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『ショーハショーテン!』若き才能が手を組み、目指すは前人未到のお笑いの頂点!

普通に生活していて、人を爆笑させたことが今まで何回あるだろうか。ドジやハプニングではなく、計算でとなるとほとんどないかもしれない。舞台・テレビ・ラジオ…彼らは登場して、笑わせて、帰っていく。”お笑い芸人”に当たり前に求める「面白さ」は一夜にしてはならない。

小説家として数々の賞に選出される人気作家・浅倉秋成先生と、デビューから多くのヒット作を輩出し続けるマンガ界のレジェンド・小畑健先生がタッグを組んだ。そのニュースは双方のファンにとって衝撃的だった。さらにテーマは「お笑い」だという。

そんな未知数とも思えるこの組み合わせが読者に届けるのは、二人の高校生が巻き起こす笑いの大波。才能×才能、可能性無限大の青春劇がここに開幕!

ショーハショーテン! 原作:浅倉秋成 漫画:小畑健

あらすじ:ネタ作りの才能と表現力の才能

高校1年生の奥手であがり症の青年・四十万畦道はお笑い好きには名の知れた有名ハガキ職人(ラジオなどに投稿したネタメールが多数採用される有名リスナーのこと)。周囲のクラスメイトにも家族にも自分がお笑いが好きでその”面白さ”で評価されていることをひた隠しにして生活している。

もう一人の主人公は元天才子役と謳われた表現力豊かな・東片太陽。ある夢のために初舞台に立つことを決めた彼だったが、すぐさま彼は問題に直面した。それは「ネタが書けない」ということ、そして「相方がいない」ということ。

そんな時、二人は偶然出会ってしまう。「ネタ作りの才能」×「表現力の才能」、この二つの才能は互いを否応なく刺激した。共に舞台に立つ、その決意を固める畦道と東片。

出囃子が鳴る。歓声が鳴り響く。目指すは前人未到、はるか先、お笑い界の頂点。二人の物語の幕が開く。

まさに王道を行くストーリー

「日本の二大お笑い賞レースの史上初の両取り」東片がそう言って掲げた目標は果てしなく高い壁だ。現実に行われ、作中の賞レースの元となっているであろう『M-1グランプリ』『キングオブコント』の二冠を達成した芸人は未だ誕生していない。

第1巻の第1話でこの目標を掲げてみせ、そして同じ話の中で「もしやこの二人なら本当に実現するんじゃ無いか」とワクワクさせる展開まで描き切る。まさに少年マンガの王道と言える胸躍る導入だ。

笑わせたかった人がいる。笑わせてくれた人がいた。向き合うきっかけはそんな些細なことでも、それぞれに面白くあり続けるための原動力になっている。真っ直ぐな思いが気持ちいい。

そしてもう一つ欠かせない存在が癖の強いライバルたち。互いを認め合いつつも自分達が一番だと譲らずぎらついている。今はまだ同世代との戦いだが、いずれプロの舞台に上がれば業界の先輩とも戦っていくことになる。見渡す限りライバルという世界で登場するキャラクターたちが楽しみだ。

ど真ん中な青春マンガが目の前に用意されている。これはもう心の底から堪能し、彼らの行く末を応援するしか無いじゃないか。

「面白い」の伝え方に技が光る

軽妙なトークや、台本の存在など疑いもしない漫才、驚くべき発想で書かれたコント、見事に組み込まれた笑いの方程式は私たちに笑いを届けてくれる。多くの努力、試行錯誤の上に成り立つ技術の結集が”お笑い”という芸事だが、それを気づかせないのもまたプロだ。

だから普段私たちは自分がなぜ笑っているかを深く意識していない。すごく笑ったとしても、どのくらい面白かったか、という感想が残るくらいではないだろうか。

面白いネタであっても文字に起こされると実際には伝わりづらいはずだ。だが、場面描写になぜ笑いが起こるかという説明が組み込まれることで、ぐっと内容に共感しやすくなる。浅倉先生の紡ぐ物語の展開と笑いへの解釈が作中コントなどでも読者を置いてけぼりにしない。

そしてその話の構成をさらに小畑先生の絵が引き立てている。時には臨場感たっぷりに、それでいてシリアスなシーンも描きつつ、面白おかしく描く場面では特級の変顔が飛び出す。セリフやモノローグを100%引き出す絵が読者を同じ熱の中へ引き込んでいく。

芸人が賞レースやそもそも”面白くあること”の難しさを語るのを聞くたびに、どれだけ苛烈で辛抱のいる戦いなのかと思う。そしてその名誉をどれほど渇望しているのかを知り、その情熱に胸を打たれる。

だから彼らがその高い高い頂を獲る姿を見てみたい。”お笑い”のファンとしても夢なのだ。

「俺たちが、一番、面白い!!」

執筆: ネゴト / うなぎ

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