉さん、アリスさんが10年振りに地元に帰ってきたところからストーリーは始まります。高校生になった幼馴染の青年・晴海は久しぶりに再会したアリスさんの醸し出す緩やかな雰囲気に段々と惹かれていくのでした。

アリスさんちの囲炉裏端 著者:キナミブンタ

お婆さんが亡くなったことがきっかけで東京から地元の田舎に戻ってきたアリスさん。祖母の住んでいた家にそのまま住むことになったアリスさんの部屋には、備え付けの囲炉裏があります。囲炉裏を挟んで美味しいご飯を食べる姿が作中では数多く登場します。

極厚のベーコンを使ったサンドイッチやニジマスの塩焼き、魚介がたっぷり入ったパエリアなど、囲炉裏を囲みながら美味しい料理を頬張る姿に癒されます。そんな緩やかな雰囲気の一方で、突如田舎暮らしを始めたアリスさんの心の内も気になります。

アリスさんからすると、それまで弟のような存在だった晴海との2人の関係性が、少しずつ変化していく感情の揺れ動きも見逃せない本作。囲炉裏に手をかざしているかのような、身体の芯から温めてくれるようなぬくもりを感じられますよ。

大切な人の存在が変わるきっかけをくれた『自転車屋さんの高橋くん』

内気なOL、飯野朋子(はんのともこ)は仕事に向かう道すがら、自転車のチェーンが外れてしまい困っているところを通りがかりのイケメンヤンキー高橋くんに助けてもらいます。

自転車屋さんの高橋くん 著者:松虫あられ

最初はコワモテでぶっきらぼうな口調の高橋くんにビクビクしていた朋子でしたが、次第に高橋くんのストレートな言葉と、飾り気のない優しさに惹かれていきます。

決して器用ではないけれど、ちゃんと自分のことを見てまっすぐに気持ちを届けてくれる高橋くんと朋子の距離は段々と近づいていきます。

それまで嫌なことや辛いことがあっても我慢をして負の感情を自分の中に押し込めて、それとなくやり過ごして生きてきた朋子。高橋くんとの出会いがもたらした影響は大きく、彼女は自分の気持ちを隠さずに他者に伝えられるようになっていくのです。

これまで「自分が我慢さえすればいい」という価値観で生きてきた朋子が、辛い時に高橋くんに助けを求めることができるようになったこともまた、高橋くんという存在の大きさを感じさせてくれます。

作中では朋子が人生の分岐点になるような大きな決断をするシーンも描かれます。それまでどこか生きづらそうな表情が目立った朋子が、憑き物が落ちたような顔になり自分の居場所を見つけていく姿は読者に強く訴えかけるものがあります。

大切な人との出会いが自分を変える勇気をくれる。初めての場所も、2人なら一緒に歩いていけると感じさせてくれる、そんな心が優しくなれる作品です。

ノーめんつゆノーライフ『めんつゆひとり飯』

最後にご紹介するのは、自炊はしているけど、ちゃんと自炊はしていない、そんなトンチのようなお気楽自炊ライフを送る面堂露(めんどうつゆ)が主人公の『めんつゆひとり飯』です。

めんつゆひとり飯 著者:瀬戸口みづき

作中で描かれるのは会社の同僚の社長秘書、十越(とごし)いりことの対比です。同期の2人ですが、お料理スタイルはまるで正反対。

とにかく一手間かけて凝った料理を作る十越さんに対して、面堂さんはほぼめんつゆ一本勝負なのです。この両極端な2人の噛み合っているのかどうかよくわからない掛け合いが最高なのです。

いかにラクに自炊するかを追求した末に、めんつゆという境地に辿り着いた面堂さん。作中ではめんつゆを駆使したズボラ飯が数多く登場します。そんな面堂さんのお弁当のデフォルトの色は皆様のご想像の通り茶色です。

ともすれば彼女はとても面倒臭がりな人に見えるかも知れません。筆者も実際そうだと思いますし、その証拠に作中でも幾度となく「めんどくさい」という単語が飛び交っています。本作を読めば、無理して頑張らなくても、頼れるものに寄りかかれば良いのだと教えてもらっている気持ちになります。

そう、めんつゆさえあればなんでも出来る。ズボラ女子面堂さんのめんつゆ料理を学べば、もっと楽に生きられる気がしてきませんか?

自分のペースで歩いていこう

各作品に共通すること、それは周りのペースに流されずに自分のペースで今を生きている登場人物達の姿ではないでしょうか。きっかけは様々でも、今の自分が1番心地良い時間を過ごすことができるようにライフスタイルを見直したり、生きづらさを感じる場所からは思い切って離れてみたり。もしくは人生が豊かになるとっておきのマストアイテムを見つけたり。 

本作を手に取れば、人生をより豊かに過ごす為のヒントが見つかるかも知れませんよ。

執筆:ネゴト / もり氏

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