今日もひとり釣りで脳内ナレーション。釣りの魅力満載の『おひ釣りさま』
「晴れ渡る青空の下、穏やかな海に響くリールの音、海風が運ぶ大物の予感…」
釣りをしていると、一人で脳内ナレーション入れたりしませんか?
釣りの魅力にどっぷりハマっているそんなあなたに、ベストマッチなマンガがこちらの『おひ釣りさま』。
「おひとり様」と「釣り」を掛け合わせた言葉がキャッチーなこちらのマンガは、その名の通り一人で釣りに行く物語。最近流行りのキャンプで言えば「ソロキャン」ですね。
人がいなくても一人で釣りに行く、むしろ一人がいいんだというあなた、釣りに慣れてきたから少しレベルアップしたい! というあなたにもオススメの作品です。
まずはざっくりご紹介!
一人で釣りに行くOLの”たまらん”休日
本作は一人で釣りに行くのが趣味の女性会社員、上条星羅(かみじょう せいら)が主人公の物語。
幼少期から釣りに親しんでおり、その腕前はジャンル問わず超一流レベル。あらゆる出来事を釣りに繋げてしまうほどの釣り好きで、魚を釣りあげては”たまらん”と悦に入っています。
紙コップからコーヒーがこぼれた様子から、釣りあげたイカが墨を吐いている様子を思い起こすほど頭の中が釣りでいっぱい。そこまで釣り好きですか星羅さん。
『おひ釣りさま』©とうじたつや(秋田書店)
第2巻 第16話_エギング①
そんな星羅の休日は当然一人で釣りへ。バス釣り、海釣り、川釣り、管理釣り場、船釣り…とにかくどんな釣りでも挑戦しています。まさに、釣り人からすると憧れの”たまらん”生活とも言えるでしょう。
そして羨ましいのは、大抵の場合なんらかの釣果をあげていること。星羅がボウズで帰ることはほぼありません。さすが、腕が超一流というだけあり、自分もこんなに釣りが上手かったらなぁと羨望のまなざしを向けざるを得ません。
そんな星羅のたまらん休日。
彼女は一つの釣りだけでなく、いろんな釣りに挑戦しているようです。
いろんな釣りを知ることができる
本作は基本的に一話完結型を取っており、本作の登場人物は星羅を始め様々な釣りに挑戦するため、読者も様々な釣りを知ることができます。
例えば、第1巻は15話収録されていますが、釣り上げた魚の種類は何と12種類! ほぼ毎話なんらかの魚を釣り上げていることになります。釣り上げる魚もゲームフィッシングの王道ブラックバスや、ファミリーフィッシングの王道であるサビキ釣りなど、あらゆる釣りが描かれています。
多くの種類の釣りが描かれており、さらに登場人物も釣りを楽しそうにしているので、自分がしたことのない釣りでも、この釣りをしてみたい!と思わせてくれます。
おかげで私は先日やるつもりもないタイラバの竿を見に釣り具店に行きました。
『おひ釣りさま』©とうじたつや(秋田書店)
第5巻 第59話/タイラバ①(真鯛)
なお、作者であるとうじたつや先生は実際に取材としてマンガに描かれている釣行に出向いているようです。
そのため、魚や釣りの説明も細かく、そしてわかりやすい。実体験しているから詳細までしっかり描くことが出来ているんですね。
ここで、私がなるほどと思ったエピソードをご紹介します。
それはヘラブナ釣りの話。ヘラブナ釣りは日本のゲームフィッシングの起源であり頂点とも言える釣り。
初心者でも出来る釣りでありながら、その奥深さに魅せられる玄人も多く、釣りはフナに始まりフナに終わるとも言われる釣りです。よく釣り番組などでも取り上げられるヘラブナ釣りですが、ウキの動きやらなんやら素人目にはよくわかりませんでした。
しかも、釣り番組に出るような人って基本的に達人なので、簡単に釣ってるように見えるんですよね。
そこでおひ釣りさまのヘラブナ回を読んでみると、餌のまとめ方などが絵で描かれていることで非常にわかりやすく、やったことのない私でも理解できました。
『おひ釣りさま』©とうじたつや(秋田書店)
第3巻 第36話 ヘラノート①
秋田書店の電子書籍サイトであるマンガクロスの紹介文に
これを読めば釣りが上手くなる!?
引用:マンガクロス
と書かれているだけあって、やったことのない釣りでもしっかりと知識を付けることが出来る、自分の釣りの範囲を広げてくれる作品です。
そんな釣り人としての自分をより大きくしてくれる本作。
もちろん、釣り人だけにしか伝わらないマニアックな部分もあります。
釣り人には伝わる『悦』
釣り人にしかわからないと言っても過言ではない『悦』があります。それは、狙った魚が狙った通りに釣れた時の強いしてやったり感。
なかなか釣れない中、ルアーの色を変えてみたり、投げる距離を変えてみたり、タナの深さを変えてみたり…。試して考えて、それが見事にハマって魚が釣れた時の悦…まさに”たまらん”ですね。
おひ釣りさまではあらゆるエピソードに”たまらん”がたくさん詰まっています。私もよく行く、砂浜でのシロギス釣りエピソードはまさに”たまらん”。
砂浜でのシロギスの反応がいいと考えた星羅。そこで星羅は連掛けを狙うべくシロギスのアタリが来てもすぐには巻き上げず、しばらく待って釣り上げることに。そうして巻き上げると、波の中からあらわれたシロギスはなんと7匹!ここまで狙った通りにいけば出てくるのは当然「たまらん!」の一言。
『おひ釣りさま』©とうじたつや(秋田書店)
第1巻 第13話/砂浜(シロギス)
想像するにこれが出来たら私なら叫んでいると思います(ちなみに私はシロギスは2連までですが、クサフグは3連したことがあります)。
最後に、そんな哀愁漂う釣り人あるあるも描かれたおまけもご紹介。
私の悲しいけど楽しい釣り人あるある
マンガ読みには非常になじみ深いとも言える、単行本だけのおまけ。おひ釣りさまではこのおまけこそが本編並みに楽しみな要素と言えます。
しかし、それはわかりやすいおまけマンガでもおまけの絵でもありません。
釣り人の心を離さないそれは何かというと、作者であるとうじたつや先生の釣行が描かれる「とうじの釣りベタ日誌」。
空白のページに、呟きやぼやきが書かれたメモ帳がペタリと貼られているだけのおまけページ。おそらく、釣りをしたことがない人にとっては「ふーん」と思って終わってしまうのではないかというメモ帳。
しかし、釣り人が見ればとうじ先生と熱い握手を交わしてしまうような悲哀とあるあるに満ちた内容。その中でも心に刺さりまくったお気に入りの日誌がこちら。
とうじの釣りベタ日誌 part.13
取材釣行は夏。海にサーファーはたくさんいましたが、シロギスはいませんでした。
引用:おひ釣りさま 第1巻 第13話
『おひ釣りさま』©とうじたつや(秋田書店)
第1巻 第13話/砂浜(シロギス)
短い文章ながらも、シロギス釣りに行った事がある人なら首を縦に振らざるを得ないこちらの悲哀溢れる日誌。すごくわかる。私も遭遇したことがあります。
少し説明しておくと、シロギスは砂浜からオモリの付いた仕掛けを時には100m以上投げる釣りです。そして、砂浜はサーファーやヨットなどのマリンスポーツをやる方もいらっしゃる場所。
なので、サーファーなどが海に出ると釣り人が投げるオモリは洒落じゃなく凶器になりえるので、釣りが出来なくなるんですね。もちろん、そういう時は大人しく移動するか釣りをやめたりするなど、マナーを守ります。
なお、この日誌が書かれている話でとうじ先生はおそらくボウズでしたが、星羅はシロギスの7連掛け(1度に7匹のシロギスが釣りあがること)に成功しており、現実と理想のギャップも悲しい話でした。
それでも、釣りに行っちゃうのが釣り人の性なのですが。
自分の釣りの範囲を広げ、新しい釣りをしたくなる良作
釣りをしたことがある人も釣りの範囲を広げ、新しい釣りをしたくなる名作『おひ釣りさま』。このマンガを読んで、自分の知らない新しい釣り、新しい魚を知ってみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は砂浜でシロギスをよく狙いに行っては、脳内ナレーションを入れています。釣れませんけどね。
執筆: ネゴト / マンガおにいさん