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『美少女戦士セーラームーン』最終章〈シャドウ・ギャラクティカ〉編が放つ神々しさに震える

90年代を生きた乙女たちにとって『美少女戦士セーラームーン』は紛れもないレジェンドである。言い換えれば生きていくための道標であり、心の中で永遠に1番美しく輝く星なのだ。

そんな、いつまでたっても私たちの脳内を薔薇色に染めあげる「美少女戦士セーラームーン」関連のホットな話題といえば、劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」の公開だろう。

劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」ではシリーズ最終章となる〈シャドウ・ギャラクティカ〉編が描かれる。劇場で楽しむ前にストーリーをおさらいしておくか…と「あの頃の扉」(単行本です)をそっと開いたところ、あまりにせつない展開の数々にざわ…ざわ…と震えてしまった。

〈シャドウ・ギャラクティカ〉編、壮大すぎないか?」

観る為に覚えておきたい重厚感

シリーズ最終章となる〈シャドウ・ギャラクティカ〉編が「なかよし」で連載されていたのは1996年。およそ27年前だ。

歳を重ねたからこそ感じる重厚感。このストーリー、ほんとに「なかよし」で連載されてたの? キラキラのヴィジュアルやメディアミックスの多さでうっかり忘れてしまうが、〈シャドウ・ギャラクティカ〉編という作品の本質は、シリアスで大人っぽいエピソードが盛りだくさんということだ。他のシリーズを振り返ってみても、リアルタイムで読んでいた当時とちがう感想を抱くことも少なく無いだろう。

そんな〈シャドウ・ギャラクティカ〉編は、電子版『美少女戦士セーラームーン 完全版』の9巻・10巻で楽しむことができる。

このあまりにも切なく神々しい戦いの記録を、劇場に足を運ぶ前にぜひとも振り返っていただきたい。

美少女戦士セーラームーン 完全版 9巻 著者:武内直子
【最終巻】美少女戦士セーラームーン 完全版 10巻 著者:武内直子

(以下の内容には作品のネタバレとなる記述が含まれております。ご留意のうえお進みください。)

仲間たちの消失 孤独な戦い

シリーズタイトルにもなっている「シャドウ・ギャラクティカ」とはセーラーギャラクシアが率いる帝国の呼び名で、このセーラーギャラクシアこそがシリーズ最終章にして最強の敵としてセーラー戦士たちに襲いかかってくる。

物語は、セーラー戦士たちの平穏な日常から始まる。皆で十番高校に通う、なんてことない一日が映し出されるが、うさぎはどこか元気がない。まもちゃんがアメリカ留学に旅立ってしまうからだ。そして空港。笑顔で彼を見送ろうと気丈に振る舞ううさぎの目の前で、まもちゃんはセーラーギャラクシアの手によって姿を消されてしまう…!

そうだった…いきなりまもちゃんが消えてしまう、というこの衝撃。うさぎはこの時の記憶を無意識に封印するが、その記憶の断片が夢に現れ目覚める場面が描かれる。

まだまだうさぎの悪夢は終わらない。セーラーギャラクシアの策略によって、仲間のセーラー戦士たちまでもが次々に姿を消されてしまうのだ…! こうして、銀河中のあらゆる運命を巻き込んで、セーラームーンの孤独な戦いが幕を開ける。

うさぎの苦悩と決断

愛する人も友も失う、という最悪の船出となったこの最終章のみどころのひとつは、うさぎが自分自身のもつ運命と存在に向き合うところだろう。

セーラーギャラクシアはセーラームーンの持つ「シルバー・ムーン・クリスタル」を狙い、この争いを企てた。セーラーギャラクシアがセーラー戦士の頂点に立ち、銀河の支配者となるためだ。その事実を知ったうさぎは、自分の運命を呪い、悔やむ。在りし日に投げつけられた「幻の銀水晶とお前の存在が歴史を狂わせるんだ!」という言葉を反芻する姿が痛々しい。10代の女子高生が抱えるにはあまりにも深すぎる業である。

自らのせいで仲間を失い、傷ついても、セーラームーンは立ち上がる。争いを呼び起こしてしまう自分の存在をどう肯定し、未来に繋げていくのか。善と悪、敵と味方、光と闇…。簡単な二極化では測れない「銀河の行く末」を背負ったセーラームーンがたどり着いた神々しい境地に、ぜひ改めて触れてみてほしい。

そしてもうひとつのみどころは、新キャラクター・星野光、大気光、夜天光の3人の登場だ。世間を賑わすアイドル・スリーライツとして活動している彼らは、銀河の彼方からやってきたセーラー戦士だった。

シリーズ終盤からの登場にも関わらずその人気ぶりは凄まじく、劇場で彼らの活躍が見られるのを楽しみにしているファンも多いはず。セーラームーンを叱咤激励する彼らもまた、セーラーギャラクシアに運命に翻弄された戦士だった…という物悲しい背景が魅力を倍増させる。星野とうさぎの急接近にも、哀愁を感じずにはいられない。

あなたはセーラームーンの神々しさに涙する

次々に襲いかかる不幸と決して明るいとはいえない展開に、もしかすると「美少女戦士セーラームーンってこんなお話だったっけ…?」とページをめくる手が止まってしまうかもしれない。

けれど、どうか最後まで読み進めてみてほしい。目の前の絶望に抗い未来を信じるセーラームーンの強い想いが、紙面を超えてわたしたちの心に降り注ぎ、今日を生きるパワーを与えてくれるはずだ。そう、セーラームーンはずっとそういう存在だった。パワフルで、前向きで、未来を信じる力をくれる。

許し、包み込み、光を放つ。『美少女戦士セーラームーン』の壮大なフィナーレを、大人になったあなたにもぜひ楽しんでいただきたい。

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執筆: ネゴト / あまみん

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