恋人役から始まる『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』人生の主役は誰か…ヤングケアラーの少年と演劇少女がぶつかり溢れ出る青春
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』は著者の五郎丸えみ先生が描く、心が交錯し想いが溢れ出る青春マンガです。
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』©五郎丸えみ/日本文芸社 1巻/ 第1話より
こんにちは(こんばんは)! ライターのカリス魔王TKと申します。本日紹介するのは『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』です。
若々しく純度の高い恋愛模様に心をキュンとさせながらも、時折感じる違和感からキャラクターたちの言動や行動に何か裏があるのではないか、その答えを求めついページをめくってしまうマンガです。
そんな『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』は「コミックヘヴン」「月刊コミックヘヴン」に掲載、2023年10月10日に日本文芸社よりコミックが発売されました。著者は五郎丸えみ先生、他作品は『あやと私、まいにちみそ汁(日本文芸社)』『奈落のふたり(講談社)』などがあります。
人気者の恋人役
演劇部の香月立花(かづきりっか)は、モテる人気者の同級生の和泉ヒロト(いずみひろと)の肝だめしのパートナーに。そこでヒロトの意外な一面を知ることになります。それからというもの立花はなぜかヒロトから避けられてしまい、自分がヒロトに何かしてしまったのではと悩むようになります。
一方でヒロトは自分がなぜ立花を避けてしまうのかわからずにいたものの、幼なじみの姶良(あいら)から指摘され始めて立花への恋心に気づく。
あるきっかけで想いをぶつけ合ったふたり。しかしヒロトは立花が好きだが恋愛はできないという。そこには障がいを抱えた双子の妹、夏帆(かほ)の存在がありました。
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』©五郎丸えみ/日本文芸社 1巻/ 第1話より
ヒロトは好きなら付き合おうと立花から迫られ、自分の想いを証明するため恋人役ならできると言います。それならば立花の望むことにも応えられると。
目立たぬ演劇部の少女とクラスの人気者の少年、恋人役からふたりの青春が始まる。しかし立花の隠された本性をヒロトはまだ知りません。
(役を演じるような)セリフだから言える
時折見せる香月立花の表情の真意、ヤングケアラーの和泉ヒロトの抱える問題、立花を疑い出すヒロトの幼なじみの姶良(あいら)など、一筋縄ではいかなそうだなと感じるストーリーです。
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』©五郎丸えみ/日本文芸社 1巻/ 第2話より
注目点はたくさんあってここでは全てを語りきれないのですが、立花のあるセリフにフォーカスしてここからは進めさせてください。
それは立花が演劇部への想いを吐露するシーン。普段はうまくしゃべれないものの、セリフだと口ごもらずにしゃべれるというのです。
会話はうまくできない。けれど、劇のセリフや演説のような場面だと堂々としゃべることができる。その気持ちってすごくわかる気がします。
ステージの上で緊張はもちろんするんです。けれど、自分で会話しようとする時とは違って不思議と言葉が出てくるんですよね。
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』©五郎丸えみ/日本文芸社 1巻/ 第2話より
話しているのは自分だけど、セリフだと自分が少し希薄になる。焦りや余計な思考が消えて、どこか忘我のようになる。すると不思議なものですらすらと言葉が出てきて、その姿って堂々として見えたりするんですよね。
そんな立花の姿には共感を覚えるし、立花に惹かれたヒロトの気持ちもわかるような気がするんです。
青春の主役は誰か
タイトルにもある、プロタゴニストとは主役という意味です。どこか自分を影のように感じていた、香月立花(かづきりっか)と和泉ヒロト(いずみひろと)は青春の主役になっていきます。
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』は青春特有の葛藤を本筋として描きながら、ヤングケアラーという社会的課題をも内包したマンガです。
様々な要素とともに不穏な影も見え隠れする本作、ふたりの恋愛は幸せな道を辿るのか、それともねじれていってしまうのか。人生の主役になることができるのか。
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』©五郎丸えみ/日本文芸社 1巻/ 第4話より
『青春プロタゴニスト 僕たちは恋愛過剰』を読んで、若々しく純度の高い恋愛模様に心をキュンキュンさせながらも、見え隠れするキャラクターたちの真意と結末をドキドキしながら追ってみるのもいいかもしれません。
というわけで本日はこのあたりで。ステージの上って照明で意外とあったかいんです。ライターのカリス魔王TKでした。ではまた。
執筆:ネゴト / カリス魔王TK