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世界で活躍するピアニスト・反田恭平さんに影響を与えた漫画5選

2021年に行われた「ショパン国際ピアノコンクール」で日本人として約半世紀ぶりの第2位を受賞。今最もチケットの取れないピアニストとしてその名を世界へとどろかせている反田恭平さん。

反田さんはこれまでに演奏者として名だたるオーケストラと共演しツアーを行いながら、TVやラジオなどのメディアにも積極的に出演。また、2021年5月にはなんとオーケストラのための新会社を立ちあげるなど常に新しい挑戦を続けています。

まさに漫画の主人公のような反田恭平さんに、自身の生き方や音楽への向き合い方に影響を与えた漫画作品について伺いました。ピアノといえば思い浮かぶあの名作から反田さんはなにを受け取ったのか、そして思春期に反田さんを夢中にさせた意外な作品とは!?

▼反田恭平さん

2021年第18回ショパン国際ピアノコンクール第2位を受賞

2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院を経てF.ショパン国立音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)研究科に在籍

2016年デビュー・リサイタル

2019年イープラスとの共同事業でレーベルを立ち上げる

2021年5月オーケストラのための新会社を設立

主なメディア出演:「ららら♪クラシック」、「題名のない音楽会」、「情熱大陸」など

またMBSラジオ「Growing Sonority」ではパーソナリティを務めている

幼い頃から身近にあって今も躍進を続ける『ONE PIECE』

僕が生まれた頃とそう変わらない年代に連載がスタートした『ONE PIECE』は、一緒に成長してきたと感じるほど大好きで熱中し続けている作品です。連載開始から20年以上もの間、人気漫画のトップとして今も連載が続いているのは本当にすごいと思いますし、作中の登場人物たちが獲得する力の一つに「覇気」という能力があるのですが、これはピアノの演奏にも通じているところがあると感じます。また、意志の強さ、仲間を巻き込むチーム力などルフィから学んできたことは多いですし、未知なる世界への冒険の物語はやっぱり読んでいてワクワクします。

注:覇気(はき)とは全世界の全ての人間に潜在する力で気配、気合、威圧といった人として当たり前の感覚を最大限に引き出したような力。(参考『ONE PIECE』61巻597話より)

『ONE PIECE』

1997年より連載スタート。2022年現在も週刊少年ジャンプで絶賛連載中の、尾田栄一郎先生による海賊をテーマにした少年漫画。最新刊は104巻、好評発売中。

ONE PIECE モノクロ版 著者:尾田栄一郎

実は一番影響を受けたかも? アウトローな男たちの世界を描いた『クローズ』

『ONE PIECE』と同じくらい影響を受けた漫画が実は『クローズ』。僕が中学生くらいの時にちょうど実写映画化もし、盛り上がっていました。映画を観た翌日は皆もろに影響を受けちゃったりして、結構やんちゃな同級生もいたんです。しかも中学の時の僕らの担任が教員らしくない教員で、それこそ『クローズ』に登場するようなちょっとアウトローな学生たちにもまったく物怖じしないような先生だったんです。すっごい強くて怖かった。ほんとに『クローズ』みたいな世界が意外と身近にあったんです。あとは、喧嘩や争いだけじゃなくて意外とギャグシーンも好きなんですよね。くだらなかったり、笑っちゃったりするシーンもお気に入りです。

『クローズ』

1990年~1998年まで月刊チャンピオンにて連載。髙橋ヒロシ先生著。アウトローな男たちが描かれた不良漫画の金字塔ともいえる作品。2007年より実写映画化もされている。

新装版 クローズ 著者:高橋ヒロシ

唯一無二の圧倒的な個性に惹かれた『ジョジョの奇妙な冒険』

圧倒的な個性で惹きつけられたのは『ジョジョの奇妙な冒険』。シリーズがたくさんありますが、僕は初期のシリーズが好きです。特に、1部と、ディオ(DIO)が登場する3部が好きかな。色彩がすごく芸術的だなと思って。ショッキングピンクとかエメラルドグリーンとか大胆で鮮やかな色がふんだんに使われていて面白いです。

また、やっぱり台詞だけでジョジョだと誰もが認識できるような独特な言い回しや、主人公が立ち替わっていくけども全員ジョジョという愛称になる、このネーミングセンスもすごいと思います。

『ジョジョの奇妙な冒険』

1987年に週刊少年ジャンプで連載開始された荒木飛呂彦先生による作品。第1部の主人公ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーとの対決から始まり、子孫たちも巻き込んでの壮大な物語は現在第8部まで完結している。

ジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版 著者:荒木飛呂彦
ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 著者:荒木飛呂彦

音大生の生活を想像しながら読んでいた『のだめカンタービレ』

やはり漫画作品の中で影響が大きかったのは、ピアノを題材にした作品ですね。特に音楽大学に通っている学生たちが描かれた『のだめカンタービレ』は、読んでいて音大生の生活を想像させられました。ピアノが上手くなればモテるのかなとかね(笑)。あとはシンフォニー、オーケストラの曲なんかも作中から学びましたし、登場する曲が気になってCDもたくさん買いました。

本当に嬉しいことに、二ノ宮先生とはご自宅に招いてもらったことがあるくらい音楽を通じて交流があって、絵を描いていただいたこともあります。『のだめカンタービレ』はギャグ要素も満載で、力を抜いて楽しめる。僕の青春時代に欠かせなかった作品の一つです。

『のだめカンタービレ』

2001年から2010年までKissにて連載。第28回講談社漫画賞少女部門受賞。クラシックをテーマに音楽、ギャグ、ラブコメが融合した二ノ宮知子先生の代表作。

のだめカンタービレ 新装版 著者:二ノ宮知子

クライマックスを涙なしには読めなかった『ピアノの森』

『ピアノの森』は中学生の頃に出会った漫画で、のだめより少し後に母親に勧められたのがきっかけです。高校を卒業するくらいに最終巻が出たんですが、もう涙なしでは読めませんでした。漫画を読みながら、常に自分の少し先に訪れるかもしれない未来とリンクさせていました。いつか僕もショパンコンクールに出て入賞するかもしれない、ファイナルに行ったらあのロビーで人にもみくちゃにされるのかなと。

主人公の一ノ瀬海が多くの経験や師との出会いから音楽を学び、そしてコンクールの時にはそれらを解き放ってただ自分を信じて弾く。このシーンは自分のコンクールの際にも心によぎりました。僕にとって本当に特別な作品です。

また『ピアノの森』とは読者という立場を超えたご縁にも恵まれました。2018年にアニメ化された際には、一ノ瀬海の師・阿字野壮介のピアノ演奏を担当させてもらいましたし、今年の10月に『終止符のない人生』という僕自身がこれまで歩んできた人生について書いた本を出させていただんですが、その際にはなんと限定版のWカバーのイラストを『ピアノの森』の作者の一色まこと先生が描いてくださいました。学生の頃から読んでいた漫画の作家の先生に直々にイラストを描いていただく未来があったなんて、実際に原画を拝見した際には本当に感激しました。

『ピアノの森』

1998年にヤングマガジンアッパーズで連載を開始。一色まこと先生著。貧しい環境で育った少年が、森に捨てられたピアノと出会い成長しショパンコンクールに挑むまでを描いた作品。

ピアノの森 著者:一色まこと
『終止符のない人生』

2022年10月発行。世界が注目する音楽家、ショパンコンクールで入賞に至るまでの反田恭平さんのこれまでの軌跡と音楽の未来への想いが綴られた一冊。

※一色まこと先生が描き下ろしたイラストを使用したWカバー版は全国の書店でお買い求めが可能です。

終止符のない人生 著:反田恭平

漫画を通して学んだ、世界で活躍するために必要な要素

漫画は幼い頃から僕の身近にありました。ピアノのレッスンで、◯をもらえたら漫画を一冊買ってもらうという約束をして少しずつ集めたり、学校の図書館に置いてある作品を夢中で読んだりしていました。

漫画の主人公たちの圧倒的な強さ、周りを巻き込む力、人を惹きつけてやまない魅力はプロの演奏家として世界で活躍するために必要な要素でもあります。いい演奏をするには音楽以外の学びもとても大切で、漫画で感じたこと、学んだことも全て音楽に繋がっています。

執筆: ネゴト / よね

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