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『日本三國』三国時代に突入した日本を手中に収めるのは「力」かそれとも「知」か?

重厚なストーリーと新感覚の歴史マンガとも言える、これまでにありそうでなかった新しい世界観を堪能できる作品。それが松木いっか先生の『日本三國』です。

日本三國 著者:松木いっか

政治経済の堕落や民衆の蜂起により国家が崩壊し、文明が明治初期レベルにまで衰退した日本。やがて3つの国に分断され、それぞれがこの国の覇権を争う三国時代に突入します。

過酷な運命に翻弄される青年、三角青輝

三国の1つである「大和」の領土、愛媛郡に暮らす司農官の青年、三角青輝。合理主義の彼は知略に優れ弁が立つものの、決して道を踏み外すような選択を取ることはありませんでした。

妻の小紀は「あんたに足りないのは勇気だ」と告げます。

ある日、民衆から不当な徴税を図り私服を肥やす大和国の役人の姿を見かけた小紀。むやみに絡んで目をつけられないよう制止する青輝をよそに役人を叱責し、追い払います。

権力に媚びず、勇気を持って行動する姿を目の当たりにした青輝はその翌日、その身を焼かれるよりも辛い出来事に遭遇するのです。それは大和国の実験を握る男、平殿器による小紀に対してのあまりにも惨たらしく理不尽な仕打ちでした。

三角青輝は知行合一を為す

本作の主人公である三角青輝。彼は再び訪れた戦国の世において、武力を持つ人間ではありません。彼はその智力と弁論力を以ってして日本を変えようと立ち上がります。

青輝の凄さは一見分かりづらくもあります。戦局を打開するような一騎当千の能力も、幾多の戦場を潜り抜ける程の必殺の剣技を持つ訳でもありません。そして周囲には武功で名を上げようとする血気盛んな人間ばかり。

そのような環境の中で己の信念と脳内で巡らせている計略ただそれだけを武器にのし上がって行く青輝の姿に目を奪われるのです。

本当の知とは実践を伴っていなければならない。「知行合一」を実践する青輝は、勇気を兼ね備えた本物の知略家として頭角を現すのでした。

真に人の心を動かすのは恐怖か、それとも勇気か

動乱の世を彩るその他の登場人物達もまた魅力的です。後に青輝が仕えることとなる、大和国最強と呼ばれ部下の信頼も厚い辺境将軍、龍門光英。

更には青輝と同世代で若くして武力に秀でた自信家の美青年、阿佐馬義経など年代も思想もビジュアルも色彩豊かに、くせのある強者達が次々と現れる様は壮観です。イケメンもイケオジも入り乱れる怒涛の展開に胸が踊ります。

圧倒的権力と恐怖で人を支配しようとする者、立身出世の為に立ち振る舞う者。国の為に忠義を尽くす者。それぞれの思惑がぶつかり合い、文字通り命懸けで闘う世界。 

だからこそ言葉の一つ一つに重みがあり、ページを捲る手は勢いを増すのです。青輝がここからどう成長し、この不条理な世界を動かしていくのか。そして物語がどのような結末を迎えるのかが気になって仕方がないのです!

まずは物語の序章として、伝説の始まりを予感させてくれるには充分すぎるこの完璧な第1巻を、どうか心ゆくまで堪能して下さい。

執筆: ネゴト / もり氏

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