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平安時代の新たなバディ誕生!?菅原道真&在原業平による謎解き歴史サスペンス『応天の門』

「月刊コミックバンチ」にて連載中の灰原薬先生による『応天の門』。

応天の門 著者:灰原薬

本作は平安時代を舞台にした、二人のバディが宮中の様々な謎を解くクライム・サスペンス作品です。

平安時代のバディといえば、安倍晴明と源博雅という陰陽師コンビを想起する方も多いはず。

しかし今作で活躍するのは、まだ少年である学問の神様・菅原道真と数多の浮名を流す少将・在原業平。彼ら二人が巻き起こる事件を、どこまでも「人の手」によるものとして解決していく新感覚マンガです!

平安の世の事件を、持ち前の知識で解決せよ!『応天の門』あらすじ

本作の主人公は、この時代まだ学生の身分であった菅原道真です。

同年代の子どもたちに比べ、この頃からすでに学問の知識において頭一つ抜けていた道真。ですがそれゆえに、彼は大人子どもを問わず自分より「賢くない」と認識した相手に対し、やや見下したような振る舞いをする少年でした。

そんな彼はある日宮中内のちょっとした事件に巻き込まれ、その中で少将・在原業平と出会います。

道真の博識ぶりと子供らしからぬ落ち着いた振る舞いに、彼に興味を示す業平。その出会いから何かと二人揃って様々な出来事に巻き込まれ、二人の間には少しずつ不思議な縁ができることに。

一方それらの事件の裏で、この平安時代は陰に隠れ宮中の派閥闘争や権力争いが巻き起こる時代でもありました。

少将という位持ちである業平はもちろんの事、まだ年端もいかぬ少年である道真にとっても、それは自分とは全く無縁の物、というわけにはいきません。

少しずつこの派閥闘争の中の隠された真実や、宮中の闇へと巻き込まれていく道真。

その中で、人より優れた知識を持つ己が出来ることは、すべきことは一体何なのか。そんな思考が、彼を少しずつ一人の大人へと成長させていくのです。

正体不明だから怖い…ならば正体を明かせばいい!知識に裏付いた大胆な行動力

作品の見どころとしては、まずは何よりも二人の活躍!

特に道真の目覚ましい博識ぶりによる、怪異を全て「人の手によるもの」として解決する手腕は、何よりも今作の大きな特徴でもあることでしょう。

舞台である平安時代は、未だ人と物の怪が同列に存在することが大いに信じられていた時代です。

それゆえに原因の分からない出来事や正体不明の存在は全て、妖怪の仕業や呪いのせいである、と。人の手出しができないものとして、大勢がそれを常識のように受け入れていました。

しかしその中で、道真は何が起ころうとそれは「人の手によるもの」という現実主義な姿勢を崩しません。

原因不明の発火も、姿を見せぬ生き物のいたずらも。全てに必ず理由があり、その現象が起こる理屈があるはずである。

その理由や理屈、物事が発生する原因を、彼は自分の持つ様々な知識を組み合わせたり、時にはそこから予測を立てながら。ものの見事に事件を解決していくのです。

正体のわからないものに不安を覚えるのであれば、正体を明かしてしまえばいい。

大勢の不安にノーを突きつけ、単身でも原因追及へと大胆な行動を取れる。それは何よりも道真自身が、自分の持つ膨大な知識にいい意味で自信を持っていたからなのでしょう。

少年は大人へと成長する…人より優れた知識を持つ・菅原道真に与えられた役目とは

そして物語のもうひとつの見どころは、そんな道真が自らの武器=知識を持ったまま、いうなればその「使い道」を覚えていく過程にあります。

自分より知識のないものを一様に見下す節のある道真。それは陰に派閥闘争を繰り広げる、権力者たちに対しても同じでした。

争いなんてくだらない、自分はそれに関わりたくない──そう思っていた道真ですが、なまじっか知識も位もある彼は、望むと望まざるとに関わらず。その激動の派閥争いの中へと、巻き込まれるしかない運命に生まれた少年でありました。

そんな境遇であった彼の価値観に大きな影響を与えたのが、誰あろう在原業平です。知識こそ道真には劣れど、彼ものうのうと世渡りをしてきた男ではありませんでした。

上層の人々は権力争いばかり、下層の市政の民の暮らしもどんどん貧しくなっていく。けれどその中で、道真はそのどちらにも携わることのできる立場と、そして地頭の良さをもっていることを、業平は道真に暗に示します。

貴族として生まれた運命を、今更変えることはできません。

ならばその運命の中で彼は、蓄えた知識を一体誰の為に使うべきなのか。

そのために道真は、この妖怪よりも恐ろしい魑魅魍魎が跋扈する宮中で、どのように生きていくべきなのか。

そんな思考を少しずつ身に着けて大人になっていく彼の成長も、物語の大きな見どころポイントと言えますね。

執筆: ネゴト / 曽我美なつめ

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