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【マンガ大好き芸人・つじくんの突撃インタビュー!】『音盤紀行』毛塚了一郎先生編

マンガ大好き芸人・つじくんが、気になるマンガ家さんにインタビューをする企画の第二弾!

今回つじくんがお話を伺うのは、マンガ誌『青騎士』で連載中のレコードを題材にしたオムニバスマンガ『音盤紀行』作者・毛塚了一郎先生です!

音盤紀行 著者:毛塚了一郎

びっしり書き込んだメモを片手に、レコードを題材にした理由やストーリー作りの裏話などを伺いました。

▼つじくん
吉本興業所属のマンガ大好き芸人。マンガを6000冊所有しており、自身でも4コママンガをTwitterなどで発信中。現在放送中のテレビ番組【川島・山内のマンガ沼】などにも出演し、2021年電子書籍にてエッセイ「マンガのようにはいかない芸人」を発売

▼毛塚了一郎先生
マンガ誌『青騎士』でデビュー。『音盤紀行』が初の単行本。好きなものはレコードとレトロ建築。

▼小笠原さん
『音盤紀行』を担当している、マンガ誌『青騎士』編集者。

インディーズからメジャーへ。『音盤紀行』の物語

つじくん:まずは、『音盤紀行』の単行本第1巻発売、おめでとうございます!

毛塚了一郎先生(以下毛塚先生):ありがとうございます。

つじくん:『音盤紀行』は現在『青騎士』にて連載中ですが、連載することになった経緯を教えて下さい。

▼『音盤紀行』あらすじ
祖父の遺したレコードを調べる孫娘、禁制のポップ音楽のレコードを欲しがる少女のエピソードといった、レコードにまつわる人々の物語を描く短編集。

▼『青騎士』とは
KADOKAWAの少女マンガ誌『ASUKA』、少年マンガ誌『電撃マオウ』、ウェブマンガサイト『キトラ』を中心に有志の編集者が作品を持ち寄って制作している2021年4月20日創刊のマンガ誌。

毛塚先生:担当編集の小笠原さんが、僕が出していた同人誌を読んでくださってたらしいんですね。それで、新マンガ誌『青騎士』を作る時にお声をかけていただいたんです。

『青騎士』には描き込みがすごい方がたくさんいらっしゃるので、最初は同じ雑誌に載ることにプレッシャーを感じていました。けれど、僕は初めての連載ですし、自分なりに描いていくしかないなと思いました。

つじくん:同人誌時代からレコードのマンガを描かれてますが、なぜレコードを題材にしたのでしょうか?

毛塚先生:マンガは基本的に自分の好きなものが一番描きやすいので、レコードを取り上げたんです。

もともと音楽が好きだったんですが、音楽活動をしていないので、バンドものなど音楽を作る側の視点で描くのは難しくて。聴く側の視点のほうが描きやすいなと思って、レコードを題材にしました。

つじくん:『音盤紀行』の話は1話完結ですけど、例えば2話の主人公・ラナがラジオで聴いていたバンドのスタッグスが、3話の主人公として出てきたりと、レコードを起点に繋がっている人々を描かれてますよね。

毛塚先生:そうなんです。どこかで繋がりを欲しかったので、レコードは話を繋げる役割としても存在しています。

つじくん:人と人が繋がってく話の構成ってどうやって考えてるんでしょうか?

毛塚先生:1話を描く前に小笠原さんと描きたい話を結構挙げたんですよ。

小笠原さん:10個ぐらい。

つじくん:10個ぐらい!?

小笠原さん:1話は、今ちょうど原稿もあるんですけど。

つじくん:うわー、貴重な生原稿!

小笠原さん:この1話と残りの10個ぐらいの話を単行本1巻分でどういう話の配列にするかは、結構僕が決めちゃいましたよね?

毛塚先生:そうですね。話し合いの中で、順番を考えていきました。

小笠原さん:最初は70年代の話をリンクさせて、3部作にしようという話があって。そこに未来の話を入れたら、「色んな時代の、色んな国の話を描く」という連載のコンセプトが非常に分かりやすくなるので、この配列にしようと2人で決めました。

つじくん:確かに第6話では近未来が描かれていますよね。さらに話し手はアンドロイドのアシュリーなので、国境や時代だけじゃなく、生物的なところも飛び越えたなと感じました。

毛塚先生:第6話はどうしても入れたかったんです。あるのと無いのとではだいぶ印象が違うのと、読み終わった時の読後感みたいなものを大事にしたいので、この話に関しては、かなり意識して作りました。

描き込みへのこだわり

つじくん:影響を受けたマンガ家さんはいますか?

毛塚先生:描き込みは、鶴田謙二さんに影響されたところが大きいです。大友克洋さんも好きですね。ペンで描くタッチの描き込みが好きなので、今もマンガはなるべくアナログでやってます。

つじくん:確かに、毛塚先生の描き込みはすごいですよね。特に背景はすごく緻密に描かれているなと。

毛塚先生:ありがとうございます。背景の描き込みは、自分の自己満足との戦いなんですよね。メインはストーリーとキャラクターで、背景は脇役なので。だからこそ褒めていただいて嬉しいです(笑)。

つじくん:風景もすごく印象的ですよね。

毛塚先生:風景がきれいなマンガが昔から好きだったので、自分もそういう作品を作りたいなという思いはありました。

大きく風景が描かれていて、美しさを感じるコマは昔から好きだったので、意識的に結構描いています。

マンガというプラットフォームならではの表現

つじくん:僕は2話のラストのシーンが好きで。ちょっと微笑んでるラナも印象的ですし、背景も印象的ですよね。

毛塚先生:毎回最後のページは悩むので、そう言っていただけて嬉しいです。どういう締めで終わらせるかっていうのは小笠原さんと話してても……。

小笠原さん:ギリギリまで変わりますよね。

毛塚先生:2話に関しては、一番きれいにまとまったなと感じています。音楽が規制されている時代を舞台にしているので、「困難に打ち勝つ」という構成がわかりやすく作れたなと思っています。

音楽が権力に反するものとされているのは、現代では想像しにくい世界だと思うんですよね。だからこそ娯楽として扱えるし、脚色しやすい題材なんです。

作中に出てくる海賊放送は、『パイレーツ・ロック』という海賊ラジオの映画を意識して描きました。この映画は結構脚色しているんですよね。

マンガを描く上で、脚色して娯楽っぽくする作業が好きなので、それはこれからも続けていきたいと思っています。

つじくん:他に意識している点はありますか?

毛塚先生:読後の余韻を意識しています。音楽でも、曲の終わり方次第で好みが変わると思っていて、それはマンガも同じだなと。

つじくん:6話のラストは、少しずつフェードアウトして余韻が残ったまま終わってる感じがして、すごく良いなと思います。

毛塚先生:マンガでは音は聞こえないので、どうしたら“音を感じさせる描写”になるのか、試行錯誤しています。音楽を聴いている人の表情で表現できればいいなとは思っていますが、読者のみなさんの想像力に委ねている部分が大きいので、その反応で知るしかないんですよね。

つじくん:音楽描写で言うと、バンド名「スタッグス」や、曲名「STROOL UP!」といった名前はどのようにつけているんですか?

毛塚先生:名前はすごく悩むところなんですよね。

リアリティのある名前にするか、マンガならではのフィクションっぽい名前でいいのかな、とか。それは作品によって違うのかなと思います。

『音盤紀行』は割とリアルに寄せているので、時代に即したバンド名や、音のイメージに近い曲名を考えています。

つじくん:実在するバンドを出す予定はありますか?

毛塚先生:悩ましいですが、もし出したとすると、そのバンドの知識がない人には伝わりにくいなと思うんですよね。なので、今はなるべく使わないようにしています。

つじくん:より多くの人に届けるか、深く伝わる人に刺すか、という葛藤ですね。

毛塚先生:マニアックな知識を入れようと思えば入れられるんですけど、それをたくさんの人が読んだ時に、どこまで受けいれてもらえるかっていうのがありますね。

つじくん:ストーリーやキャラクターと関係ないところで、ノイズになってしまうのはもったいないですもんね。

毛塚先生:ただ、実在するレコードは描いています。

つじくん:確かに!レッドツェッペリンやニルヴァーナっぽいのがいますね。

毛塚先生:気づいてもらえたら面白いなという遊び心で描いているので、ぜひ見つけてみてください。

つじくん:最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

毛塚先生:『音盤紀行』はレコードや音楽への個人的な思いから描き始めたものだったので、たくさんの方が読んでくださり、なおかつ面白いと言っていただいているのは、すごい不思議な感覚です。

正直、読者の皆さん一人ひとりが持っている音楽への想いに対して、僕が全て応えることは難しいなと思っています。

けれど、音楽そのものは普遍的なものなので、これからも作品を通じて一緒に音楽を楽しめたらいいなと思っています。

記事内画像はKADOKAWA様の認可の元掲載しております:(C)Ryoichiro Kezuka

執筆:ネゴト /

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