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『ニッターズハイ!』アンチ不在の最強編み物布教マンガが教えてくれる、自分で決めることの心地よさ

大好きなものを手放さなければいけない。

人生では思いがけずそんな不幸に見舞われてしまう時期があります。

そんなときにページをめくってほしいのが、猫田ゆかり先生の『ニッターズハイ!』です。

ニッターズハイ! 著者:猫田ゆかり

最強の編み物の布教マンガと呼んでも過言ではない今作。

目標を失った失意の男子高校生が編み物と出会い、自分軸を取り戻しながらイキイキと輝いていく様子が描かれています。

「編み物王子」との出会いが運命を変える

中学時代は全国も目指せる優秀な陸上選手だったものの、怪我により競技から遠ざかってしまった浜仲健斗。

高校に入学してすぐ、健斗は上級生から手芸部入部の誘いをうけます。

しかし断りがてら「男が手芸なんて変だし」と軽く口にしたところ、偶然居合わせた「編み物王子」を怒らせてしまう事態に。

「編み物の楽しさを知ったら自分の恥ずべき発言に気づくはず」

編み物王子の布教活動(強引)にのせられ、健斗は初めての編み物に挑戦することに!

何やら訳ありげな「編み物王子」の過去とは?

健斗はこのままニッターの道を歩むのか?

「男子高校生の編み物マンガ」というキャッチーな珍しさに目がとまった読者も少なくないはず。

ひょっとすると、その「珍しく感じる気持ち」をとっぱらうことが、新しい夢中と出会う近道になるのかも?

思い込みを捨てれば新しい世界が見えてくる!

「ニッターズハイ!」は、こわばった心をほぐしてくれる、青春クラフトライフストーリーです。

アンチ不在 他人と比較しない究極の贅沢

編み物は、作る物もそのクオリティもすべて自分で決められる自由な世界。

そんな編み物の魅力がたっぷりと描かれた「ニッターズハイ!」では、悪役やアンチポジションのキャラクターはいません。

敵対し比較するのではなく、自分の中の思い込みに気づいて変わっていく展開にしたいから。

そう語るのは、作者の猫田ゆかり先生です。

冒頭では、性別で人の趣味を区分けしたアンチ発言を展開し、場を凍りつかせた健斗。

素直な健斗は編み物の楽しさを少しずつ覚え始めますが、今度は編み物をしていることを周囲に知られるのが恥ずかしい…と感じるようになります。

しかし、自分の中に芽生えた「編み物に夢中になる気持ち」をそのまま友人達に伝えたことで空気が一変。

ここで友人達は、茶化すわけでもなく「編み物を楽しんでいる今の健斗」を受け止め見守ってくれるのです。

もしも「なにやってんだよ」「変わったやつだな」といったネガティブなメッセージを発するキャラクターがいれば、健斗が彼らに認めてもらうような行動を起こす展開になったかもしれません。

見返すために戦うことも競い合うこともしなくていい。

感じるべきは、己の声。

アンチにならない友人たちとのシーンは、そんな自分の心のありように重きを置いた今作を象徴する存在といえるでしょう。

すべては自由である、という編み物の真髄を踏襲した潔いメッセージに、日常でつい他人軸に寄りかかりがちな心がほぐれていきます。

男が手芸なんて変。

自分は不器用だから編み物なんてできない。

そんな自分の中の思い込みを捨て没頭していく健斗と共に、作品ののびのびした世界観を堪能してください。

楽しい!が溢れ出る紙面に注目

ご自身も編み物に救われたという猫田先生が描く編み物シーンは、臨場感と愛情がたっぷり。

感情をせき止める蓋のようなものが外れる瞬間。

内側から湧き出る情熱に身を任せ、好きなことに夢中になる心地よさ。

読者が思わず陶酔してしまう、多幸感に溢れた編み物シーンの続きはぜひ本編でお楽しみください。

この春は『ニッターズハイ!』を通して、あなたの新しい夢中に出会ってくださいね。

執筆: ネゴト / あまみん

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