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オタク・ミーツ・ヤンママ?『私の息子が異世界転生したっぽい フルver.』は結末を知っていても胸が熱くなる最高のコミカライズ

「異世界にいる息子に会いに行きたい」

冗談? 本気?

子供を亡くした母親の、そんな切なる叫びをあなたならどう受け止めるだろうか。

私の息子が異世界転生したっぽい フルver. 原作:かねもと 作画:シバタヒカリ

原作既読派こそ読んで欲しい!

「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中の本作は、原作のかねもと先生による自主制作マンガ『私の息子が異世界転生したっぽい』を、作画にシバタヒカリ先生を迎え新たにコミカライズしたもの。

完結済みの原作を手にとり、既に結末を知っている読者も多いだろう。

原作版は読んだし、同じ内容なのでは…と侮るなかれ!

原作の結末を知ってもなお楽しませてくれる、『フルver.』の魅力を知ってもらいたい。

突然現れた同級生が探していたのは異世界に転生する方法だった件

高校時代から筋金入りのラノベオタク・堂原(35歳)の前に、同級生・美央が突然現れる。

美央は17歳の息子を交通事故で亡くしていた。

「転生モノのラノベが大好きだった息子は、異世界に転生しているはず」

そう断言する美央は、「自分も異世界へいける方法はないか」と堂原に持ちかける。

一点の曇りもなく問いかける美央に負け、堂原は美央の転生方法探しに付き合うことに…。

原作のかねもと先生は
「物語の亡くなった主人公の親や、残された人たちはどうしているのだろうと考えたことがきっかけ」と今作を着想した背景をあとがきで語っている。

異世界転生モノの主人公たちの多くは、ストーリーの冒頭で死亡するのがお約束。

突然の死と残された人々のその後を「異世界」という設定で繋ぐ、新しい角度の「転生モノ」が本作なのだ。

より解像度高く知ることができる美央と堂原の旅路

原作既読派にまず注目してもらいたいのは、『フルver.』で掘り下げられた堂原の物語だ。

全4話で構成された原作内では、堂原のキャラクターが語られることは少なかった。

『フルver.』では、原作にはない新たなエピソードと共に、美央と関わる日々の中で変化していった堂原の様子が丁寧に描かれている。

近くにいる人の気持ちさえ決めつけ、なんでも自己完結して終了しがちな堂原。強烈なキャラクターの美央と接する中で自分の弱さに気づき、心をかき乱されていく。

たどたどしくも美央に寄り添おうと思考を巡らせていく様子を追うことで、美央を支える堂原の物語により一層感情移入できるはずだ。

さらに、美央の悲壮感を感じさせる繊細な演出にも注目してほしい。

「息子は死んだけど異世界にいる」「だから私も転生しないと」という言葉の気丈さと裏腹に、愛する子供を亡くした彼女の心の消耗に気づきハッとさせられる。

原作でほとんど登場しなかった美央の旦那と級友たちも登場し、美央と堂原の旅路をより解像度高く知ることができるのが『フルver.』の魅力なのだ。

同じ物語のはずなのに、まったく違う世界を見ているようでハラハラが止まらない。『フルver.』はより読者の感情を揺さぶる新しい展開に溢れている。

原作既読ファンも、『フルver.』を通して美央と堂原の旅路をもう一度見届けてもらいたい。

執筆:ネゴト /あまみん

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