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「無い」からこそおもしろい「注目の“レス”マンガ」たち

本来あるはずのものが無い状態を表す言葉、「〇〇レス」。

「無い」ことは一見ネガティブなイメージを持ちますが、最近では便利で最先端というプラスの印象を感じるようになりました。

そこで今回は「注目の“レス”マンガ」と題して、「無い」からこそ独自の輝きを放つ作品に注目!

異世界レス・アンチレス・ペーパーレス・モラルレスな4作品をご紹介していきます。

異世界レスなダークファンタジー『デッドマウント・デスプレイ』

ここ数年で定番ジャンルとなった異世界転生もの。

いままでにない読み心地の異世界転生を読みたい人には、異世界レスな異世界転生ファンタジーの『デッドマウント・デスプレイ』をおすすめいたします。

デッドマウント・デスプレイ 原作:成田良悟 作画:藤本新太

世界の命運をかけた戦いの果てに、現代の新宿にやってきた異世界からの転生者。現代でおだやかに暮らしていくことを願うも、謎に包まれた少年・四乃山ポルカの遺体に転生したことが引き金となり複雑怪奇な事件に巻き込まれてしまう…。  

舞台が現代でもまぎれもなく「異世界」の不思議

現代から異世界への転生ではなく、異世界の住人が現代の新宿にやってくるという「逆」異世界転生が新鮮な作品です。

異世界ものの魅力は、ファンタジーな世界観。

本作は現代を舞台にしつつも、藤本新太先生の演出力によって「異世界からの転生」という設定を損なうことのない、ダークファンタジーな世界を存分に味わうことができます。

ストーリーが進むにつれ、転生者がいた異世界と現代の新宿との奇妙な接点が浮き彫りになっていくミステリー展開もみどころです。

そんな複雑な物語を進行するのは、原作者である『デュラララ!!』の成田良悟先生。

異能力者が起こす不可解な事件や一族の争い、ギャング抗争といったシリアスな群像劇を巧みに描き、「異世界もの」「転生もの」というくくりに収まらないオンリーワンの読み心地を生み出しています。

注目は転生の全貌が明らかになる衝撃の第1話。読めば思わず驚きの声が漏れ出てしまう仕掛けに夢中になるはずです。

2023年には待望のアニメ化!要チェックです!

アンチレスな青春ラブコメディ『正反対な君と僕』

ラブストーリーといえば、とったとられたを繰り返し、三角関係に頭を悩ませるものである。そんな恋愛マンガのお約束の斜め上をいくのが『正反対な君と僕』です。

正反対な君と僕 著者:阿賀沢紅茶

ブレない芯をもつ寡黙な谷くん。鈴木はそんな谷くんが好き。晴れて両思いとなったふたりは、おたがいの気持ちを確かめ合いながら少しずつ絆を深めていく。周囲の友人たちも巻き込んだ、ゆるいバイブスが魅力の青春等身大ラブコメディ。

答えはいつも僕らのなかに

恋敵とのいざこざはラブストーリーを盛りあげるスパイスになりますが、波乱の展開ばかりでは心がすりきれてしまうことも。

しかし『正反対な君と僕』には、主人公たちの恋路を邪魔する恋敵ポジションのキャラクターが登場しません。憎まれ役がいない、アンチレスな展開が作品を唯一無二のものにしています。

鈴木の元彼の登場に不穏な空気が漂っても、鈴木と谷くんは自分たちのなかに答えを見つけだします。

ライバルとの小競り合いやマウントの応酬といった外に対する意識よりも、自分の内側に強く向き合っているキャラクターの姿が本作の魅力なのです。そういう内なる戦いからも恋愛のハラハラ感は生まれるものなのか、とハッとさせられます。

憎まれ役がいないから、地雷がうまれない。

「このシーンいいよね!」と気軽にシェアできる楽しさにあふれた作品です。

「次にくるマンガ大賞web部門第2位」宝島社「このマンガがすごい!2023オトコ編」第9位にランクインするなど、好感度大なラブコメディをぜひお楽しみください。

ペーパーレスな現代サバイバルストーリー『バツイチふたりは未定な関係』

婚姻関係を結ばない=ペーパーレスな関係を選んだ男女を描く『バツイチふたりは未定な関係』。この物語を「わがまま」「自分勝手」と揶揄するのは早計です。

バツイチ2人は未定な関係【描き下ろしおまけ付き特装版】 著者:近由子

離婚を機に、自分にとって心地のよい生活を優先することを決意した真実。彼女が望むのは「必要な時だけ一緒にいてくれる異性」の存在。周囲に理解はされないが、たった1人の同志・中村くんとの再会で物語は加速していく。

自由の代償と戦う姿がリアル

『バツイチふたりは未定な関係』で描かれるのは、結婚生活はもうゴメンだ!と両手をあげる男女が、自分を愛しながら生きていくことを模索する姿です。

ラブストーリーよりはRPGという響きがしっくりくるかもしれません。

真実が抱える母親との根深い関係、中村くんが抱く周囲に求められる自分と本来の自分との違和感。自分たちを悩ませていたいくつもの課題を見つけては、泥くさく攻略していく…2人がトライアンドエラーで難題に立ち向かう姿に勇気をもらえます。

結婚届をださない男女の物語、と聞くと新しい時代の波を感じとてもキャッチーですが、本作の2人にとって婚姻届で結ばれない関係は先の見えない未来を納得して生きていくための手段でしかありません。

一度結婚生活で苦渋をなめた2人が、あらたなスタートラインに立ちたいと感じたとき、もしかすると結婚という選択肢も出てくるのかも?ペーパーレスであることは、未定な未来を楽しみに生きていく糧なのかもしれない、としみじみ感じます。

2023年にはドラマ化も!多くの大人たちを湧かせてくれることでしょう。

徹底したモラルレスにそそられる『地元最高!』

「地獄が地獄を呼んでいる」と評判の『地元最高!』。みどころは徹底してモラルゼロのアウトロー展開です。

地元最高! 著:usagi

シャネルちゃんとちひろちゃんは同じ地元のワル仲間。暴力・おクスリ・貧困差別は日常茶飯事。いよいよ始まったこわ〜い先輩たちとの「お仕事」で、2人は本格的にあっちの道へ…?

「地元」はわたしたちを幸せにしてくれる?

かわいい絵柄でカオスな日常を見せる序盤から、次第にガチな悪業展開に様相が変わっていく。無知な女の子たちが地元の負の連鎖にからめとられていく様子にゾクゾクします。

貧困も暴力もぼかさない。これはヤバいんじゃなかろうか、と彼女たちの脳が警鐘を鳴らしても、それすらどこかズレている。徹底してモラルが排除された日常が「怖いもの見たさ」の心を刺激します。

さらに、モラルの象徴ともいえる警察や社会の介入がまったく描かれないところもゾッとするポイント。無法地帯の盲目さが際立ち、恐ろしさに拍車をかけます。

とはいえ、彼女たちのあいだには地元を生きるためのルールがあり、それを必死に順守します。モラルはないが道理はある。そのアンバランスさも作品の魅力でしょう。

アウトロー女子たちの日常はどこに行き着くのか。地獄の入り口をぜひのぞいてみてください。

執筆: ネゴト / あまみん

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