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年間1800冊を読む漫画好きが教えてくれた、面白い漫画に苦労せずに最速接近するたった一つの方法! ヒントは「広告」にあり

おもしろい漫画と出会いたい。わたしたちは日々、そんな強い気持ちと共に漫画の海を泳いでいます。

しかし、期待して読み始めてもノリが合わなかったり、好みのジャンル以外を読むことを負担に感じたり、新しい出会いを求めるなかでストレスフルな経験をした人も少なくないはずです。

とくに、いままで知らなかった作品から知ろうとするのはひと苦労ですよね。

これはある種の現代病…名前をつけるなら、そう「漫画チェック疲れ」。

なるべく傷つかず簡単に、おもしろい作品と出会う方法はないものか。

そこで今回は電子書店・ebookjapanの中の人をお招きし、ちょっとお疲れ気味のわたしたちが「トレンド感もありつつ好みの漫画と出会う方法」をご指南いただきました!

出会いのキーとなるのは、ウェブサイトやSNSでよく目にする電子書店の作品広告。

広告の特性をうまく使えばおもしろい漫画とのマッチング率を高められるというのですが、それってどういうこと!?

この記事では広告から広がる新しい出会いの可能性をお伝えしていきます。

今回お話しを聞いた人: ebookjapanの「中の人」

新刊・旧作・ジャンルにこだわらず、ここ1年で漫画を1800冊ほど読了。
マンガアプリ20個を毎日チェックし、トレンドチェックは欠かさない。
各SNSでバズった作品は、作家の過去作まで網羅するのが心情。
自社で読めない競合書店の作品には迷わず課金するなど、日々漫画筋を鍛えながら新たな出会いを求め続けている。

何度も同じ広告を見る=出会いのチャンスタイム!

おもしろい漫画と出会う方法についてご紹介する前に、本記事で登場する「作品広告」について簡単に説明させていただきます。

本記事で触れている「作品広告」「ネット広告」とは、みなさんがスマホのネットサーフィンやSNSチェックで見かけるこのような広告画像のことを指しています。

広告をタップするとそれぞれのページにとび、サンプルを読むことができるしくみです。

この作品広告は万人に同じ内容が映されている訳ではなく、過去の閲覧歴などを軸にユーザーの性別・年齢・趣向などに合った内容が反映されるようになっています。

いわば広告が顕しているものは、あなた自身の嗜好なんです。人の好みとは思いのほか狭く、ある特定の”愛するもの”にこだわる傾向が少なくありません。そのような、昨今耳にする事が多い「偏愛」は誰にも眠るもので、その愛に強く盲目的になりすぎると、その愛の向く先はジャンルやカテゴリーではなく作品に行き着いてしまいます。偏愛は推しに進化するんです!

その推しを広告はいち早く察知します。そしてその作品から推察される、推薦に値する新たな推しを提案してくれています。広告ってゴリゴリ押してくるって思ってませんでした? 違うんです、ゴリゴリ推してくるんです!

中の人:何度も同じ作品の広告に当たったり、内容は違うけどまた同じ作品の広告だったり、というのはネット広告あるあるですよね。でも少しだけ視点をずらせばこう思えないでしょうか?
「それは出会いのチャンスタイム!」なんだって。

しょっちゅう見かける広告の作品こそ真っ先にチェックしてください、と声を大にして伝えたいんです!

【こんな時は広告作品を要チェック!】

・何度も同じ作品の広告が出てくる

・同じ作品でも内容ちがいの広告が出てくる

広告はお金と時間をかけたレコメンドだ

同じ作品の広告をよく見る場合、それだけあなたがネットで検索しているあれこれと近い、あなたの潜在ニーズにマッチした作品だ、とインターネットが判断している証拠です。

漫画の広告に限らずですが、ネット広告はファンになってくれそうな人に届けやすいという特性を持っています。ユーザー視点から見ると、好みのものに出会いやすいということです。

もちろん、こちらが推したい作品であることもありますので、純度100%ではないことも否定しません。

しかし、企業は多くの時間とお金をかけて広告を選定しています。そこからあなたに好んでもらえそうだと選ばれた広告が現れているので、自分好みの作品である可能性が高いと思っていただけると嬉しいです!

とくに「手当たり次第にいろんな作品を読む体力はもうないぜ」という漫画チェック疲れ中の方は、ぜひ一度広告作品を覗いてみることをおすすめします。

トレンドを押さえたいならまずは広告チェック!

企業が時間とお金をかけて作品をおすすめしてくれているかと思えば、なんだか広告を見る目が変わります。1800冊以上の漫画を網羅している「中の人」が関わっているなら、さらに信憑性は高まりますね。

作品広告を反射的にタップしてサンプルを読みふけり、まんまと時間が溶けていたこともありますが、それは戦略的に約束された未来だったのか…。

「よく見る漫画広告のタイトル一覧」なんてまとめサイトも見かけるぐらいなので、多くの人が広告掲載作に心惹かれているんですね。

中の人:一見ランダムに見える広告掲載作品ですが、ユーザーニーズ以外にも世間のトレンドが強く反映されています。 そういった意味でも、広告掲載作品には多くの方におもしろいと感じてもらえる作品がそろっているので、関心も高くなるのかもしれません。

最近は家族やカップルが題材で、女性の心の葛藤を描くといった「読者が自分ごと化しやすい内容」の作品が支持されています。

世間的な流行を感じるのは、タイパが良い作品の人気でしょうか。

タイパはタイム・パフォーマンスの略で、限られた時間を効率的に使おうとする動きのことです。

映画を倍速で見たり、音楽はサビだけを聴いたり…考察動画でアニメの内容を理解する、といった今時のエンタメの楽しみ方もタイパですね。

短い時間でいかに楽しめるかを重視する方が増えているので、マンガも展開が早くてダイナミックなタイパ的作品が好まれてきています。

日々の暮らしから辿り着く未知の領域

ここまでお話から、自分で気づいていなかったニーズの変化にも素早く対応してくれているのが広告掲載作品、という新たな気づきを得ることができました。

まさに近年増えてきたというタイパ系作品が好例で、30代以上の読者にとっては新しいジャンルのマンガです。かつての「好き」にこだわっているだけでは辿り着けない未知の領域なのかもしれません。

わたしたちが日々の生活をおくるだけで、アップデートされた新しい出会いへと導いてくれる。それが「広告を活用すればおもしろい漫画とのマッチング率を高められる」という理由なんですね。

広告からロングヒット!「今売れてるマンガ」の共通点とは

トレンドと密接に関わっているという広告掲載作品ですが、最近の人気作はどういった傾向にあるのでしょうか。

2022年9月までのデータを元に、ebookjapanではどんな作品が流行ったのか、作品名とその傾向を紹介していただきます。

もしも読んだことのない作品があれば、早速この場でチェックしてみてください!

中の人:まずは作品タイトルから発表していきます。このタイトル、広告で見たことある!と思い出してもらえる名前も多いのではないでしょうか。

ebookjapanロングヒットタイトル

大好きな妻だった』武田登竜門

はじまらない結婚』木村イマ

真綿の檻』尾崎衣良

大切な人が死ぬとき ~私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた~』水谷緑

子宮を貸して』嵯峨根グミ・朝野いずみ

妊娠したら死にたくなった』橘ちなつ

悪役令嬢は無邪気に笑う。』尾羊英・夜流

超大国のイケメン王太子に嫁ぎたくない!!』くせつきこ

弊社オリジナル作品である『超大国のイケメン王太子に嫁ぎたくない!!』に関しては、広告出稿を強化した結果、各話がランキングトップ〜上位に入るという結果を残しました。これは皆さんからの熱い支持と広告効果を大きく感じた出来事でしたね。

超大国のイケメン王太子に嫁ぎたくない!! 著者:くせつきこ

以上のような人気作からも分かってもらえる通り、最近の広告掲載ヒット作は次の2つの傾向が強いです。

・女性の心の葛藤を描くなど、読者が自分ごと化しやすい内容

・もやもやからスカッとまでを短いストーリーでインスタントに楽しめる作品

さらに、ジャンルとしては令嬢ロマンス系も根強い人気を誇っています。

作品の魅力を伝えるバナーデザインのこだわり

ここまでヒット作の傾向についてお話しいただきましたが、ここからはついタップしてしまう広告画像(以下、バナー)のデザインの秘密を教えていただきましょう。

電子書店のバナーって、パッと目に飛び込んできて思わずクリックしてしまう不思議な力を感じるんですよね。一体どんな秘訣があるのでしょうか。

中の人:インスタントに楽しめるものが好まれる、というのは作品だけでなくバナーのデザインにも言えることです。
バナーでは、起承転結の「起」を分かりやすく映し出すことで読者の興味を惹きます。思わず突っ込みたくなるようなコマ選定・ワードチョイスは魅力的なバナーに欠かせません。

まさにこれも、先述したような読者のタイパ傾向に則した一面ですね。

次にご紹介するような例は特に反応が良好でした!ぜひバナーから作品世界を堪能してみてください。

『大好きな妻だった』武田登竜門

「…千香はいつ死ぬんだろう」という妻の死を願う夫の不穏なセリフと共に、「余命宣告」「癌」といった衝撃的な単語が目に飛び込んでくる。この夫婦の行方を知るために広告を思わずタップした人は多いはず。

『はじまらない結婚』木村イマ

新婦が唖然とした表情をしている1枚目の答え合わせとして、2枚目の画像では新郎と新婦の幼馴染の姿が「浮気」の2文字と共に映し出されている。衝撃的な展開に一気に引き込まれてしまう。

『悪役令嬢は無邪気に笑う。』

難癖をつけてくる相手と、余裕の表情を浮かべるヒロイン。この後に待ち受けているであろうスカッとする展開が想像でき、ワクワクが止まらない。黄金色に輝くキャッチコピーが「令嬢系作品」らしさを際立たせている。

トレンドから推薦!「今からおすすめしたいマンガ」

先ほどご紹介したebookjapanのロングヒット作品たちは「不倫」「パワハラ」「介護」といった身近な悩みがテーマになってます。

多くの人が抱える身近な悩みで、共感しやすく、もやもやが解消するような展開でスカッとする作品は今後も人気が続くでしょう。

そんな流行をもとに、ここからは漫画好きライターが推薦する共感必至の2作をご紹介させていただきます。

もはや社会問題?多くの親を悩ませる「PTA活動」

働き盛りの保護者世代にとって他人事ではないのが、PTA問題です。

PTAとは学校と家庭が協力してさまざまな活動を行う集まりのことで、その活動は多くの公立学校で実施されています。

多くの功績が残されている一方、今も昔もちょっと気難しい存在であることは否めません。

同調圧力・無償労働・偏った女性文化…そんなPTA活動のままならなさが描かれた『PTAのとも ヤンギャルママ春名さん参上!(合本版)』は、多くの保護者たちの共感を集めること間違いなしと注目しています。

PTAのとも ヤンギャルママ春名さん参上!(合本版) 著者:キャンディーサトウ

慣れない土地で新しい仕事も始まり、PTA活動に専念できる余裕がないことを訴えるのは転勤族の妻・シオリ。

PTA活動で活動で保護者たちを苦しめる一因のひとつは、人間関係の不和と言われています。噂話はメンバー同士のギスギスを煽り…

共働きが一般化し、活動時間の不平等からワーママと専業主婦の対立が深まっていきます。

そんな一触即発の危機に物おじせず声をあげるのが、本作の主人公・元ヤンギャルママの春名ともです。

曲がったことは嫌い。何よりも子供のために。そんな信条を一貫するともの痛快さが、本作の醍醐味といえるでしょう。

女同士のドロドロバトル勃発に緊張が走っても、ともがさっぱりとそれを回避。

強い言葉で相手を言い負かすわけではなく、子供たちのために活動しようとする彼女のマインドは、あらゆる分断を抱える保護者間の潤滑油となっていきます。

分断を乗り越え、保護者たちが弱々しくもたしかな絆を育んでいく姿に心が沸き立つ!アツくなる!

現実がこんなに美しくおさまらないことは百も承知。

だからこそ、作中のママたちの汗と涙が多くの人に希望を与えてくれるのではないでしょうか。

メイクはわたしたちの共通言語!

もうひとつ注目したいのはメイクマンガ。メイクに関する発信はSNSでも人気が衰えません。

中でも今注目されているのが、男性向けのメンズメイクです。

「メンズメイク」「メンズ美容」は、過去5年間で検索数も右肩上がりというトレンドワード。

今や男女ともに関心の高いメイク事情は、まさに自分ごと化の頂点とも言えるテーマではないでしょうか。

そんなメンズメイクがテーマの『僕はメイクしてみることにした』は、平凡なサラリーマン・前田一朗が主人公。これが普通?それとも油断しすぎ?な38歳のビフォーアフターがめちゃくちゃ気になります。

僕はメイクしてみることにした 著:糸井のぞ 原案:鎌塚亮

今作の主人公は男性ですが、自分自身がどうありたいのか、という内面への語りかけ(セルフケア)が下敷きにあるため、女性からも多くの共感の声が寄せられています。

しかし現状、メンズメイクにはポジティブな面ばかりではありません。

清潔感を保つため身だしなみを整えるスキンケアはよしとされる一方、カラーを肌にのせるようなメイクアップはやりすぎとされてしまうのが男同士の容姿にまつわる微妙なノリ。

リップメイクに挑戦した一朗も、外野から心無い言葉を投げつけられてしまいます。

自分自身がどうありたいのかが大切、とするのは本作のテーマですが、それを許さない現在の社会の本音もしっかりと描かれているのです。

果たして一朗は、社会と自分の折り合いをどこに見出すのか。その問いかけは、わたしたちのライフスタイルを見直すきっかけにもなり得るのです。

シェアコスメ、と呼ばれる男女兼用のメイク用品があるように、まさにこの作品も男女分け隔てなく共感できるシェアコミックと言えるのではないでしょうか。

2022年11月からシーズン2の連載も始まっています。ぜひこの機会にチェックしてみてください!

おもしろいはまだまだ広がる!

おもしろい漫画を求めてネットの海をさまようわたしたちの冒険は、まだまだ始まったばかりです。

漫画探しに疲れてしまったときには、ちょっとだけテクノロジーからのレコメンドに頼ってみてください。

さらに、ebookjapanのニュース&トピックスコーナーでは多くの漫画好きライターたちのおすすめ作品を掲載しています。

レコメンドの力を借りれば、きっといままで知らなかった新しい世界に辿り着けるはずです!

執筆: ネゴト / あまみん

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